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技術士(経営工学・情報工学)が教えるDX(デジタルトランスフォーメーション)講座19デジタライゼーション(①SoR)-余計なカスタマイズを見直して業務システムをスリム化する-

 デジタル技術を駆使することによって、圧倒的な競争優位の獲得をめざす企業がある中で、昔ながらのシステム構築や運用にとどまっている企業が太刀打ちできる余地はありません。

 生産管理システムを例にとっても、IoTによって収集したセンサー情報を元にデジタルツインを実現することによって、遠隔地にある工場の製造状況を手に取るように把握することが可能になります。

 一定間隔でセンサー情報を収集するようにしておけば、故障の兆候を探知することによって、設備停止を防止することができます。デジタルツイン上で仮想の製造指示を流して納期を予測したり、コスト削減やリードタイム短縮のためのシミュレーションを行うこともできます。

 工程管理においても、ブロックチェーンを使えば改ざん不能のトレーサビリティを実現できます。共通のブロックチェーンを利用することによって、仕入先や外注業者、物流会社など社外関係先をも結びつけた取引記録の連鎖が可能になります。

 AI画像認識による合否判定のしくみも一般的になってきており、昔ながらの生産管理システムを構築・運用している工場と、スマートファクトリーと呼ばれる設計から製造、保守にいたるビジネスプロセス全体の変革をめざすDX志向の工場との間の格差は大きくなる一方です。

 こうした状況の中で、昔ながらの生産管理システムにこだわる企業がなくならないのはなぜでしょうか。それは今までやってきたことへの執着や、便利になることにへのこだわりが大きすぎるからです。

 生産計画や生産指示、実績報告、工程管理、在庫管理といった生産管理システムの標準的な業務機能については、パッケージソフトが提供する標準機能を使うことにすれば、余計なカスタマイズ費用も要らなくなり、納期も短くなります。カスタマイズ費用をIoTやブロックチェーン、AI活用など最先端のデジタル技術の活用にまわすことができれば、スマートファクトリーを実現することも夢ではありません。

 時代遅れの生産管理システムを使い続けて、高い保守費を支払い、最先端のデジタル技術を導入できないのでは、あまりにも残念です。新しい生産管理システムを導入するという計画がある企業でも、結局、今まで使ってきたシステムに合わせたカスタマイズにお金をかけてしまうのでは、この先また何年も古い情報システムを使い続けることになります。

 プロセスのデジタル化を意味するデジタライゼーションの中でも、SoR(System of Record)と呼ばれる記録のシステム、いわゆる販売管理や生産管理、会計、人事といった業務システムの構築においては、余計なカスタマイズを排除してパッケージソフトの提供機能に合わせた業務の標準化をめざすことが不可欠です。

 顧客価値の創造に関係せず、担当者だけが楽をするためだけのカスタマイズは排除し、顧客価値の創造のために確かに意義があるというカスタイズだけに絞り込めば、パッケージソフトはうちには合わない、システム構築には金がかかるといった話しの多くは消えていくはずなのです。


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