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技術士(経営工学・情報工学)が教えるDX(デジタルトランスフォーメーション)講座32デジタライゼーション(③SoI)の実践-事後把握のためのデータ集計から将来予測のためのデータ分析へ-

 業務の効率化など今ある問題を解決するのは単なるIT化であるのと同じように、どれほど高度なデータ分析を行おうとも、今の計画がうまくいっているかを事後把握するためのものは単なるIT活用にすぎません。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)において、SoI(System of Insight/分析のためのシステム)が重要視されるのは、それが未来のあるべき姿の実現に向けて何をすべきかを示すためのものだからです。

 SoI(System of Insight/分析のためのシステム)は、SoR(System of Records/記録のためのシステム)によって蓄積されたデータや、SoE(System of Engagement/関係のためのシステム)によって収集されたデータを使って将来予測するためのものです。

 現在注目を浴びているChatGPTなど生成AI(ジェネレーティブAI)も、自分一人や自部署だけの仕事を楽にするためだけに利用するのではDXとは呼べません。小さな業務改善であっても、部署や企業の壁を越えた新たな取り組みにつながることを目指すべきです。

 BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールは、簡単に集計やグラフ作成ができるだけでなく、様々なデータソースを一つのプラットフォーム上に統合できます。データが社内に散在しているため、十分にデータを使いこなせていないという企業でも、BIツールが簡単に部署の壁を越えたデータ分析環境を実現してくれます。

 しかし、商品情報や顧客情報といった同じデータであっても、項目の持ち方が違っていては連結することができません。同じ商品であるにもかかわらず、業務システム上の商品名とネットショップ上の商品名とが異なっていたり、業務システム上の顧客名とExcel管理資料上の顧客名とが異なっているといったことがよくあります。

 結局、SoIを実現するためにも、項目名などの全社的な「標準化」を図ることが不可欠なのです。SoEの場合であれば、顧客や取引先との間でデータの持ち方について「標準化」に取り組むことが必要です。

 統計解析やデータマイニングソフト、さらにはAIなど高度なデータ分析を可能とするツールの多くがクラウドサービス化して導入・運用が容易になり、コストも抑えることができるようになりました。Microsoft365のアカウントを持つユーザであれば、Power BIを追加費用なしで利用できるなど、SoIの取り組みは以前と比べて垣根の低いものとなってきています。

 さらに衝撃的なことに、次のMicrosoft OfficeではChatGPTが標準で組み込まれることになっています。Powerpointスライドが自動生成されたり、Teams議事録を作ってくれるなどの新機能の組み込みが予定されています。特に、Excelでは時系列の業績を集計した表から次期の業績を自動的に予測してくれるなど、Officeツールの活用だけでも企業間のDX格差が起きてしまうことが推測されます。

 最後に、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールとローコード開発ツールの組み合わせが持つ可能性について述べておきたいと思います。現在の業務システムやネットショップ、Excelファイルにはないデータは、ローコード開発ツールを使えば簡単にデータ入力アプリを構築することができます。

 現行の業務システムではやりたいデータ分析ができないという声をよく耳にします。キントーンやMicrosoft PowerApps、Google AppSheetなどのローコード開発ツールを活用して新たなデータを収集し、BIツールを使って既存データと統合すれば、業務システムを再構築しなくても、今できていないデータ分析を実現することができるのです。

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