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政治講座ⅴ1734「米中新貿易戦争と中国包囲網」

 報道記事を読むときにはどこの報道機関かを確認してそのプロパガンダに惑わされないようにして読む必要がある。特に、新華社の報道内容は中国共産党を代弁して宣伝する報道機関であることに留意が必要である。彼らの主張を確認する意味で吾輩はその報道内容もそのまま載せているだけである。皆様が正しい判断の持ち主であることを期待している。
今回は世界の貿易・経済戦争が武力衝突にならない事を祈っているが、弱みや隙を見せたら攻撃してくるのは覇権国の常である。中国で中国共産党が易姓革命で政変が起これば第三次世界大戦は回避できるのだが。どのような展開になるのやら、今回はそのような、報道記事を紹介する。

     皇紀2684年4月15日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

米中新貿易戦争勃発で習近平秘策の「新質生産力」が壊滅へ

石 平 によるストーリー

最後の話し合いとしてのイエレン訪中

4月5日から8日までの4日間、イエレン・米財務長官は中国を訪問した。訪問中、中国の財政部長(財務大臣)、中国人民銀行総裁、そして経済政策・金融政策担当の何立峰副総理、李強首相と相次いで会談を行った。

北京のイエレン米財務長官 by Gettyimages© 現代ビジネス

一連の会談において、イエレン氏はまず中国側に対して、

1)中国企業によるロシア軍事産業への支援に強い懸念を示し、「支援する場合は重大な結果を招く」と警告した。

2)中国産EV車を念頭に、政府補助を受けた中国の過剰生産が米国と世界の産業と雇用に「破滅的な打撃」に対して強い懸念を示し、中国側に「政策転換による改善」を求めた。

この二つの問題で業を煮やしているバイデン政権は、決定的な対立を避けるための「最後の話し合い」としてイエレン氏を中国に遣わした訳である。

米国からの1の要求に対し、中国側は一連の会談でどう答えたか報道はないので不明であるが、4月10日、中国外務省の毛寧報道官は定例の記者会見で、中国とロシアには正常な経済貿易協力を行う権利がある。このような協力は妨害や制限を受けるべきではなく、中国は非難や圧力を受け入れない」と語った。

それは明らかに、イエレン氏の訪中を強く意識したものであるが、中国政府は結局、この問題に関してイエレン財務長官が伝えたバイデン政権の懸念と要求を一蹴したとみられる。

ロシアを使った対米示威行為

さらに驚いたことに、イエレン財務長官の北京訪問中の4月8日、ロシアのラプロフ外相が王毅外相の招待で北京訪問を開始した。9日、習近平主席は自らロシア外相との会談に臨んだ。

ラブロフ露外務大臣 by Gettyimages© 現代ビジネス

このような際どい外交行動の意味するところは要するに、習近平政権は米国の警告と要求を完全にはねつけてロシア支援を引き続き行っていくことの断固とした意思を表明したのであって、米国への示威行為でもある。

そしてそれに対し、イエレン財務長官は8日に北京で行った締めくくりの記者会見では、「ロシアの国防産業基盤に軍事品やデュアルユース品を流すような重大取引を促進する銀行は、米国の制裁リスクにさらされることになる」と述べ、中国の関連銀行に対する金融制裁の発動を示唆

こうしてみると、米国側が強い関心を持つ「対ロシア支援」の問題をめぐり、米中関交渉は完全に決裂し対立が決定的なものとなり、金融制裁を含む米国側による制裁発動の可能性は大である。

決裂の過剰生産問題

米国側の2の懸念と要求、すなわち中国の過剰生産に対する懸念改善要求に対し、中国側はやはりゼロ回答拒否の態度である。中国財政省の廖岷次官は8日の記者会見で「過剰生産能力の解消は市場次第だ」と述べ、「市場任せ」の口実に中国政府としては「改善」に向けて何よりやらないとの姿勢を明確に表明した。

人民日報系の環球時報は9日、米国側の要求について、「要求を実現するため、中国に圧力をかけるといった基本路線に変更はない」とする専門家の見方を掲載して米国批判を展開した。

これに対してイエレン財務長官は、8日に行った前述の訪中締めくくりの記者会見では、政府の補助金を受けた安価な中国製品の流入で新たな産業壊滅的な打撃を受けることを米国は認めないと明言。同じ日に彼女はまた、米CNBCテレビからのインタビューで、政府補助で安価な中国製品の流入から米国の産業と雇用を守るために関税の引き上げは排除しないとの考えを示した

結局、「過剰生産」に関する米中交渉も完全決裂したわけであるが、11月の米大統領選を迎えるなかで、バイデン政権としては当然、米国の産業と雇用を直撃するこの問題をそのまま放置することはできない関税の引き上げを含めた措置の発動はもはや避けられない。トランプ政権以来の新たな貿易戦争の再開が必至のことである。

