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2023/10/15

「わたし明日たんじょうび」
そう言った私に彼は
「ええ!早く言ってよ!お祝いしないと」
次会うときにプレゼント渡すから、と言って
私へのプレゼントを考え始めたようだった。

わたしは「別にいいのに」と言ったのに、彼は頑なに「何がいいかな」って私のことなんて気にしてないようで

なんなの、と思いながらわたしは彼についていく。

本当にいいのに。
誕生日なんて、一つ年を取るだけで
そんな特別なことじゃない

わたしはことばにはしなかった。

「気にしなくていいですよ」
そう言うわたしに彼は言った。

「誕生日って、一年に一回なんだよ。
クリスマスも一年に一回だけど、なんてことないでしょ。
でもさ、誕生日って特別だと思うのよ」

意味が分からない。
誕生日は一年に一回。当たり前のことだ。
何が特別なのだろう。
わたしは、聞かなかった。


「何がいいかなぁ」
彼はわたしと別れるまでに何度言っただろう。
本当に、まじで、いいのに。
寧ろ少し困る。
だってあなたとわたしは、誕生日にプレゼントを渡すほど仲がいいわけではない、でしょう。
もらっても困るよ。返せないよ。
わたしたち、いくつ離れてると思ってるの

こころの中で膨らんでいく気持ちはそのままに
今日はありがとうございました、と
手を振った。


帰路に就いたわたしは頭を悩ませた。
困るなぁ
困ったなぁ

今後、どう関わっていこうか
わたしの頭の中の9割はそれだった。


残りの1割、

「誕生日って特別なんだよ」

彼が言った、そのことば



いつからだろう、自分の誕生日にわくわくすることがなくなったのは。

誕生日プレゼントに欲しいものを聞かれても、答えられなかった。
「おめでとう」って言われても嬉しくなかった。

わたしいつまで生きるんだろう

自分自身に問いかけて
答えが出ないままここまで来て
わたしの十代は、あと一年と一日で終わる。


(続)







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