年男の君、そしてわたしの身の上話(ふちこ)
私には2つ下の弟がいる。
小さい頃の弟はすぐ泣くから、喧嘩しても張り合いがなくてつまらなくってそれなら!と私のワンピースを着せておもちゃの口紅を塗らせ、大きい着せ替え人形として近所を連れて歩いたものだった。
泣き虫な弟に比べて私はしっかり者で、優秀かつ勤勉なお姉ちゃんだった。弟が作文コンクールで佳作をとって喜んで帰ってきた次の日に、しっかりと同じコンクールで最優秀賞をとるのが私の役目だった。
私はお姉ちゃんなので佳作で喜んでいた弟をコテンパンに煽った。この悔しさを忘れずに強くなってほしいと思う私なりの愛だった。
その作文が市が主催する平和作文のコンクールだったもんで。全校集会で姉弟で表彰されたあとに「あいつの家って平和教育やばくて、庭で鳩飼ってるらしいよ」とかよく分からないことをクラスの男子に言われたことを今でも覚えてる。
東京から2時間ほど離れた少々訛りのある町ですくすくと成長した私たち一姫二太郎。弟はいつも私の後ろをついて歩いていた、気がする。
弟はどうだったか分からないけれど子供の頃の私は、結構本気でなんでも手に入る気がしていたし振り返れば結構本気でなんでも手に入った。全世界は私の味方で、私はそういう星の元の子供だと確信していた。
でも、見てよいまの僕を〜である。
大学進学を機にお姉ちゃんは東京へ。弟は地元に残った。東京に出てからは悲惨だった。うまくいかないことのが多かったし安定していたことなんてほとんどなかった。
正社員になって、もういい加減落ち着くかなと思った矢先にウーバーイーツで散財しすぎて大変な目に遭った。全部コロナのせいだ。
重複するがウーバーイーツでは本当に地獄をみた。手軽さに慣れていくというのは本当に怖いことで、あのときの私はどうして5分歩いてコンビニに行かなかったんだろう。弟よ、君には同じ失敗をしてほしくないな〜。
ウーバーイーツで破産した私は今年27になるというのに、あらゆるものと引き換えにしばらくの間お金の管理権を全て父に譲ることとなった。毎日父に支出報告をしては「これは無駄遣いではないか?」といった指導が入る。ファミチキ一つ自由に買えない身の上となった。
両親からは散財癖を治す「保護観察期間」と言われているが、あんなにしっかり者だったお姉ちゃんがこんなアラサーになると誰が想像できただろう。
でもそんなことを君に伝えることも出来ない。なぜなら君とは大人になってから結構大きめの喧嘩をして、LINEやらなにやら繋がっていたもの全てをブロックされているから。
私は今、弟がどんな顔をしてるのかわからない。仕事が大変らしいからきっとカリカリになってると思う。ミキの亜生に似てるって言われてるから亜生を見て弟の顔を思い出している。
あの喧嘩私が悪かったかもなと反省してる。でも仲直りしたくても昔みたいに顔合わせてるわけじゃないし、仲直り出来ない。大人の仲直りは難しいのだ。てかそもそも連絡とれないし。
実は年の瀬だしいけるかなと思って12月も終わる頃、君にLINEしてみたんだよ。「おーい、元気か」って。
それから、
「生きてる?お姉ちゃん転職活動してんだけど、全然うまくいかないや。働くってなんなんだろうなぁ。。。」
既読なし。そうだブロックされてんだった。あとこれ多分姉をブロックしてること自体忘れてる。
この文章を見てるはずもない君へ
今年はいよいよ年男ですね。モウ烈にいい年にしてよね。仕事がんばってね。頑張らなくてもいいけど元気でいてね。
楽しいことがギュウギュウだといいね。とりあえず、私は気持ちよく再会できるよう散財罪の保護観察が取れるよう頑張るね。
コロナが原因で会えなかったわけじゃないけれど、コロナが明けたら全然会ってなかったことを全部コロナのせいにしてさ、ケロッとなんにもなかったみたいに会えたらいいな。私はダメだったけど、ちゃんと夢を叶えた君の話を聞かせてよ。
何回か分のあけおめことよろを込めて。
お姉ちゃんより。(ふちこ)
※この物語はフィクションです。
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