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「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~ 」に嵌まった理由を考えてみた(まとめ)

※ 複数回に小分けにしてアップしていた当該ドラマに
関する記事を一つにまとめました ※

※ 本稿はネタバレ含みます ※

1. 

 今春の緊急事態宣言が発令された頃、巷では Netflixの「愛の不時着」が面白いという噂が流れていた。
 在宅時間が増えたこともあり、Netflixの新規30日間無料を使って観てみたら、噂にたがわず面白い。

 視聴を終了すると、これもお薦め、と似たような作品を推してくる。「梨泰院クラス」「椿の花咲く頃」なども続けてみて、ここまででは「椿の~」が最も気に入っていた。
 「冬のソナタ」以来の個人的韓国ドラマブームが訪れたか、30日間での解約を取り止めて、Amazon PrimeVideoと合わせ、「椿の~」主演であるラブコメ女王のコン・ヒョジン出演作品を主に観ていた。

 しかし、どれを観ていてもクドいぐらいに、次に観るべきお薦め作品群の先頭にマイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」が表示される。

 サムネイルや初回のハイライト映像で観る主人公のイ・ソンギュンは「パスタ~恋が出来るまで~」で(パワハラぶりが嫌いだった)、IUは「プロデューサー」でコン・ヒョジンと共演していたせいかもしれなかったが、あまりに毎度々々表示されるので、ついに観ることにしたのが初秋のある日。
 実は2年前の作品で、少し前には日本のBSでも放映されていたようだが、大変遅ればせながら嵌ってしまった。

 子どもの頃から「テレビがなくても音楽さえあれば生きていける」と言っていたほど自身はテレビ好きでもなく、ここ最近のように多様な視聴方法で、オンデマンドで好きなジャンルが選べるようになってからも、ほとんどドラマを視聴していないせいもあって、元からの視聴絶対数が少ないことを差し引いても、こんなに嵌ったドラマは久しぶりである。思いつく限りでは東日本大震災後の「空飛ぶ広報室」以来かと。

 そして、観終わってからもずっと「なぜこれほどまでに嵌ってしまったのだろう」という疑問がくすぶっていて、これを文書化することによって自身でも改めて思いを整理したいということから、このnoteを書くことにした。

 次回はその思い当たるふしについて列挙しながら考察したい。

2.

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 「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」に嵌った理由のベースにあるものとして、まず現在のコロナ禍が影響していることは間違いない。

 ドラマ内では、職場での同僚や部下とのやり取り、行きつけの店での飲食の場面が多く出てくる。
 2年前に撮影されたドラマなので、当然のように皆マスクもしていなければ、ソーシャルディスタンスに留意しているわけでもない。

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 希薄な対人関係を強制されている現在においては、昨年までのごく当たり前の日常の風景にさえ深い郷愁を感じてしまう。
 それが本ドラマに嵌った根本のベース部分にあることは紛れもないだろう。

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 次に、私自身が、高齢の難聴気味の、一人では歩行困難な母親と現在同居中という個人的事情が背景にある。

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 ジアンがハルモニの世話でおむつ(か尿漏れ用パッド)を片づけている場面や、皿洗いをしている場面が、まさに今の自分の日常と重なって、余計に感情移入をしてしまった。

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 また、私自身には兄弟がいないため、「兄弟っていいな」「仲間っていいな」とも再認識した。

3.

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 その兄弟についてだが、私は年齢的には長男のサンフンより更に少し上であり、彼のセリフに出てくる「前立腺」や「独居老人」などの単語にも共感を覚えてしまった。

 そして、企業勤めから起業をして、結局潰してしまったところも同じである。半世紀を振り返って「何も成し遂げなかった」とぼやく心境は、とてもよく理解できる。

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 更に、嵌った理由の大きな部分を占める背景として、私がちょうどドンフンと同じ46歳だった頃、私も20代の女性と親密な付き合いをしていた事実があったことは認めざるをえない。

 ネット上の多くの感想を読むと「ドンフンとジアンによる、おじさんと若い娘の恋愛ものでなくて良かった」という声も多いが、成就させる気はなかったにしても、ドンフンにも相似した感情は間違いなくあったと思う。

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 当時の出来事をふと思い出させる場面や、その時の自身の感情をフラッシュバックさせるようなドンフンやジアンの表情を観ると、なんとも言えない感情がこみ上げてくる。

 結局、前述の私の起業失敗や母の問題もあり、その彼女とは人生を共に歩むことはなかった。
 私は無意識のうちに、ジアンに慕われるドンフンの姿に自らを投影したかったのかもしれない

 ちなみに、私にはその後、カフェで偶然会って笑顔で挨拶する機会は訪れていない…。

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 総括として、なんといってもOST(オリジナルサウンドトラック)の素晴らしさを挙げておく。韓国ドラマはOSTに当たりが多いが、このドラマは別格。
 中でも、ここぞという場面で流れる Sondiaの曲(ハングルは「어른」だが、英訳は「Adult」と「Grown Ups」と2パターンある)。

 いい(年齢の)おじさんである私に、いつも涙を誘う曲。


4.

