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政治講座ⅴ1851「第二の毒餃子の二の舞か」

一事が万事。過去に、中国の毒餃子事件、粉ミルク事件など不祥事が多々あった。今度は「油」だ! トリチウム水を日本の6倍以上の濃度を垂れ流し「処理水」を「汚染水」と言って魚介類の輸入禁止した中国のやっていることが支離滅裂である。そして、中国共産党は過去の都合の悪いことは完全に隠蔽して事件が無かったことにしている。
今回はそのような報道記事を隠蔽せずに紹介する。

     皇紀2684年7月12日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

全中国に衝撃、石炭液化燃料を運んだタンクローリー、荷下ろし後タンク内部を洗浄せず食用大豆油積み込む

Record China によるストーリー

2台のタンクローリーが石炭液化燃料を荷下ろしした後、タンク内部を洗浄せずに食用大豆油を積み込んで運んでいたと報じられ、全中国に衝撃が走っている。© Record China

2台のタンクローリーが石炭液化燃料を荷下ろしした後、タンク内部を洗浄せずに食用大豆油を積み込んで運んでいたと報じられ、全中国に衝撃が走っている。

中国メディアの新京報によると、5月16日、石炭液化燃料を満載したナンバープレート番号「冀E**65Z」のタンクローリーが、寧夏回族自治区霊武市の寧東能源化工基地にある石炭液化プラントを出発し、2日後に1000キロ余り離れた河北省秦皇島市に到着した。同20日午後、タンクローリーは同省三河市燕郊鎮へ向かい、食用油企業、匯福糧油集団の生産プラントに入ると、荷下ろし後にタンク内部を洗浄せず、1時間後に一級大豆油31.86トンを積み込んで出発した。

同24日、天津市の食用油企業、中儲糧油脂(天津)のプラントの駐車場では、ナンバープレート番号「冀E**76W」のタンクローリーが、寧夏回族自治区から運んできた石炭液化燃料を河北省石家荘市で荷下ろしした後、タンク内部を洗浄しないまま到着し、タンク内部の洗浄状況を確認されることもなく、大豆油35トンを積み込んで走り去った。


全中国に衝撃、石炭液化燃料を運んだタンクローリー、荷下ろし後タンク内部を洗浄せず食用大豆油積み込む© Record China

多数の業界関係者によると、河北省邢台市南和区は「タンクローリーの郷」としてその名を知られている。あるタンクローリー運転手によると、ここ1~2年、タンクローリーの増加により競争が激化し、輸送価格も大幅に下がったことから、多くのタンクローリーが帰路に就く際、空では帰れないため積荷の確保に迫られ、経費削減のためタンク内部を洗浄しないことさえあるという。タンクの1回当たり洗浄費用は通常300~500元(約6600~1万1000円)だが、800~900元(約1万7600~1万9800円)に及ぶ場合もあるそうだ。残留する石炭液化燃料に汚染された食用油は、人の健康に影響を与え、中毒を引き起こす可能性もある。


全中国に衝撃、石炭液化燃料を運んだタンクローリー、荷下ろし後タンク内部を洗浄せず食用大豆油積み込む© Record China

各食用油メーカーのプラントと付き合いがあるというタンクローリー運転手は、「通常、タンク内部まで検査することはない。二つの開口部をちょっと見るだけ。だから私たちは、開口部を拭くだけでよい」と語る。

食用油の輸送に当たり、国の強制的な基準はなく、2014年6月施行の「食用植物油ばら積み運輸規範」は食用植物油のばら積み輸送に専用車両を使用することについて言及しているが、推奨基準であるため、メーカーに対する拘束力は限定的だ。(翻訳・編集/柳川)

中国製冷凍ギョーザ中毒事件


 中国製の冷凍ギョーザを食べた千葉県と兵庫県の3家族10人が中毒症状を訴え、9人が入院していたことが判明しました。ギョーザとパッケージから有機リン系殺虫剤「メタミドホス」が検出されました。警察は製造段階で毒が混入された可能性が高いとの見解を示しましたが、中国側は中国国内での犯行を否定し、外交問題に発展しました。