習近平はEVで妥協する意思は最初からない

その一方、米国側が指摘し懸念するEV車を中心とした中国の過剰生産問題については、習近平政権にはそれを「改善」する意思最初から全くないのが最大のポイントである。特にEV車に関しては、習政権は以前から、欧米を凌駕する国際的競争力を持つ新産業としてそれを育てる国策を策定し、挙国体制でそれを推し進めてきている。

中国・小米のEV by Gettyimages© 現代ビジネス

そして今年に入ってから、習近平主席は自ら「新質生産力」という新造語を持ち出して、それを今後の中国の産業と経済発展の「方向性」として提唱し始めた。要は、不動産市場の崩壊に伴って不動産開発業やそれと関連する鉄鋼・セメントなどの伝統産業が揃って沈没している中で、それらにとって変わって中国経済を支える新支柱を手に入れるのが狙いである。

それ以来、「新質生産力」は習主席の「経済政策・戦略」の一枚看板となっているのが、その「新質生産力」の重要なる一翼を担うのはまさにEV車である。

習政権がEV車を新産業として育てていく秘策は要するに政府補助だ。EV車製造の企業には大量の補助金を与えるという安易な産業政策である。しかしそのことの結果、多くの中国国内企業はまさに補助金目当てに一斉にEV車産業に参入した。2020年までの5年間、「新エネルギー車」産業に参入してきた関連企業数は248%増21年は128%増であった、22年になると、部品メーカーも含めた国内の関連企業は既に56.8万社に達している。

しかしそれでは、中国EV産業の生産能力国内需要を大幅に上回ることとなり、深刻な「生産能力過剰」の問題が生じてきている。
2023年、中国国内の「新エネルギー車」販売台数は949.5万台であったのに対し、現在の全国の生産能力は年産2000万台に上っていると推定されている。2021年9月、中国の肖亜慶工業情報相は「中国のEVメーカー数は過剰」と語り、再編を促す考えを示したが、EV業界の抱える「生産過剰」の問題はこの発言からも示さていれる。

補助金付きの中国EVの洪水

政府補助による「新エネルギー車」産業支援を行なった結果、産業全体は深刻な生産能力過剰の問題を抱えることとなっているが、今度は中国は、過剰生産を米国市場を含めた海外市場に捌くことで活路を見出すのである。

しかし欧米企業は、政府補助を大量に受けている中国メーカーの価格競争に勝てないから、EV車を含めた欧米の新産業が中国の破壊的な輸出から大打撃を受けて破滅しつつ雇用も失う。結局、習主席のいう「新質生産力」は、発明や創造、技術革新による「新質」では全くなく、単なる政府補助と海外市場頼りの代物であることはよく分かるが、アメリカとしてはこんなものによって自国の産業が壊されるのを許せるわけにはいかない。

実はアメリカだけでなく、EUも安価な中国EV車の流入に苛立ち始め、バイデン政権と歩調を合わせて制限する方向性である。米国とEUは共同で中国のEV車を封じ込めることとなれば、海外市場頼りの中国「新エネルギー車」産業は逆に破滅的な打撃を受けるのは必至のこと、そして習近平肝煎の「新質生産力戦略」も出足から挫折しかねないし。

しかしこれでは、中国と習主席の反米意識と米中間の対立はより一層高まろう。まさにアメリカとの対立を強く意識して習主席は前述のように、イエレン訪中の直後にロシア外相と会談して「中露戦略関係の強化」を高らかに宣言したが、それでは中国と米国・EUとの間の溝がますます深くなる一方である。

全くすれ違いの首脳会談

一方、米中対立の深まりは何も貿易問題に限定されたものではない。イエレン訪中に先立って、米中首脳による久しぶりの電話会談も行われたが、この首脳会談はまた、より広範囲の問題を巡る米中対立の深刻さを示すこととなった。

バイデン米国大統領と中国の習近平国家主席との電話会談が行われたのは4月2日のことであるが、会談当日の晩、ホワイトハウスによる「会談紀要」が発表された。その中国語の全文訳が米国の駐中国大使館の公式サイトでも掲載されている。中国の方では4月3日、人民日報は一面トップで会談に関す記事を掲載したが、それは当然、中国政府の公式発表に準ずるものである。

まず、ホワイトハウスの公式発表によると、バイデン大統領は会談では習主席に対し、次のようなことを強調しあるいは懸念を示したという。

1)台湾海峡の安定と平和を守ることの重要性の強調。

2)南シナ海の法の支配と航海の自由を守ることの重要性の強調。

3)中国がロシアの国防工業に対する支援に懸念。

4)中国の不公平な貿易政策と非市場経済的なやり方に懸念。

5)米国は引き続き、その先進技術が米国の国家安全を損なうことに使われないよう必要な措置をとる、との意思表明。

以上は、米国側公式発表による、バイデン大統領が強い関心や懸念を持って習主席に注文したことのポイントである。要するにバイデン政権の中国に対する核心的な要求の数々であるが、それに対して習主席がどう答えたのかについてはホワイトハウスの公式発表に一切ない。ということは要するに、バイデン大統領は習主席から、米国側の諸要求・注文に対する積極的な回答を一切得られていない、と考えられるのである。

