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とびの冒険 #2

その日からしばらくしても、チャビーの右後ろ足の血が出たところからは毛が生えなくなってしまったの。でも、チャビーは相変わらずぼくと仲良く遊んだよ。ぼくが、「チャビー、痛かった?ごめんね。」って謝っても、「何のこと?」と言って、怪我のことはすっかり忘れてるみたいだった。チャビーはいろんなことすぐに忘れるんだ。ぼくは、興奮しすぎてまた怪我させないように、少し気をつけたんだけど、僕も夢中になるとすぐにいろんなこと忘れるから、 あの後何度もまた噛みそうになって危なかったよ、ワン。

ある日、男の人と、11歳と13歳ぐらいの女の子がやってきた。僕たちの世話をしている女の人と、立ったまま何かを話した後、僕を撫でたり、チャビーを撫でたりしたの、ワン。撫でられると気持ちいいね。ぼく、撫でられるの大好き。女の子たちは、最初は遠くの方に立っているだけで、僕のそばには来なかった。でも、「かわいー、かわいー」と言っている。ぼくにはその意味が分からなかったんだけどね。「かわいー」ってどういう意味なんだろう。男の人と女の子たちは、家から出て行った。女の人は、「本当はあんたは1,300ドルが相場ってとこだけど、あの人たちあまり犬のこと知らなさそうだし、1,600ドルでもいけそうよ。」って僕に言った。ぼくは、その意味はサッパリ分からなかったんだけどね、ワン。とりあえず、「ワンワン」って返事しといたよ。

その日のうちに、男の人と女の子たちは戻ってきた。キッチンの方で何やら女の人と話した後、男の人が「おいで、とびー!」と言った、ワン。ぼくの体は、「おいで!」っていう言葉を聞くと、ひとりでに前進して、「おいで!」って言った人のところに向かって行く。気づいたら男の人の足元に来てた、ワン。男の人はぼくの頭を何度か撫でて、「いい子だね、とびー」と言った、ワン。女の人がぼくの頭を撫でて、「とびー、バイバイ!よい犬生を!」と言い、「ケネル」というカゴの中に僕を入れてドアを閉めた。
 
僕は箱の中でしばらく眠った。新しい人に会うと眠くなるんだ、ワン。カチャっというケネルのドアの開く音で目が覚めた。ドアが開いたので、思わず飛び出した。あくびをしてから、体を伸ばしたら、さっきの女の子たちがまた「かわいー、かわいー」と言っている。「かわいー」って体を伸ばすって意味なのかなあ?女の子たちは僕のこと、いっぱい撫でて、「とびー」「とびー」って呼んだ。

こうして、僕の新しい生活は、毎日お日様が見える暖かい「夏」という季節に始まった。どうやら僕はこの人たちと一緒に暮らすみたい。チャビーはどうしてるかなあ。この新しい家には人間だけ住んでいて、犬は僕だけ。大丈夫かなあ、ワン。

次回へ続く

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