 同じ製造元の中国製冷凍ギョーザを食べて具合が悪くなったと訴える人は日本全国に広がり、中国製食品全体に対する不信感が募りました。毒物混入の原因をめぐる日中間の捜査協力も進みませんでした。ところが、事件から2年以上がたった2010年3月26日、中国当局が製造元の元臨時従業員を危険物質投入罪の容疑で逮捕しました。「長期間、臨時工として勤務しても正社員にしてもらえなかった」ことに対する不満が犯行の動機とされ、14年に無期懲役の判決が確定しました。

日中間で外交課題に 中国製ギョーザ中毒事件とは

2014年1月20日 11:25
▼中国製ギョーザ中毒事件 2007年12月から08年1月にかけ、中国河北省石家荘市の天洋食品が製造した冷凍ギョーザを食べた千葉、兵庫両県の3家族計10人が中毒になった事件。9人が入院、うち女児は一時意識不明の重体になった。商品から有機リン系殺虫剤メタミドホスが検出され、中国当局は10年に元臨時従業員の呂月庭被告を逮捕、起訴した。捜査には日本の警察庁も協力した。〔共同〕

毒ギョーザ事件、政府批判まで飛び出した中国

「お国の恥」「被害者が中国人だけなら解決できたのか」の声

2010.3.30(火)加藤 嘉一

 2年前日本輿論を襲い、日中間の懸案となり続けた中国製冷凍毒ギョーザ事件が動いた。日本時間の26日夜11時51分(現地時間10時51分)、国営新華社通信が、「対日輸出ギョーザ中毒事件を解決」という見出しで、同ギョーザの製造元である「天洋食品」の元臨時従業員・呂月庭容疑者(36)逮捕の一報を伝えた。

独自取材すれば待っている厳罰

 中毒症状を起こしたのは千葉県や兵庫県の2家族計10人で、吐き気や胃痛、下痢などを訴え、少なくとも5人は現在も入院している。うち5歳の少女が重体と伝えられている。

 ジェイティフーズによると、ギョーザからは殺虫剤として使われる有機リン系農薬「メタミドホス」が検出された。問題の冷凍ギョーザは中国北東部河北(Hebei)省に拠点を置く天洋食品工場(Tianyang Food Plant)で製造されたもので、同工場ではジェイティフーズが販売する23製品を製造しているという。

 千葉県警はAFPの取材に対し、刑事責任の追及を検討していると述べた。

 中国製品は昨年、海産物食品からタイヤ、玩具まで幅広い範囲で世界的なリコールの対象となった。中国は日本にとって米国に次ぐ貿易相手国で、日本は食品輸入を大きく頼っている。一方で過去数か月の間、中国とは関係のないところで、多くの日本企業による賞味期限切れ食品の表示偽装などが発覚し、大きな非難を浴びている。

 厚生労働省は輸入元に対し、該当製品の輸入を即刻禁止した。同省の食品安全担当官は、原因は残留農薬なのか、意図的あるいは偶発的に殺虫剤が添加されたのかはっきりしないとしながらも、これだけの規模の中毒を引き起こすのは通常の残留農薬では考えにくいと語った。また、ギョーザのパッケージの包装紙からも同じ化学物質が発見されたという。(c)AFP/Hiroshi Hiyama

 北京日本大使館幹部も中国外交部に呼ばれて通告を受けた。内容は新華社報道とほぼ同じだったという。事件の事情に詳しい日本政府関係者は「全く予想していなかった。驚いた」と筆者に語る。突然の出来事だった。

 新華社の報道は他のネットメディアにも転載された。タイムラグはほぼ皆無であった。

 翌日の各紙朝刊でも同報道が転載された。北京の都市報《新京報》は一面で「対日輸出毒ギョーザ事件、2年間の捜査を経て、天洋食品工場の臨時工が工場への報復を目的に毒を投じていたことが判明」と軽く掲載、中面の12ページで紹介している。

