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起業家と魅力的なパートナーを「つなぐ」役割を果たしたい。ぼくがVCでチャレンジしようと思った理由

SaaS特化型のベンチャーキャピタル(VC)ALL STAR SAAS FUNDにジョインして、5年目に入りました。

これまでVCに参画した背景をちゃんと説明したことがなく、「楠田さんって、なんでALL STAR SAAS FUNDにジョインしたの?」と質問をもらうことも多かったので、あらためて自己紹介しようと思います。

これまでの経歴とVCに入った理由、なかでもALL STAR SAAS FUNDと出会った背景について書いてみます。

前職は転職エージェントだった

前職は、JACリクルートメントという転職エージェントでした。特に初期フェーズのスタートアップのお客さまに対してハイクラス人材の採用支援をしてきました。

JACでのエージェントとしての挑戦は、自分のキャリアにおいて分岐点となったと思います。

いまでも大好きな会社で、もう一度キャリアのやり直しができるとしても、私は迷うことなくJACリクルートメントを選ぶと思います。それくらい素敵な会社です。

ではなぜ退職したのか。

それは、エージェントとして「入社決定」を追い求める仕事から、「起業家の長期的な成功を支援したい」と思うようになる出来事が、ちょうどJACに入社して4年目のときに起きたからです。

その出来事とは、父の会社の倒産でした。

起業家で、経営者だった父を見て

20代で起業し、母と姉、妹、僕を含め子ども3人と愛犬2匹を育てあげた父はとても尊敬する存在で、そして僕の憧れでもありました。

僕の家系は「商売好き」が多かったようです。ちょうど先日他界した祖父(父のお父さん)は、戦争で両親をなくし、幼少期から身寄りがない中で引き取られ、貧しい生活をしていたそうです。

そこから戦後、無我夢中で働き不動産会社を立ち上げ、家庭を支えてきたと聞いています。

そんな背中をみていたからか、父も商売が大好きな人間でした。高卒で働きはじめ、20代で起業。祖父同様に情熱をもって仕事に向き合っていました。

彼らのことを見て育った僕が、父や祖父のように夢中になれる「商売」を見つけたいと強く思うようになったのも自然なことだったと思います。

高校生のころ、うどんを100円で提供するチェーン店ができました。そのコスパの良さに感動した僕は、家に帰るなり、「大学は行かず、うどん職人になりたい」と家族に伝えました。

父は僕の話をひととおり聞いて「もっと視野を広げてみろ」と却下。こんなやり取りを、何度も何度も父とのあいだで繰り返していました。

会社の節目で感じたこと

そんなふうに育ったので、父の会社が倒産すると聞いたときは、父がこれまで築きあげてきたものが崩れていくように思えて、とても悔しかったのを覚えています。

自分が父のために力になれなかったこと。ただただ、見守ることしかできなかったこと。何もできない自分に悶々としていました。

父のように自分のやりたいことや夢に挑戦する人の、一番の伴走者になりたい――。僕はいつしか、そんな気持ちを持つように。

具体的に考えていたのはこんなことです。

・起業家にとって、「重要ポジションを早期に決めてくれるひと」ではなく、「どんな時もフラットに支えてくれるパートナー」を目指したい。

求職者にとって、「良い求人を紹介してくれるひと」ではなく、「仕事で悩んだ時に第一に頼れるキャリアのパートナー」になりたい。

これらを達成したいと強く思うようになり、僕は転職を決意します。

VCを新たなフィールドに選んだ理由

VCをネクストキャリアとして選択した理由はとてもシンプルなものでした。

「起業家」や「求職者」の方々にパートナーとして寄り添いながら支援するためには、短期的な成果ではなく長期的な視点を持って、起業家の挑戦や、それを支えるキーパーソンに関われるビジネスモデルであることが重要です。

その点で、スタートアップの成功のために長期的に伴走するというVCのビジネスモデルは、まさに自分が求めるフィールドだったのです。

そこからいろんなVCの方にお会いしてお話を伺うなかで、 同じVCでも会社によって提供する価値や目指すビジョンが異なり、その違いが起業家と求職者との向き合い方にも現われることがわかってきました。

SaaSを調べると必ず出てくる名前

ここで少し時間をさかのぼります。

たしか2018年頃だったと思います。JAC時代にスタートアップから受ける求人の依頼が、面白いぐらいに、どんどん「SaaS求人」というキーワードで染まっていった時期がありました。

「SaaSっていったい何なんだ?」「どんな人が求められているんだろう?」 未知のものを知るワクワク感もあって、ニュース記事やブログを読み漁り、Podcastも聞いたりしながら情報収集を重ねる日々。

すると、いろんな場面で同じ名前を目にすることに気づきました。

それが「Hiro」こと、ALL STAR SAAS FUNDのマネージング・パートナー前田ヒロでした。

僕がALL STAR SAAS FUNDというVCを選んだ最大の決め手は、Hiroの存在と彼が大切にしている価値観に尽きます。

その価値観とは、スタートアップの成長には“ひと”の存在が必要不可欠ということ。起業家と、そこに集まる仲間(求職者)のことを同等に大切にするという考え方です。

SaaSの理解を深めれば深めるほど、Hiroが語る「SaaSの事業成長と『ひと』の重要性と連動性」に魅了されるようになりました。

自分がこれまで培ってきた「ひとをつなぐ」という強みは、SaaSというビジネスモデルで挑戦する起業家にこそ、貢献できるのではないか。

そう感じるようになりました。

「最高のタレント支援サービス」をつくるために

あるとき、縁あってSaaS Conference Tokyo(現在のALL STAR SAAS CONFERENCE)に参加。それ以降、Hiroともスタートアップの採用をテーマにディスカッションを重ねるようになりました。