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 最後に、数えきれないほどあった名場面の中から、個人的に特にお気に入りの場面をストーリー順に。

【第11話】 「なぜ泣くの」と訊かれ「嬉しいから」と答えるジアン。
 実際には、死刑宣告を受けたようだと苦しんでいるドンフンを哀れんでいるとは、ハルモニには言えない(のだと思う)。

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※ 追記(2021/03/07)※
 この場面について、他の方のツイートを読んで再度観直してみたところ、確かに哀れんでいる部分もあるかもしれないが、やはり「自分の周囲に誠実な人が(初めて)いるという事実が嬉しい」という涙なのだろうと、解釈を少し変えたくなった。
 自身が「嬉しくて涙を流す」といった経験をしたことがなかったので、セリフどおりに受け取れなかったということもあったかもしれない。

※ 追記(2021/05/22)※
 「『好きな人が嬉しい時は自分も嬉しいし、泣きたい気持ちの時は自分も同じ』というジアンのドンフンへの想いの表れなのではないか」という新たなコメントをツイッターで頂いた。
 確かに、ユニの口から浮気を謝罪されて辛くてたまらないドンフンへの共感の表れかもしれない。また、そうだとすると「嬉し涙だと言ったのはハルモニへの気遣いでは」という私の当初の解釈も合点がいく。

【第12話】 送ってもらって「ありがとうございます」と礼を言うジアン。
 敬語だが、ジアンが少しずつ周囲に心を開いていく様子が、こちらまで嬉しい。

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【第14話】 初めて好きになった人。
 ジアンにとって初めてだった「4回以上親切だった人」「私と似た人」に続いてのこのセリフ。泣けた

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【第15話】 「すみませんでした」を連呼して路上に崩れ落ちるジアン。
 ドンフンが「全部聞いた」から部下を叱った場面を思い出し、心から謝りたかったであろう姿が痛々しい。

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【第15話】 自分のために心を痛めているジアンのことを思うと、つらくてたまらないドンフン。自らが幸せになってジアンを解放してあげたい気持ちと、それまでは見届けていてほしいという気持ちが併存している気がする。 

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【第16話】 通夜会場でのサッカーを見ているジアン。
 ハルモニの言葉を思い出しながら、皆を見渡して、いつの間にか縁に恵まれている自分に気づく。最も好きな場面

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【第16話】 ジアンが手話を教える場面。
 自分から積極的に人前に出られるようになった、安らぎに至った姿。

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 こうして並べてみると、なんだかんだ言ってジアン(IU)の場面ばかりだ(笑)。

 
 他では、腕組みをしながら話を聞くジョンヒオ・ナラ)の姿が結構好きだった(カーリーのエクステも)。

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 あとは、サンフンとギフンが破れたコートからダウンを吹き出しながら横断歩道を歩く場面など。

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 何年か何十年後かに、2020年を振り返るときに、このドラマに嵌った日々は、象徴として必ず思い出すだろう

 改めて考えてみると、文字どおりのドラマティックな世界に没頭することで、コロナ禍の鬱々とした現実からの逃避を望んでいたのかもしれない。

5.(番外編)

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 今回は趣旨を変えて、①気に入らなかった点、②離婚する先輩との会話における超個人的すぎる感想、そして、③皆さんの意見を聞いてみたい場面の三点について記してみたい。

 一点目、唯一と言っていい程、数少ない気に入らなかった点は、初回の登場人物をメンコに仕立てたような画面。
 まだ、このドラマの方向性が定まっていなかったのかもしれないが、ここだけ見ておちゃらけたコメディーと思われたら非常に残念。
 同じようなことはドラマ「サンドゥ、学校へ行こう!」の初回にも言える。

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※ 追記(2021/03/13)※
 もう一点、ドンウン常務の酒に薬を混ぜる場面で、ギボムがあの店の制服を下に着込んでいたところは、あまりにも…と感じてしまった。