 紙媒体、ネットメディアを問わず、全ての国内メディアが新華社の記事を転載するにとどまった。社説や評論もない。あるとすれば、タイトルを多少いじる程度である。

 プロパガンダを担当する当局の幹部は、「高度に政治的、かつ敏感な問題だ。各メディアは新華社の原稿を使うように指示している。皆言われなくても分かっている。独自取材や報道をした場合にはそれなりの処罰が下される」と筆者に事情を説明してくれた。

次の日には消えていた「餃子」の文字

 容疑者逮捕のニュースに対し、日本の鳩山由紀夫首相や岡田克也外務大臣は「感謝」「評価」「期待」のコメントを返した。中国メディアは「待ってました」とのごく、「日本の首相が中国側に謝意表明」「日本側が中国政府の努力に敬意を表した!」などのタイトルで、27日、トップページの目立つ位置を飾った。

 しかし、盛り上がりも1日限りだった。「徹底抗戦」を試みる日本メディアとは異なり、報道規制を伴うこの手の案件に、中国メディアはすぐ冷めてしまう。

 案の定、28日、ネットメディアのトップページで「餃子」の2文字はほぼ見られなくなっていた。某新聞紙の幹部は、「独自報道が許されない案件を2日続けて扱うほど俺たちも落ちぶれちゃいねえよ」と溜まったストレスを露わにする。

中国製ギョーザに殺虫剤混入、10人入院、女児1人重体に

2008年1月30日 19:43 

2008年1月30日、中国製冷凍ギョーザで10人が食中毒を訴えた事件で、緊急記者会見を開き謝罪する輸入元のジェイティフーズ(JT Foods)の親会社日本たばこ産業(JT)の岩井睦雄(Mutsuo Iwai)取締役(中央)ら幹部。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO

【1月30日 AFP】(写真追加)中国から輸入されたギョーザを食べた計10人が中毒症状を訴えて入院し、うち女児1人が重体となっている。警察は30日、餃子に含まれていた殺虫剤が原因と見て、刑事責任を問う可能性も示唆した。

 NHKで生放送された輸入元「ジェイティフーズ(JT Foods)」の緊急会見は、夕食時間近の日本全国を驚かせた。同社では該当する冷凍ギョーザの回収を発表した。ジェイティフーズの親会社、日本たばこ産業(JT)の岩井睦雄(Mutsuo Iwai)取締役は「健康に影響を受けたお客さまの一日も早い回復を祈り、心よりおわびする」と謝罪した。

 中毒症状を起こしたのは千葉県や兵庫県の2家族計10人で、吐き気や胃痛、下痢などを訴え、少なくとも5人は現在も入院している。うち5歳の少女が重体と伝えられている。

 ジェイティフーズによると、ギョーザからは殺虫剤として使われる有機リン系農薬「メタミドホス」が検出された。問題の冷凍ギョーザは中国北東部河北(Hebei)省に拠点を置く天洋食品工場(Tianyang Food Plant)で製造されたもので、同工場ではジェイティフーズが販売する23製品を製造しているという。

 千葉県警はAFPの取材に対し、刑事責任の追及を検討していると述べた。

 中国製品は昨年、海産物食品からタイヤ、玩具まで幅広い範囲で世界的なリコールの対象となった。中国は日本にとって米国に次ぐ貿易相手国で、日本は食品輸入を大きく頼っている。一方で過去数か月の間、中国とは関係のないところで、多くの日本企業による賞味期限切れ食品の表示偽装などが発覚し、大きな非難を浴びている。

 厚生労働省は輸入元に対し、該当製品の輸入を即刻禁止した。同省の食品安全担当官は、原因は残留農薬なのか、意図的あるいは偶発的に殺虫剤が添加されたのかはっきりしないとしながらも、これだけの規模の中毒を引き起こすのは通常の残留農薬では考えにくいと語った。また、ギョーザのパッケージの包装紙からも同じ化学物質が発見されたという。(c)AFP/Hiroshi Hiyama

中国の食卓 安心遠く

粉ミルク問題・「有機」野菜…劣悪品なお流通 国産敬遠広がる

2010年9月5日  日経

中国で再び「食の安全」への不安が高まっている。かつて大規模な健康被害を出した粉ミルクで最近、飲んだ乳児のホルモン異常が表面化。政府は対策に躍起だが、繰り返される問題に市民の不信感は強まる一方だ。当局の目を盗んで劣悪製品の流通を続ける業者も多く、13億人が安心して食卓を囲める日までは時間がかかりそうだ。...

