東京外国語大学2017年度第1問・問6についてのメモ
主題:日清戦争後から第1次世界大戦期にかけて
鉄鋼業を中心とする日本の重工業はどのように発展したか
鉄鉱石・銑鉄・鉄鋼など原材料の輸入状況はどのようなものか
条件:5つの指定語句を使用する(官営八幡製鉄所,造船業,鞍山製鉄所,アメリカ,成金)
注意点
どのように時期を区分するのか。
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日清戦争後,第1次世界大戦期という表現を念頭におけば,日清戦争後,日露戦争後,第1次世界大戦期と3つに区分するのも一つの方法だが,日清・日露戦争期(明治後期)と第1次世界大戦期の2つに区分するほうが書きやすい。
「鉄鉱石・銑鉄・鉄鋼など原材料」と指示されている点
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鉄鉱石は,官営八幡製鉄所が原料鉄鉱石を中国大冶鉄山から輸入していたことを知っているはずなので説明しやすい。銑鉄・鉄鋼の使い方が難しいかもしれないが,両方合わせて「鉄類」として考えればよい。
解答例
重工業は多くの資本と高い技術力を必要としたこともあり,日清・日露戦争期,政府の保護政策を背景として成長し始めた。造船奨励策を背景として造船業が成長するとともに,日清戦争の賠償金をもとに,ドイツから技術を導入し,原料鉄鉱石を中国大冶鉄山から輸入して官営八幡製鉄所が操業を開始し,鉄鋼の国産化がはかられた。しかし鉄鋼業は欧米諸国に比べて技術力が劣っていたため,アメリカなど欧米諸国から銑鉄・鉄鋼など鉄類の輸入が増加した,第1次世界大戦期には,ヨーロッパ諸国が総力戦を展開したことを背景にイギリス・ロシアへの軍需品の輸出が伸びるとともに,世界的な船舶不足から造船業が急成長して成金が続出するなど,重工業が本格的に発展した。鉄鋼業でも満鉄が鞍山製鉄所を設立するなど生産が拡大したものの供給が追いつかず,ヨーロッパ諸国からの重工業製品の輸入がとまったこともあり,国内では銑鉄・鉄鋼など鉄類の不足に悩まされた。
※太字が下線部