一方、人民日報の公式発表では、バイデン大統領が語った上述の五つのポイントについては一切触れられていない。中国側も結局、米国大統領からの諸要求を完全に黙殺した格好である。

こうしてみると、米国側が大きな関心と懸念を持って提示した前述の五つの問題にいて、首脳会談での米中間の歩み寄りや合意は全くなく、対立の解消に向けての前進がないことはよく分かる。

習近平の要求にはゼロ回答

一方の習主席は何を語ったのか。人民日報の公式発表では、習主席は会談で、バイデン大統領に対して次のようなことを訴えたという。

1)米中関係は、「和をもって貴と為す」、「安定が肝要」、「信用を根本とする」という三つの原則に基づくべきである。

2)台湾問題は米中関係おける「超えてはならない第一のレッドライン」、バイデン大統領が「台湾独立を支持しない」との約束を実際の行動を持って履行することを期待する。

3)米国がどうしても中国の高先端技術の発展を阻害するのであれば、中国は座視することはできない。

以上の三つのうち、1は習主席が好きな建前上の一般論であって無視しても良いが、2,3こそは、習主席がバイデン大統領に突きつけた注文あるいは要求の二大ポイントである。要するに習主席はバイデン大統領に向かって、「“台湾独立支持しない”との約束を行動で果たせ!」、「半導体などの先端技術領域では中国に対する禁輸などの“阻害措置”をやめろ!」と強く迫ったわけであるが、そこからは、習主席のバイデン政権に対する苛立ちと不信感が強く感じられる

しかし、習主席から突きつけられたこの「二大要求」を関しては、今度はホワイトハウスの公式発表が全く取り上げることはなく完全に黙殺しているのである。あたかも、習主席がそんな話を全くしていないかのような扱い方である。

こうしてみると、両首脳の久しぶりの会談は結局、相手の核心的な要求や苛立ちを完全に無視したまま、自分の方の要求を一方的に突きつけただけの「平行線会談」となっていることは明らかである。

結局、この週の会談においては台湾問題、南シナ海問題など、中国にとって「核心的利益」につながる諸問題について双方の歩み寄りは全くないし、米国が重大な関心を持つ諸問題については両国間の対立が解消できないままである。言ってみれば、米中両国間の対立はまさに「調和不可能」なものであることは、むしろこの首脳会談によって浮き彫りにされている。

不定期の首脳会談で米中関係の緊張が多少緩和されることはあるが、「米中対立」の構図はやはり変わることはない。それは、今後においてもアジア太平洋地域の国際政治の基軸の一つであり続けよう。

初の日米比首脳会談 安全保障、経済協力拡大の共同声明

毎日新聞 によるストーリー

首脳会談に臨む(右から)岸田文雄首相、バイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領=米ワシントンで11日、ロイター© 毎日新聞 提供

 米国を訪問中の岸田文雄首相は11日(日本時間12日)、首都ワシントンのホワイトハウスでバイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領と会談し、安全保障や経済の協力拡大を盛り込んだ共同ビジョン声明をとりまとめた。3カ国は防衛・海上保安機関の合同訓練や演習を実施し、中国を念頭に連携を拡大する。

 会談の冒頭で、首相は「インド太平洋地域の平和と繁栄のために日米比の協力をさらに強化したい」と表明。バイデン氏は中国を念頭に「米国の日本とフィリピンに対する防衛義務は強固だ」と述べた。マルコス氏は「会談は私たちが望む未来とそれをどう達成するのかを明確にする機会だ」と応じた。

 日米比の首脳会談は初めてで、米国が同盟国の日本、フィリピン両国への「揺るぎない関与」を改めて確認した。南シナ海での「中国の危険かつ攻撃的な行動」に対しては、深刻な懸念も表明した。共同ビジョン声明によると、3カ国はインド太平洋で1年以内に海上保安機関による海上合同訓練を実施する。また、他のパートナー国も加えた海軍と自衛隊との共同訓練や演習を通じて防衛協力を推進し、2025年には日本周辺で海上訓練を行う。

 経済分野では、3カ国によるサイバー・デジタル対話の新設を確認したほか、フィリピンの民生用原子力の能力構築を支援することも盛り込んだ。

 首相はワシントンでの一連の外交日程を終え、政府専用機で南部ノースカロライナ州へ移動した。12日(日本時間12、13日)にトヨタ自動車が建設中の電気自動車(EV)向け電池工場や、ホンダの小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」を手がける米子会社の工場などを視察し、日本の対米投資をアピールする。【ローリー(米南部ノースカロライナ州)小田中大】

