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採用面接の基礎

光栄な事にキャスター様から「採用 Advent Calendar 2019に寄稿いただけませんか?」とご依頼を頂き、自分の戦略人事や採用戦略の概念をアップデートしている最中でしたので、とても貴重なアウトプットの機会と思い参加させていただく事になりました。

合意の無い期待値が溢れている面接の罠

私は、CLUB-CHROというCHRO向けのコミュティーや、CANTERAという戦略人事を学ぶアカデミーを運営していて来年大幅なリニューアルを考えているのですが、前述の通りアップデートする必要性を感じていました。そのきっかけになったのは、とてもお世話になっている東証1部上場のさくらインターネット田中社長が寄稿された「社会人の不幸の8割は合意の無い期待から」による影響でした。

上司と部下の合意の無い期待値は、面接から始まっている

田中社長の記事をご覧いただけると、上司と部下における双方合意のない期待値が起因する罠についての内容であり、日々組織で起こる課題の多くが合致すると納得しました。その上で感じたのは、企業様の人事支援をしている立場から多く散見している合意の無い期待値のズレは、そもそも採用面接時から始まっている事でした。キャスター取締役COOの石倉秀明さんも常々発信していますが、当たり前の事を実直にやり続ける事こそが採用成功の近道であり、これが出来ている採用担当者が少ないという件。私も同感であり、かつその基礎的な部分にフォーカスし支援する事が多かったのですが、理解しやすく言語化すると合意の無い期待値の採用面接という言葉が妙にしっくりくる感覚がありました。今回の投稿では、この合意の無い採用面接に至っている代表的な事象について触れたいと思います。

面接官として「デキる人」「できない人」の特徴

単刀直入に言うと、デキる面接官は会社に適切な人を採用します。デキない面接官は自分が好きな人を採用する。ここが明確に違いますし、これでは応募者も採用者も互いの期待値が合致する等不可能です。「会社に適切な人」というのは、会社は今どんなフェーズにあり、その中でどのような経験・スキル・能力を有する人が高い生産性を実現できるのか。そういった状況から判断した人物像のことを指します。その上で、求めている人物像が入社したら、組織としてどのような生産性を上げられるのかまで設計するのが、できる面接官です。だから、最高のタイミングで適任者を現場に送り込むことができる。業績を伸ばしている企業には必ず、設計できる面接官が存在してます。

人は、自分と合う人や好きな人を選んでしまう癖がある。

人はどうしても自分が好きな人に興味を抱きます。必ずしもその人が会社に合うとは限らないのに、なんとなく「自分の会社に合いそう」とか、「自分と気が合いそう」という感覚で判断しがちです。こういう個人に依存した面接をすればするほど、面接官ごとに採用する基準が異なり、本来入社してほしい人材の採用は遠のいてしまう。そうなれば、会社にとってもプラスの影響は見込めず、業績にも影響が出てきます。最悪の場合、本来必要となる人材不足による業績不振にも陥ってしまうのです。だからこそ、人事担当者は「会社に適切な人」を見極められる面接官のスキルの体得と、複数の面接官が同様の面接力を再現する運用力が必要です。

業績を伸ばしている企業だったり、業界を第一線で引っ張っている企業だったり、優秀な人材が数多く在籍している企業の人事担当者は皆、自分に「合う・合わない」で採用するようなことは一切していません。先ほども言ったように、求める人物像を明確にして、経験スキルや能力を分析した上で採用する。この為に必要な運用を地道に徹底しているから優秀な人事と言われるのではないかと、皆さん、口を揃えておっしゃいます。異なる言い方をすれば、特別な方法を用いている訳では有りません。実直にやり続けられる人事が殆どいないというのが真実です。ある企業では、面接者に適性テストを受けてもらって、一次面接で聞くこと、二次面接で聞くこと、三次面接で聞くことを面接シートで明確にし、かつ、面接者は、どの部署と上司の関係なら1番能力を発揮できるのかを、月報の結果をさかのぼって分析し、データに出すところまでやっています。論理的に採用活動を行うから、高い生産性をもたらす人材を採用することに成功しているのです。

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採用は「アート」と「サイエンス」

人事向けのセミナーで良くお伝えするのですが、採用は「アート」と「サイエンス」です。アートとは「感覚的」なもの。サイエンスとは「定量的」「科学的」「データ的」なものです。今の採用に不足しているのは、サイエンスの部分です。ようするに、これから入社する人が「どの部署で」「どういう役割で」「誰と上司の関係になると会社で活躍できるのか」「三次面接までにどんなことを分析すればいいのか」という部分まで定め設計できれば、あとは設計した仕組みの中で運用するだけ。最初の設計段階からきちんと考えられると、実はそれほど難しいことはありません。

実際、有名なIT企業の優秀な人事担当者も「運用が9割」とおっしゃっています。ちゃんと運用まで出来ることこそが設計であり人事の本質です。結局、採用というのは業績を伸ばすためにするもの。「何人が入社した」で判断するのではなく、「入社した人の何人が生産性を上げて、業績にコミットできたのか」で判断することが重要。そのために、人事担当者が現場まで足を運び、入社後の活躍まで、きちんと理解することが必要不可欠です。

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精度の高い面接方法で簡単にできる事は

面接官は、面接者のタイプに合わせて変えるべきです。というのも、タイプによって共通言語は違います。例えば、合理的なタイプの面接者が、情熱的なタイプの面接官と会話をしても噛み合いません。しかし、合理的なタイプの面接者と合理的なタイプの面接官となら、会話は弾むのです。もし、このような考えを持たずに面接をしていたなら、優秀な人材を逃している可能性があります。また、直属の上司が面接官に入らない会社も良くありません。自分の上司になる人に会えないまま入社するということは、お互いに不安を抱えた状態でのスタートになってしまうのです。このようなポイントを押さえて面接に臨むと、より精度の高い面接を実現できるはずです。

自分に似ているとか、好きという理由で選ぶとお互いにとって幸せではありません。友達になるなら良いと思いますが、いざチームとして仕事をするなら、弱い部分を補ってくれる人を採用する。チームで活躍できる人を採用するとは、弱みを補うことだと思うのです。活躍できる人かどうかを見抜くにはどうすればいいのか。誰が面接官だといいのか。ということを「サイエンス」を上手く使って考えていくことが大切です。

是非、合意なき期待値が限りなく減らせる採用面接を実践し、幸せな入社者を増やし、活躍できる社員が増える事を祈っています。

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