「起業家にとってベストな価値提供は何か」
「どんな価値観を持った仲間が必要なのか」

自分たちの大切なパートナーになりうる人たちを主語にしたコミュニケーションが取れたことで、とても信頼感を感じたのです。

Hiroから「ALL STAR SAAS FUNDで一緒に最高のタレント支援サービスを作ろう」と誘ってもらったとき、僕は二つ返事で「やりましょう」と答えていました。

そして、2019年9月にALL STAR SAAS FUNDにジョインして、現在に至ります。

自分なりの「つなぐ」スキーム構築へ

そんな思いを持って意思決定をしたわけですが、VCに参画した当初はうまくいかないことの連続でした。

なぜなら、ALL STAR SAAS FUNDにおけるタレントパートナーの仕事は「求職者を紹介する」ことだけではありません。起業家からは切実な質問や悩みがどんどん飛んできます。

僕はエージェントとして経験を積んできましたが、VCという立場ではまだ人事領域のすべてに応えられる自信がありませんでした。

加えて僕はスタートアップ企業で人事を経験したことがなく、「本当に自分が起業家やスタートアップに関わる方々の力になれるのかだろうか…」というモヤモヤした気持ちから、起業家へのサポートや助言を躊躇してしまうことも多々ありました。

振り返ると、そのころの僕は不安と自信のなさの塊だったのです。そんなことをHiroに相談した時に言われた言葉がいまでも印象に残っています。

「起業家にとってTsukasaがベストだと思うサポートをしてあげてほしい」

この言葉をもらった時に、「僕が何ができるかも大事だけど、それだけじゃない。起業家の成功のために、必要だと思うことをすべて、全力でサポートすることが大事なんだ」と思い直しました。

どこかでプライドが邪魔して、「できない自分」「完璧でない自分」が怖かったんだと思います。

もちろん大前提として、自分が知らないことは全力で学習し、レベルアップしていかないといけません。ただその一方で、自分よりも圧倒的な有識者がいればお力を借り、協力いただくことが「起業家が目指す成功」にいち早く到達する近道になるのです。

そこからは、自分では知識が及ばない領域では、外部の有識者の方々に適宜協力してもらいながら、起業家に伴走するようになりました。

たとえば以下のALL STAR SAAS BLOGで発信しているコンテンツは、特に課題の多いテーマについて起業家の悩みを汲み取りつつ記事化したものです。

リクルートやニューズピックスといった企業で、事業と人事の領域において第一線で活躍されてきた宇尾野さんにお力を借りました。

EVeM代表の長村さん、そして社内の自身よりも知見のある仲間にご協力してもらい、スタートアップ企業のマネジメントをテーマにお話をしてもらいました。

泥臭いアクションを重ねてみた結果、起業家から、思いがけないほど多くの「ありがとう」という言葉をいただいて、何よりも多くの想定できる失敗を未然に防ぎ成功に向けて前進してきたように感じています。

そしてここ数年はだんだんと自分が本来目指していた姿に向けて、役割をアップデートしています。

ぼくがこの一連の経験を通して再認識したことは、自分のバリューは自ら求職者を探し出し起業家に繋ぐことだけではなく、起業の成功のため、全力で寄り添い、課題、悩み、不安あらゆるテーマに応じていち早く、適任者を「繋ぐ」ということ。

そこで自分の役割をもっと広く捉え、起業家と重要なパートナーとなってくれる魅力的な人材を「つなぐ」ということを自身の価値として再定義してみました。

具体的には以下の3つの「つなぐ」スキームを意識して、少しずつ構築を進めているところです。

1. 採用の不要な失敗ゼロを目指し、豊富な経験をもつ有識者やサポーターをつなぐ

2. 支援先の成長に全力で伴走してくれる、優秀な人材紹介会社のコンサルタントの方をつなぐ

3. CxOやVPとして将来ご活躍いただける人材を独自につなぐ

実際に自身の価値を「つなぐ」と再定義して活動してみたところ、コンサルタントの方のおかげで優秀なCxOが早期に入社されたり、有識者の方々を「つなぐ」ことで、採用のスピードが一気に加速しはじめたり、さまざまな手応えを感じています。

自身の活動と「つなぐ」というキーワード。ここから何ができるか模索しながら、今年も全力で挑戦していきたいと思っています。

最後に、

おかげさまで支援先のSaaSスタートアップ企業の方々からは引き続きたくさんの「採用」に関わる相談と支援の機会をいただいており、大変やりがいのある日々を送っています。

そんな中で、VCにおける支援での学びや取り組みの事例をほか企業さまにも共有すると喜ばれることが多いことに気づきました。

今後このnoteでは、主にVC業界と採用支援の学びなどを自分の思考の整理も兼ねて発信していきたいと思います。よかったらスキ・フォローをお願いします。

楠田司(@tsukasa_sherpa
ALL STAR SAAS FUND シニアタレントパートナー

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