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『神様の暇つぶし』(作・千早茜)を読んで

なんとも言えない気持ちになった。

読了した直後、この小説に対してそんな感想しか出てきませんでした。
今まで読んだことのないジャンル。
生々しい表現(まだ優しい方なのかもしれない)、登場人物の人物像、物語の進み方、すべてが私にとって新鮮で刺激的でした。

作家の千早茜さんを知ったのはかなり最近です。
お客様に教えてもらってその存在を知りました。

この小説を読んで、千早茜さんという小説家を知れて良かったと思いました。

この小説の冒頭にはこんなことが書いてあります。

思い出とは、濾されてしまうもの。
純度の高い記憶だけが網の上できらきらとした結晶になって残る。

私たちは嫌な記憶は忘れ、いい思い出はずっと残っています。

なんか嫌だなと思って別れたはずなのに、楽しかったことばかり思い出してしまうのは私だけではないと思います。

小さいことなんか忘れて、自分の都合のいいものだけを残す、というのは人間の生きる術なのでしょうか。

主人公の「藤子」は、私には遠い人間だと感じました。

彼女は自分の父親よりも年上のカメラマンの男性に惹かれ、気づけば彼に沼ってしまっています。

誰かに依存するという経験は今のところないので、なぜ藤子はそんなにその男性に惹かれるのかが不思議でした。
きっと、両親がいない彼女には、愛情を向ける相手として彼がぴったりだったのかなと。

2人は最終的には男女の関係になってしまうんですよね。
でもいくら歳の差があるとは親子ほど離れたカップルなんてたくさんいるよな…と考えれば小説だけど現実的な話とも捉えることができます。

とはいえ、自分より親の方が年齢が近い相手となるともはや自分だけの問題ではなくなりますし、寿命のことも無視は出来ない。。

きっと私は藤子のようにおじさんを好きになることはないと思います。

そういう点で、私は藤子のようにははらないと思っています。(人生何が起こるか分からないですけどね)
でも、別れた後もずっと相手の事を考えてしまうという藤子の恋心には共感しちゃいました。

男性と出会ってどんどん変わっていく藤子。
最初は彼を亡くなった父親に重ねていたけど、徐々に1人の男性として見ていく。

その変わりようがとても興味深かったです。

あと、食べることが好きな身としては
食事のシーンの描写がどれも美味しそうなのが良かったです。


この一冊に人間の欲望が詰め込まれた、「生」を感じる小説でした。






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