あの子の前に
超短編小説「あの子の前に」
月真猫
冷たいアスファルトに、くしゃくしゃになった葉が舞い落ちる。秋と冬の狭間、真っ白な雪が降る直前のこと。暖かな部屋で、あの頃の僕は宇宙に広がる星々を眺めていた。キラキラと輝く星たちは、まるで少し先の未来への期待と希望を映し出しているかのよう。
そんな思いに浸りながら待っていると、突然、冷たい玄関の扉が開かれた。その瞬間、ぼくの目の前に早い初雪が舞い降りた。
その子の名前は、ゴマちゃん。
ぼくがその頃一番欲しかった、少年アシベに描かれていたゴマフアザラシのゴマちゃん。漫画の中のゴマちゃんは抱っこできないけれど、あの日ぼくの目の前にいた真っ白で綺麗なゴマちゃんは、仰向けになっている細いぼくの胸を抱えて手をだらりと垂らしていた。一生懸命に呼吸をしながら、たまに身体をピクピクとさせて、夢の中で草原を走っているようだった。
あの頃の胸の上の感触を思い出す。あの子が今も、どこかのおうちで、優しい誰かの胸の上で手をだらりと下ろして、夢の中の草原を走り回っていたらいいな。
目の前で爪研ぎをしているあの子を見つめる。あの子は胸の上には乗らないけれど、邪魔にならないように足元で少しだけ僕の脚に触れて眠る。僕の体温を感じながら、たくさんの兄弟と一緒に遊ぶ夢を見ているのを見ると、あの子の温度を思い出す。
季節が幾度も巡り、僕の手のひらにはいつの間にか細かな皺が刻まれていた。爪研ぎを終えて毛繕いをしている君の柔らかな毛並みに触れる。
窓の外では、初雪がゆっくりと降り始めていた。
2年前に書いた猫を想う小説。
僕は猫が大好きだ。
前に書いた小説を引っ張り出したついでに、
次回Podcastの予定
次回のPodcastの予定。
「パール」と「ジェイコブス・ラダー」原作とリメイク版、のお話。
月真猫と真月里さんが好きなYouTuber、「劇団かいばしら」さんのお話。
どちらかを予定しています。
ということ。
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