メラミン混入粉ミルク事件の背景――産業組織からみた分析

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PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049978

渡邉 真理子

2008年10月

1.今回こそ事件ではなく構造問題

(1)乳児が腎結石を発症

2008年9月13日、国内産の三鹿ブランドの粉ミルクを飲んでいた乳児数名が腎結石を起こしているニュースが流れ、中国国内は大騒ぎとなった。結局、2008年10月20日現在、健康被害を受けた子どもの数は5万3000人、死亡者が5人、10人は投薬での治療では不十分で手術を受ける必要があるという。北京の児童病院の前には、該当する子どもをつれた保護者が列をなして検査を受け、保健所も無料での超音波検査を実施し、該当する子どものいる中国人の家庭には電話で呼びかける念の入れようとなった。さらに中国政府は粉ミルク、液体牛乳の全ロット検査を開始した。その結果当初は自分自身の牛乳は安全だといっていた大手の蒙牛、伊利、光明といったブランドの液体牛乳からもメラミン樹脂が発見される事態となり、町から牛乳が消えてしまったのである。ただし、メラミンの含有量は、事件の発端となった三鹿社の粉ミルクでの含有量が1キロあたり2563ミリグラムに対し、他のメーカーは最大600ミリグラム前後、多くは一桁から二桁のミリグラムとダントツで高かったのである。(国家質量監督検験検疫総局の検査結果。)

粉ミルク http://www.aqsiq.gov.cn/zjxw/zjxw/zjftpxw/200809/P020080917014293203523.doc
液体牛乳 http://www.aqsiq.gov.cn/zjxw/zjxw/zjftpxw/200809/t20080919_90325.htm

粉ミルクに関しては、中国人自身の間でも、何が入っているかわからない、とずっとうわさになっており、香港などにミルクを買いに行く妊婦の様子などはニュースになっていた。またアイさんたちも日本人の母親たちにしばしば、「できる限り、日本製を使ったほうがいい(原則中国への乳製品の持込は禁止されている)」と忠告してくれていた。

今回の問題は、餃子やインゲンの問題と違って、故意に農薬が注入された事件ではなく、産業の構造から食品の品質がないがしろにされた構造問題である。その意味で、より影響の範囲が広い深刻な問題であるにもかかわらず、日本の報道は自国への流入案件などに限られている。目についたところで、中国の構造的な問題を論じているものとしては、次のようなものがあった(メラミン粉ミルク事件を呼び込んだ「免検制度」http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20081009/173328/)。

この文章のタイトルは、免検制度の非を問うている。しかし、確かに免検制度は消費者よりも生産者のための制度のようで、これが問題を起こしている部分はある。やはり本質ではないだろう。たとえば、家電製品であっても、免検制度があるが、人を殺すような不備な製品が危害を加えた話はほとんど社会問題になっていない。この制度自身というよりも、産業の構造のほうが問題だろう。ネットでこの事件がどのように報道されたかという意味では、興味深いが、問題がおきた背景そのもの理由としては、すこしずれているだろう。

(2)なぜメラミンが混入されたのか?