 二点目は、離婚するドンフンの先輩が語った「怒りは消えると思った」「常に頭に浮かぶんだ」…。

 昔つきあっていた女性に、幸せ絶頂期(と少なくとも私は思っていた)に、些細な事を発端に、ある日急に、本当に突然に別れを告げられたことがあった。
 私は大変なショックを受け、食事も喉を通らないほどで、暫くは笑うことを忘れ、他人との接触も断ち、自分の何がいけなかったのかなど自省の日々を過ごしていた。

 半年ほど経って、彼女から軽率な行動だったことを謝罪しながら、もう一度やり直したい旨の連絡があったが、悩んだ末、私はそれを受け入れなかった。
 理由として、突然、思い付きのように言われたあの別離の宣告からのトラウマになった日々が、またいつか訪れるのではないか、繰り返されるのではないか、という恐れがどうしても頭から離れず、以前と同じように心からは信頼できなくなってしまっていたからだ。

 ドンフンの先輩がこの一連のセリフを語る場面は、当時の自分を思い出してしまい、とても苦しくなった。
 (ただ、彼女の名誉のためにも強調しておきたいのは、別離の原因になった些細な事というのは、決して彼女の浮気などではなかった)

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 最後の三点目としては、最終回のドンフンが一人で食事をしていて慟哭する場面

 ネット上でも様々な感想や推測が書かれている。正直、私もこの場面のドンフンの心境については確信が持てず、一応次のように解釈してみたが、いろいろな人の意見も聞いてみたい。

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 俺を生き返らせてくれたジアンのいた激動の3ヶ月が過ぎた。
 ユニが(暫くの間といえども)ジソクのいるアメリカに行き、家族写真を前にしながらも、一人でカップ麺を食べている。
 その時、これまでずっと感情を抑制してきて、死にかけていた自らの生き方を振り返り、堪え切れずに嗚咽が溢れ出した。

 それはギフンが言った「人間には自然治癒力が備わっている」が引き金になっていて、不遇だったジアンはある意味治癒して、幸せになるために去っていった。
 それに対し「俺たち、本当に幸せになろう」とジアンに言った自分自身の方も治癒しなければならず、そのためには不可避的なカタルシスだった。

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 脚本家に確かめるしか正解はわからないが、観る人それぞれが様々に解釈する自由があるのも、ドラマの魅力の一つだろう。

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※ 追記(2021/05/07)※
この項「パク・ドンフンの慟哭」として、別記事にしました。
https://note.com/tsukidamasaya/n/n50acd62f17df

6.

コロナ禍が収束したら

 韓国は12年前に一度訪れたきり。
 コロナ禍が収束したら、これまでその類の行動には全く興味はなかったが、急いでロケ地訪問をしてみたい。
 再開発が進んで取り壊されてしまう前に。
 自身が健康で歩き回れるうちに。


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7.

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ノッティングヒルならぬ…

 「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」の中で、三男ギフンが映画「ノッティングヒルの恋人」に言及する場面がある。

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 大女優と冴えない書店主のラブストーリーで、遥か昔に一度観た記憶はあったのだが内容は忘れていたところ(ジュリア・ロバーツがイチロー元選手に見えて、個人的に彼女に興味がないこともある…)、昨秋ちょうどテレビで放映していたので、録画していたものを先日観た。

 結果として、今は清掃業のギフンが人気女優への階段を登り始めたユラとの自分達の境遇を、この映画に重ねた脚本・描写はとても良かったと思う。
 ユラを勇気づける際の

 「スクリーンでお前の姿を観たら、寂しくなるかもしれないが、嬉しい
 はずだ」

というセリフの場面と、ドラマ最終回の映画館の場面と、この「ノッティングヒルの恋人」とのリンクが良い。

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 そして、覚えていなかったがこの映画には、主人公の書店主が大女優に一度フラれていて、そのトラウマから大女優からのせっかくの愛の告白を断ってしまう場面があった。

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 これは、私が「『マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~』に嵌った理由を考えてみた (番外編)」のに記述した

  離婚するドンフンの先輩が語った「怒りは消えると思った」「常に頭に浮かぶんだ」…。

とも通じる部分があるような気がして(…いるのは私だけかもしれないが…)、書店主の気持ちがとてもよくわかった。

 以前、心に残らなかった映画も、こういう何かのきっかけで見直してみると、また違った感受性での新たな発見などもあるかもしれない。

 タイトル画像は、30年程前に訪れたロンドン郊外の菜の花畑を、車窓から撮った写真のプリントをスキャンしたもので、もうとっくに色褪せてしまっている。
 「ノッティングヒルの恋人」の終盤、ハムステッドヒースが出てくるが、4年前まで現地に住んでいた友人が「風景がとても美しい場所」と言っていた。

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人間の持つ自然治癒力」で
コロナ禍が収束することを
心より願います。

  『ファイティン!

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