見出し画像

読書|おいしくて泣くとき

こども飯で出されるごはん。
あのタイミングで焼きうどんお願いされたら…
読者は涙をこぼすしかないでしょ?😊


++ ネタバレ ++


中学生の心也と夕花の逃避行が物語のスパイスになっている。
多感な時期、それも真夏に経験した思い出は一生の宝物になる。
この宝物が詰められた箱が再び開かれた時、思わず頬を伝う涙…

わたしゃ、てっきり心也と石村の友情物語と思って読んじまった。
そしたら、夕花という女の子の存在がいつまで経っても消えない。
もしや、男同士の友情物語ではない?

今にも折れそうな儚さを漂わせる彼女。
なのに、わたし前へ進まなくちゃという思いが伝わってくる。
彼女の立ち位置とはなんぞや・・・?
鈍感な私にはまだ気づかないのだ、二人の関係を。
そんなことを思いながら読んでると、心也と夕花の話にのめり込んでしまっていた。

二人の何を応援しているのか、
二人にどうなって欲しいのか、
そんなことは気にもしなかった。
ただただ潮騒の音に耳を傾け夜空に浮かぶ星々を眺める二人の描写が美しかった。


🍀m


電車の中で夕花が心也に体をちょっとずつ体を寄せる。
眠たいのを我慢してまでも肩に頭をちょこんと載せる。
イイ。
ウン、イイ。
二人ともいつのまにか眠りについてた所なんてもっとイイ!

+++


一方で展開されるのは異なる時間軸にいるマスター、ゆり子、萌香、阿久津。
心也と夕花の物語にちょくちょく挟み込まれる彼らの物語。
きっとどこかで合流するのだろう。
そんな思いを抱きながら読み進めると、ページが残り少なくなってきた。

オイオイ…
どこで繋がるんだよぉ…
石村ちゃん、どこ行っちゃったんだよ…


+++

物語とはいえ人生は不思議なもの。
語れるほど年齢を重ねてるわけではございませぬが、半分くらいは語ってもいいような。

人は人とどこかで繋がるように出来ているのかもしれない。
淡い記憶が鮮やかに思い出されるように劇的な出会いを果たすことがあるのかもしれない。
右と左の分かれ道を選ぶのは自分自身。
わたしたちは無限に枝分かれする道を選択しながら生きている。
その中の一つを見た気がした。


🍀f


母の残した言葉・遺言。

「自分の意思で判断して生きているかどうか」

この時とばかりに母の言葉を信じて行動した心也の姿が鮮明に映し出される。
心也の人生における分水嶺だったんだろうな。
父ちゃん譲りで、母ちゃん譲りの意志の強さを持つ心也、カッコイイ。


時間軸の異なる物語の人たち。
萌香は母親ゆずりの性格、阿久津は小さい頃のおもかげそのままに静かな面持ち。
なのにイイオトコの香りが漂う。


クライマックスを迎えるエピローグ。
きっとあなたは心動かされるはず。

心也/夕花、マスター/ゆり子/萌香/阿久津、そして石村ちゃん。
彼らがいた夏。
彼らが紡いだ物語。

今の季節にもってこいの一冊、良書です。


🍀s


「おいしくて泣くとき/森沢明夫」



+++

カバー画像は hina_hiyokosa様よりお借りしました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?