そもそもメラミンとはなんだろうか。通常はメラミン樹脂(メラミンとホルムアルデヒドを主体とした合成樹脂)というかたちで、軽量で鮮やかに着色された食器、カトラリーとして使われているものである。

メラミン樹脂の画像の例

http://www.tuk2.com/zakka/item/picnic/sp&fk/picsp2_300.jpg

食品安全委員会やその他の情報によると、毒性そのものは低い。(食品安全委員会 http://www.fsc.go.jp/sonota/meramine.pdf)しかしそうはいっても、そもそも樹脂として利用される物質を、乳児体内に摂取した場合、どのようなことがおこるのか実験データはないため、はっきりしたことはいえない、というのが、本当のところだろう。

では、なぜこの「樹脂」がミルクに混入されたのか、といえば、この樹脂は含まれる窒素の量が多いからだという。乳製品メーカーは、原料乳を購入する際、脂肪分、たんぱく質、固形物の比率に基準を設け、その水準をクリアしたものだけを購入していた。これは、牛乳の文字通りの水増しなどを防ぐためだったという。この3つの基準のうち、たんぱく質については、牛乳に含まれる窒素の量を計測し、たんぱく質比率を推定していたという。メラミン樹脂は、牛乳の窒素量を水増しするにはうってつけの物質だったという。ちなみに、2007年にアメリカで問題になったペットフードの問題で、混入されていたのはこのメラミン樹脂だった。

9月に三鹿製品の事件が発覚してすぐ、三鹿にメラミン混入ミルクを販売していていた搾乳ステーションの経営者の兄弟が逮捕された。彼らは2007年末に三鹿社への販売検査を受けた際、たんぱく比率が低いために買い取りを拒否され、巨額の損失を受けたことから、メラミン樹脂の混入を始めたという。ちなみに、その後の検査で多くの大手の液体牛乳からもメラミン樹脂が発見されたことからもわかるように、このメラミン混入はこの逮捕された兄弟だけが間違いを犯したという事件ではなく、産業全体に見られる「裏のルール」、構造的な問題だったのだろう。

2.食品の品質管理と産業組織のかたち

(1)中国の牛乳市場

現在、中国の牛乳市場では、大手の蒙牛、伊利、光明、三元、そして問題を起こした三鹿などといった主要都市、全国をターゲットとする大手企業が、スーパーなどで販売される大衆価格の牛乳・粉ミルクを販売している。生の牛乳で言えば、各企業とも1リットル5元(75円)から15元(225円)の価格帯で複数のブランドを販売している。しかし、正直、牛乳を飲みなれた外国人には飲みにくい味である。またこうした牛乳を使うとヨーグルトが作れない。これは、輸入した粉末乳を還元した製法で作っているためである。

国内の大手の生産する乳製品のうち、鮮乳はこの還元法によるものか、殺菌を徹底しておこなうロングライフ法が主であるという。どちらも、そもそもの牛乳の風味はなくなってしまう。しかし、乳製品は中国の食文化の中で新しい分野であるため、消費者の意識がまだ低いこともあるのか、奇妙な商品がたくさん並んでいる。子どもが頭のよくなるカルシウム強化メロン味牛乳やら、高齢者の骨粗しょう症対応の高カルシウム牛乳などなど、いろいろな加工調整をした牛乳もどきがスーパーには並んでいる。またヨーグルトも、自然に牛乳を菌で固めたタイプはほぼ見つからない。

こうした製品は正直牛乳に飲みなれた外人にはとても飲めたものではない。このため、高所得の外国人向けに、有機・無農薬・安全をうたった規模の小さい、かつ価格の高い牛乳を生産する農場も生まれている。北京の場合には、Green Yard, Wonder Milk という欧米系の牛乳メーカーがあり、味を調節していない自然なヨーグルト、サワークリームなども、こうした小さなブランドが「本物の乳製品」を供給するようになっていた。ただし、これらのブランドの価格帯は、500ミリリットル14元(210円)前後と日本の平均的な牛乳の2倍の値段である。しかし、慣れ親しんだ本当の牛乳の味が忘れられず、安全という意味でも背に腹は変えられず、欧米人だけでなく、我が家を初めとした多くの日本人もこの高価なミルクを飲んでいた。最近、この市場に朝日ビール系の朝日緑源が参入してきている。

(2)大量生産初期の品質軽視と輸入原料乳の高騰

中国の乳製品市場は大量生産時代の初期にあり、メーカーは全国ブランドが格好よくかつ安い、というイメージのため、多額の広告費を使って販売をし、大量に売りさばくビジネスモデルを取っている。大量製品・低価格という価格競争が進み、より品質を向上させ、価格を上げるというようなポジションからはどんどんかけ離れていっている。

