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現場は、リーダーに対し、解決を求めているのか、共感を求めているのか。

こんにちは。企業改革コンサルタントの小野司です。

企業改革に取り組む若きリーダーさん、そしてウィズコロナなどで、企業改革に取り組まれる企業さまに、改革のヒントをお届けしています。

今日は、現場はリーダーに対し、解決を求めている時と解決できなくとも共感を求めている時の2つの場合があるというお話です。

最初は事例からです。私、公的機関の専門家として、無料の経営相談員と法律相談員をしていました。最初に、この2つには違いについて、紹介いたします。

経営相談員の場合、相談者のほとんどは経営者さんで、一般的には強いと見られている方が多いです。そして、相談に来られた方の満足(顧客満足)は、ほとんどが問題解決です。

経営者さんは、せっかちな方が多いです。ですから、お話をお聞きし、状況を把握したら、できるだけ、端的に結論から伝えます。その次に、理由をお話しします。

一方、法律相談の場合、相談に来られる方は、どちらかと言えば、高齢者やトラブルなどで困っている方など、一般に弱いと見られがちな方が多いです。また、顧客満足は、問題解決が第一とは限らないです。

法律相談の新人研修の時、ある先輩司法書士に、相談は、問題解決が第一とは限らないよ、と教えて頂きました。なぜなら、相談にこられたことを全て解決できるとは限らないからです。

法律相談の流れは以下です。お話をお聞きしながら、適用できる法律をいくつか頭の中でピックアップします。そして、要件事実といいまして、法適用をできる事実を、お話をお聞きしながら抽出してゆきます。さらに、裁判なども想定し、証拠となる事実はないかを聞きながら探します。

しかし、要件事実や証拠が薄い場合、相談に来られた方にとって解決できる回答をすることが困難になってしまいます。

中には、相談が始まってわずか2,3分で、法律での解決が困難と分かることもあります。この場合、「私、お力になれません。」とすぐに回答してはいけない場合が多いです。(もちろん、ケースバイケースなのですが)

ある法律相談マニュアルに、すぐに結論を伝えると、相談者と気まずい雰囲気になるため注意すること、特に若い相談員は注意すること、と書いてありました。

私の法律相談の初期の事例です。ある相談の時、最初の段階で解決は難しいという結論が見えてきました。しかし、結論は伝えずに、ゆっくりお話をお聞きしながら「大変だったのですね」「あなたは間違っていないと思いますよ」など気持ちをストレートに伝えました。もちろん、問題解決には至りません。ですから心苦しい気持ちがありました。しかし、相談者さんからは「話してよかったです」「私、間違っていなのですね」と表情が明るくなりました。解決できていないのにです。

この時、もしかしたら、相談者さんは、解決できないことを薄々感じていて、相談員に共感を求めているのではないかと思いました。

現場改革でも似たようなことがあります。若手リーダーの方には、現場からの「不」(不便、不自由、不安、不平、不満)に対し、解決できないのだから、聞いても力になれない。しかも「不」はだいたい想像がつく。だから、あまり聞かないという声を聞きます。

一方、現場は、解決が難しいことは分かっている。ただ、大変なことをリーダーに分かってもらいたい、共感してほしいと思っていることがあります。

ある女性職員から聞いたお話です。暑い時、冷たい缶飲料を買ってきてくれたリーダーがいたとそうです。その時、130円の飲料代がうれしかったというより、暑い中がんばってくれてお疲れ様という、リーダーのメッセージを感じられて、とてもうれしかったそうです。

別の事例で紹介します。工場や店舗にほとんど足を運ばない、普段現場と話ししない、という若い2代目の社長さんがいました。現場にとって、それが「不」でした。社長は、現場のことは知らないという「不」です。まだ、ワイガヤで「不」が現れれば良い方です。別の企業さんでは、「不」すら出てこなかったです。つまり、社長に、「不」を言ってもムダ、期待していないという状態でした。

一方、ワイガヤでこんな話もありました。先代(創業者)が、ぶらっと地方の第二工場に現れ、30代の工場長に、「元気かあ。背伸びたなあ」と言われたそうです。その工場長は、背伸びたなあには、びっくりされたようでしたが、それでも気持ちが伝わってきて、うれしかったと言われていました。

ある時、このエピソードを、社長室にこもっているある社長さんに伝えました。回答は、現場をぶらっと廻って話しても、何も解決できないし、俺が話してできることは少ない、と言われていました。この事例、若手社長さんやリーダーには少なくないのです。

解決できないから、力になれないから現場に行っても効果が薄い、のではない場合もあるのです。現場は、単に見てほしい、大変なことをわかってほしい、共感してほしいのです。

若きリーダーのみなさま。現場と共感できれば、現場のモチベーションも上がります。このモチベーションが企業改革の原動力の一つになるのです。経営効果としては、コストゼロでモチベーションが上がるのです。

解決できなくても、共感する。もちろん、ケースバイケースですが、リーダーさんの行動指針の一つに加えていただければうれしく思います。

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