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事業承継では、先代に最大の敬意を払う

こんにちは。企業改革コンサルタントの小野司です。

企業改革に取り組む若きリーダーさん、そしてウィズコロナなどで、企業改革に取り組まれる企業さまに、改革のヒントをお届けしています。

事業承継の前後で、企業改革に取り組まれる次のリーダーさんは少なくないと思います。ここでは、親族内承継、あるいは長く勤めていらっしゃる従業員さんなどへの承継について、ポイントを紹介いたします。

事業承継には、大きく2つございます。1つは、先代が60歳前後でスパッと承継する場合です。もう1つは、逆に先代が70代、80代になっていてなかなさ前に進まない場合です。

前者の場合は、従業員さんや取引先などとの関係を引き継ぐことになります。新社長のリーダーシップ力やマネジメント力を高める課題はあります。しかし、先代との関係では、比較的円滑に進みます。

後者の場合は、先代との関係では、難しいです。また、こちらの事例の方が圧倒的に多いです。ここでは、後者の場合をメインに紹介いたします。

ある会社の事例です。現社長は83歳、承継候補は45歳の実娘でした。その娘さんは行動力抜群で、2代目経営者として申し分ない力量をお持ちでした。
しかし、社長も元気でした。一人で長距離運転して、お客さまのところにすぐ駆けつけるほど元気でした。
一方、専務、取引先相手、メインバンクの方は、社長は元気といっても何か事故でもあると大変なため、事業承継の準備を進めることになりました。
最初、社長は乗り気ではありませんでした。そのため、何度か話し合いを持ち、納得してもらいました。そして、経営、法的、税務的な手続きの手順を決め、先に進めていくことになりました。
次の話合いの場の時です。「手続きはもう少し後にしよう」と言われました。振り出しに戻るというものです。

別の事例では、「株式の譲渡は、承継後にしよう。」「今の会社は自分がそのまま社長でいて、息子には新会社を設立し、少しずつ事業を譲渡していこう」など、いろいろあります。

「言ったことが変わる」という場面です。

事業承継では、このような事例は、普通に起こります。最近では、何もない方がめずらしいように思えます。

そこで、どうして、先代(現社長)には振り回されるようになるのだろう、と考えるようになりま

私の事例ですが、その原因は、大きく2つあるように思います。

1.先代(現社長)の迷いや戸惑い

どの事例も、先代は、経営感覚、決断力、実行力、ともに優れています。ですから、迷いや戸惑いとは無縁のように見えます。しかし、先代にとって、会社は自分の人生そのものです。

自分の引き際を決断するのは難しいのだと思います。

さらに、先代には、経営について相談できる方はいらしても、承継についてはすべて相談できる方は、少ないように思います。というより、いないようにさえ思えます。

私、法律家として、遺言書作成の支援もしています。高齢の方にとって、遺言書を作ること自体が、“遺書“を作るように感じる方も多いのです。自分の人生は終わったように感じるものです。
遺言書作成やエンディングノート作成の前段階として、心の壁を取り除くためのコンサルをされている専門家がいらっしゃるくらいです。

遺言書は、何度でも書き直せるのですが、作ること自体に、心の壁があります。

事業承継は、手続きが終わりますと、後戻りするには、多くの手続きが必要になります。事業承継を決断するための、心の壁は私たちコンサルタントが思うより、相当厚いのではないかと思います。もちろん、個人差はあると思います。

ですから、迷いや戸惑いは、あって当然だと思います。その迷いや戸惑いが、「言ったことが変わる」につながっていると感じています。

2.周囲の人の多くは、後継者の応援団

多くの経営コンサルタントは、「会社」が最もよくなることを第一にして支援します。少し極端に表現しますと、「社長」にとってよくなる、というより、「会社」にとってよくなる、ことを優先しているように思います。

金融機関、商工会・商工会議所、産業支援機関さんも同じスタンスの方が多いように感じます。

事業承継の場合にあてはめます。

先代は引退され、後継者はその後会社を経営してゆきます。そのため、「会社」とってよくなるというスタンスの場合、「後継者」にとってよくなる、とイコールになってきます。

となりますと、「先代」にとってよくなるというスタンスの方は、ほとんどいなくなるのです。孤独感は、相当と思われます。誰にも相談できずにおられるのと思います。

周りの人は、後継者の応援団にみえるようになるようです。

私、そのことに気づいてから、“先代にとってよくなる“というスタンスに軸足を少しずらしました。つまり、先代に敬意を払い、先代の立場を理解し、先代に寄り添うようしました。

それから、事業承継のコンサルタントは円滑になったように思います。

若き改革リーダーのみなさま。みなさまの中には、事業承継に取り組まれている方も多いと思います。

うちの社長(先代)は、好きなようにやっているのだから、寄り添う必要なんかないよ。敬意を払いましょうと言っても、、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、先代は、自分の引き際を決断しなければならないのです。

ワンマンで、強い先代ほど、その決断に、大変な苦労をされているかもしれないのです。会社の代表権を手放すことについて、迷いながら、苦労されているのかもしれません。

一方、改革リーダーさんも大変だと思います。いや、リーダーさんの方が大変かもしれません。

いい事業承継にするため、その先代に対し、敬意を払うことをしてみませんか。

それは、改革リーダー自身が、自己改革することにつながりかもしれません。

そして、承継後は、先代の築いた山の上に、さらに大きなお城を構えるようになると思います。応援しています。






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