価格競争が広がる中国国内の乳製品市場のもとで、加工企業側はいかに安い牛乳を確保するか、に血道を上げることになる。こうした市場の状況について、興味深い分析があった。カナダで畜産学の博士の学位をとり、農業コンサルティング会社を経営する喬富龍という人物は、今回のメラミンミルク騒動の背景を分析し、温家宝総理と孫政才農業部長(大臣)に当てて万元書(建白書)を出した。そこで、なぜ2008年の8月から9月にかけて、メラミンミルク騒動が勃発したのかを、この原料乳の価格と調達先の動向から分析している。(http://bhnews.hexun.com/2008-10-16/109983123.html

この喬氏の分析によると、話は2000年に始まった乳牛の価格上昇、乳牛バブルに始まるという。このとき、将来の牛乳需要の拡大を見込んで養牛を始める農民が殺到したため、1頭4000元だった乳牛価格は高騰し、2004年には1頭1.2万元から1.8万元になった。しかし、この時期多くの乳製品企業は価格の安い輸入原乳粉を使っていたため、国内産の原料乳の価格は1キロ1.5元から2.1元という安さだったという。このため、乳牛バブルも2006年には崩壊し、1頭5000元ぐらいに落ち込んでいた。このとき、多くの農民が投資した乳牛を屠殺し、一気に国内の牛乳生産能力が縮小したのである。

しかし、国内の原料乳への需要は拡大し続けたため、2007年には輸入原料乳粉の価格が高騰し始める。この時期、日本でも、この中国の需要拡大のあおりを受けて、オーストラリアからの乳製品の輸入価格が上昇し、チーズが薄くなったりし、話題になっていた。中国での輸入原料乳粉の価格は2004年に1トン1870米ドルであったものが、2007年には3500米ドルまで上がってしまった。このとき、中国国産の原料乳の価格は1キロ3.5元まで上がってきていたが、輸入原料乳にくらべると割安感が出てきたという。この時期から、国内原料乳を乳製品メーカーが奪い合う状況が生まれたのである。そして、2007年9月から12月の間に、国内原料乳の価格は50%も暴騰する事態となった。調達コストの上昇に、乳製品メーカーは、購入する牛乳の品質基準を実質的に切り下げていったという。そうしなければ、原料を調達できずに、生産停止、倒産となるのが見えていたからであるという。価格競争が厳しくなり、原料の調達コストでの競争となり、事実上品質が犠牲になるという悪循環が働いたようである。

ではなぜ三鹿が事件の発火点になったか。2007年の国内原料乳の奪い合いの中で、中小の粉ミルク生産業者は、海外の価格高騰を見て、自社製品の輸出を試みたが、品質の問題からか引き合いがなかった。このため、国内での転売戦略に切り替えたという。このとき、国内の中小粉ミルク生産業者からもっとも買い付けたのが三鹿だったという。三鹿に次ぐ高さのメラミン樹脂含有量がでた上海熊猫はこの粉ミルクが自社製品ではなく、業者から買い付けたものだったことを認めている。価格競争の中で、自社生産のコストを担えなくなった準大手が、こうした業者からの安い製品の購入に切り替えたが、安いのには理由があった、ということのようである。

(3)伝統的な「加工企業+仲買人+農民方式」に抜け落ちる品質管理

価格を下げるために品質や安全を犠牲にした商品が市場取引の中に紛れ込んでしまったのには、中国の農産物にまだ広く見られる多段階の取引をおこなう産業組織では品質管理が難しいことがある。

