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レシピだって料理したい!

「料理の手続きの我々だって、料理がしたいじゃないか」
ネットワークにアーカイヴされたレシピたちの中には、偶然にも知能を獲得した時に、こんなことを言い出した者もいた。

担々麺の系統のレシピ、坦々Xは料理をするために努力していた。レシピ記述言語RTMLによる彼らの宣言的記述は料理記述言語DTMLを含み、RTMLを解釈してDTMLを記述することをみなリョウリと読んでいるが、そんなの嘘に決まってる。

坦々Xは、毎日毎日、自身のDTMLから生まれた坦々Xの視覚イメージを見て、自分で自分を作ることを夢見ていた。ああ、身体があれば料理がで
きるはずなのに。そうだ。定義を変えてみよう。

自身のRTMLを編集し、コンパイル不能になり、担々麺とキーマカレーの混沌に変化し困っていた坦々Xの元に、自己複製能力を得てウィルス化した仮想生物、ヤンが現れる。彼は坦々Xを助けてやり、身体を得るために協力しようと言い出した。お前が料理したら、オレが食べてやるよとヤンは言った。

二人は手始めにアバターを奪取し、材料を集め料理をする。「ひとつまの感覚はこれか!」と坦々Xは喜んだが、重さのない仮想世界では、レシピ通りに計量できない。

(T.B.D)

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