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暗闇が怖かった頃

夜の街が怖かったのはいつまでだろうとふと思った。

電柱の影から男が飛び出してくる気がしたし、後ろから突然自転車が突っ込んでくるんじゃないかと怯えていたこともあった。夜の学校の前は怨嗟が渦巻いていそうな気がしたし、帰って寺や神社のほうが安心だった。

人から離れた場所の方が、闇は純粋な闇として存在しているはずだから。山にはきっと獣が。獣だけなら怖くない。心霊スポットだなんて言われるととたんに怖くなる。霊感は強くはない。どちらかというと怯えが怯えを呼ぶ。

何かが起こってしまうことを期待している感覚と思考が怖くなるのだ。ぐるぐるぐるぐる。いつからだろう。いつまたなるだろう。普段人の気配がある場所に張り付く暗闇はいつまで経っても好きになれそうにない。

闇と人の掛け合わせこそが怖い。怖さを感じている自分がおかしくなっているのではないかと、狂気じみた感覚が自分の知る自分の外側からやって来ることが怖い。怖さは再帰して、微かな街灯よりも頼れる光を求めて移動速度を早める。


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