たとえば、三鹿に原料乳を納めていた農民は6万人にのぼるという。が、この農民は直接三鹿と取引していたわけではない。養牛農民は自ら搾乳することはなく、搾乳機械を投資して搾乳ステーションを経営し、農民から牛乳を集め、乳製品メーカーに卸す仲買人を通して取引している。こうした取引形態では、まず農民が乳牛にどのような飼料を食べさせているのか、抗生物質を与えているのか、といったことを仲買人は、まず記録報告させることはない。そして、今回の事件のように搾乳ステーションで添加物を加えられてしまっても、乳製品企業はそれをチェックできていなかったのである。かりに、あるロットに不審な添加物があることがわかったとしても、牛乳の特性上どの農民の牛から来た牛乳なのか、搾乳ステーションが問題なのか、事実上判別不可能である。この乳製品企業+搾乳ステーション(仲買人)+農民方式がそもそも品質管理の難しい取引形態であるのに加え、三鹿の場合は、さらに業者から粉ミルクそのものを購入していた。

中国の大手の乳製品メーカーは、メディアなどでもしばしば自社工場の安全管理の水準が日本と同じくらいだ、などと主張している。たしかに彼らの生産工場はきれいかもしれないが、そこで加工されるそもそもの原料に関してトレーサビリティがまったく不可能な商品を市場に売ることには無頓着だったといわれても仕方がないだろう。

「加工企業+仲買人+農民方式」が、品質管理上の問題を起こしているのは牛乳だけではない。豚肉の場合には、屠殺企業+仲買人+農民というかたちでの取引が全体の6割を占めている(Wang and Watanabe ed., Pork Production in China, IDE ASEDP report No.77)。加工企業の品質管理の意識も先進的とはいえず、品質管理として対応している項目のなかで、死んだ豚肉の混入を避けるようにしていると答えた企業が4割と最も高く、その次は赤身増量剤の混入を避けるようにしていると答えた企業が3割、抗生物質、重金属、雑菌混入なども意識している企業は2割前後となっていた(Wang and Watanabe ed., Chapter 5)。赤身増量剤の混入を避ける意識が比較的高いのは、2006年に赤身増量剤による中毒で広東省で死者が出ているためであろう。

膨大な数の農民が農産物を少量づつ生産し、それを買い集めるのには、企業が自分で買い集めるよりも、仲買人を通したほうが価格や効率の面で有利なのが実態であろう。この仲買人方式でも、品質の管理監督を求める加工企業もあると聞くが、実際には企業自身が品質管理を実施しなければ意味がなく、そのコストを負担する企業はほとんどない。牛乳や豚肉の場合は、消費者の意識がそこまでまだ鋭敏ではないためだろう。

日本の消費者向けに生産し、過剰ともいえる品質管理の要求にこたえてきている山東省や福建省の野菜の加工企業は、加工企業+仲買人+農民方式を放棄し、より品質管理が可能な取引形態に変化している。当初は、相対的に企業側のコストの低い契約生産方式をとり、買取条件のなかに施肥、農薬散布の条件など安全管理の項目を多く盛り込み、実際に品質管理員を農民の畑に送る方式をとってきた。しかし、何度か発生した農薬残留問題を経て、施肥、農薬散布の状況をネット画像などで買い手の商社に直接見せるまでの品質監督方式をとるようになると、契約生産方式でもうまく機能せず、自社農場方式が主流になっているという。こうして、農薬などの残留に関しては、ほぼ完全にコントロールできているようになっていると思われる。しかし、こうした自社農場方式は、農作業をおこなうインセンティブの面、品質のモニタリングにかけるコストの高さから、非常にコストの高い経営方式である。食品のコストを引き上げているのは間違いないと思われる。つまりこれは、現在の日本と中国の収入格差があって初めて成立している取引形態である。中国国内向けの野菜生産は、やはり加工企業もしくは市場+仲買人+農民方式が基本であり、輸出向けほど品質管理のコストはかけられていない。

牛乳に関する告発万元書を書いた喬博士も、この乳製品企業+搾乳ステーション(仲買人)+農民方式を打破し、牛乳生産専業組合を農民が組織し、搾乳を行い、加工企業に販売する方式を唱えて、全国に普及しようとしてきたという。農民組合によって干し粒のような農民が組織化され、仲買人の果たしている機能を代替することで、品質管理、安全性の確保は可能になる、というのが、喬博士の信念のようである。

3.今後の展開

(1)安全な食品は高いという格差か政府による強力な規制か?

今回のメラミン混入事件は中国の消費者に大きなショックを与えている。日本の1960年代の森永砒素ミルク事件と同じようなもので、今後は消費者は大量生産方式の食品への疑念を強く持つようになるのであろう。しかし、国内向けの食品に対しても、輸出野菜のように、消費者側の要求にあわせ管理を強め企業を内部化し、徹底的に管理する場合は、どうしてもコストと価格の上昇を伴う。中国の消費者の可処分所得がどこまであがるかによって、どこまで品質管理がおこなわれるのかが決まるというのが現実だろう。

安全な食品というものは高いコストがかかり、放って置けば金持ちだけが安全なものを食べ、貧しい人は危ないものしか口にできなくなる可能性がある。これは、食品という商品の市場取引でおこる典型的な市場の失敗である。この問題を中国の政府はどうかんがえるのか。食品安全に関しては、強力な監視と規制を行い、事実上食品のコストを上げるもしくは政府が負担するかたちで、安全な食品を全国民に供給する体制を組むのであろうか。政府の意識はそうしたい、というところであろうが、経済的にそれが可能なのか、はわからない。

ただ、前出の喬博士も、「正直なところ、ここ10年来で今が牛乳の品質が最も高いはずだ。牛乳を飲むならいまだ」といっている。危機を経て、企業側の意識が高まっていること、そして農民の技術も向上しているという自信からだという。

(2)農業労働力の枯渇が品質管理の追加コストを縮める?

一方で、中国の農業生産は現在大きな過渡期にある。農業労働力が枯渇し始めており、無数の農民と加工企業が取引する現在の体制が変化する可能性があるのだ。こうなってくると、農業従事者の交渉力は高くなり、無数の小規模農民を相手に企業が買い叩くことが難しくなる。大規模化などで農業の生産をあげなければならなくなっている。そして、品質や安全性の確保という面よりも、まず量を確保するために加工企業は、農民との間での契約生産か、会社内農場方式といった囲いこみをいずれにしてもせざるを得なくなる。もしくは、喬博士の主張する乳牛専業組合などのような農民による組合の組織というかたちでの取引の緊密化が進む可能性もある。こうしたより緊密な取引形態のもとでは、逆に品質管理、安全性の確保のためのモニタリングの追加的なコストが相対的に低くなってくるだろう。農産物も高付加価値化が進む可能性はある。そうして、小農生産から大規模生産への転換と同時に、安全性の管理もおこなわれる農産物の生産が進むかもしれない。

(3)こうした環境の変化にだれがついていけるのか

が、こうした大きな変化に対応し、安全かつ価格の安い農産物が生産されるという望ましい方向に対応する農民、企業が主流を占めるようになるには、それなりの時間がかかるだろう。それよりも、農産物の大規模生産化の過程で、また品質がないがしろにされる状況が起こる可能性もある。もしくは非常に農産物のコストが上昇するかもしれない。とまれ、良い方向に向かうのか、悪い方向に陥るのか、予断を許さないが、中国の農産物の市場は今後大きく変化する方向に動き始めたのは間違いないだろう。

参考文献・参考資料

全中国に衝撃、石炭液化燃料を運んだタンクローリー、荷下ろし後タンク内部を洗浄せず食用大豆油積み込む (msn.com)

日本が震えた衝撃の毒物事件の真実|ザ!世界仰天ニュース|日本テレビ (ntv.co.jp)

中国製冷凍ギョーザ中毒事件 (yomiuri.co.jp)

日中間で外交課題に 中国製ギョーザ中毒事件とは - 日本経済新聞 (nikkei.com)

中国製ギョーザに殺虫剤混入、10人入院、女児1人重体に 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

中国の食卓 安心遠く 粉ミルク問題・「有機」野菜…劣悪品なお流通 国産敬遠広がる - 日本経済新聞 (nikkei.com)

メラミン混入粉ミルク事件の背景――産業組織からみた分析(渡邉 真理子) - アジア経済研究所 (ide.go.jp)

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