中国にらみ「同盟網」強化=日米、比支援で結束―負担共有、問われる覚悟・3カ国首脳会談

11日、ワシントンで開かれた日米比首脳会談(ロイター時事)© 時事通信 提供

 【ワシントン時事】日米とフィリピンの3カ国は初の首脳会談を通じ、経済・軍事両面で協力を深めることで一致した。南シナ海への海洋進出の野望を隠さない中国に対し、日米が結束してフィリピンを支える姿勢を強調。バイデン米政権は「同盟網」強化を図り、「唯一の競争相手」と位置付ける中国に対抗する。

 「新たなパートナーシップの時代の始まりに当たり、二人に集まってもらったことを光栄に思う」。11日、ホワイトハウスのイーストルームで開かれた会談で、バイデン大統領は岸田文雄首相とマルコス比大統領を歓迎し、3カ国の連携強化を呼び掛けた。

 3首脳の念頭には、中比が領有権を争う南シナ海の問題がある。この海域のアユンギン(中国名・仁愛)礁周辺では、中国海警局の艦船がたびたび比船舶を妨害し、「危険で攻撃的な行動」(3カ国首脳)を繰り返す。各国の間では軍事衝突への懸念が深まる。

 マルコス氏の頼みは同盟国・米国だ。バイデン氏は会談で「南シナ海でのフィリピンの航空機、船舶、軍に対するいかなる攻撃にも相互防衛条約を発動させる」と表明。岸田氏と共にフィリピンとの防衛協力や経済連携を強化する姿勢を打ち出した。

 バイデン政権にとって、東・南シナ海を抱える日本とフィリピンは、中国と対峙(たいじ)する最前線の同盟国。米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ政策研究所」のザック・クーパー上級研究員は「中国がいかに圧力をかけようが、米国は日本といった同盟国とフィリピンを支えていくというメッセージだ」と会談の意義を強調する。

 だが、米国が「格子状」に張り巡らせ、同盟国間の連携強化を図る背景には、超大国としての影響力が相対的に落ち込む中同盟国と負担の共有を進めるという現実が浮かび上がる。

 3カ国首脳会談へと至る過程では、自衛隊と米比海軍の合同演習拡大に前のめりな比政府高官の発言に対し、日本側が否定的な見解を示すこともあった。抑止力強化を急ぐフィリピンとは対照的に、自国周辺海域での任務に追われる日本防衛当局は慎重に取り組みを進めたい考えとみられ、微妙な温度差がうかがえる。

 岸田氏は11日、米議会での演説で「日本は今や米国のグローバルなパートナーとなった」と強調した。米国の負担をどこまで共有し、各国への関与を拡大することができるのか。日本は同盟国としての覚悟が問われている。 

「中国と密約」前政権批判 比大統領、南シナ海問題で

共同通信 によるストーリー

12日、米ワシントンで同行記者団と記者会見するフィリピンのマルコス大統領(共同)© 共同通信

 【ワシントン共同】日米との3カ国首脳会談で防衛協力の合意を取り付けたフィリピンのマルコス大統領が12日、共同通信を含む同行記者団とワシントンで会見した。中国寄りだったドゥテルテ前大統領について、南シナ海問題で中国と密約を交わしていたことが明るみに出たとして非難した。

 ドゥテルテ氏は11日に記者会見し、マルコス氏の米国への接近は「とても危険な傾向だ」と批判。中国と戦争はできず、話し合うことが大統領の仕事だと訴えた。中国との攻防が続く南シナ海のフィリピン軍拠点の老朽艦について、補修資材を持ち込まず現状を維持するとの密約の存在を示唆した。

 マルコス氏は、密約によって「フィリピンは不利な立場に置かれており、状況を明確にしてもらう必要がある」と強調。文書に記録せず意図的に隠していたと批判し「他国との合意は国民に知らせるべきだ」と述べた。

 在フィリピン中国大使館は12日、日米比の3カ国首脳会談について、冷戦思考によって「排他的なグループを急いでつくり上げた」と反発した。

劇化する半導体覇権 中国の成長阻止したい米国 経済的威圧が頼みの綱? 冷静さ失いつつあるバイデン政権

まいどなニュース の意見

半導体の覇権をめぐる米中の競争は ※画像はイメージです(Tomas Ragina/stock.adobe.com)

ホワイトハウスを訪問した岸田総理はバイデン大統領と日米首脳会談を行い、半導体や人工知能、次世代太陽電池といった先端技術や戦略物資のサプライチェーンの強靱性を高めるため、経済安全保障分野での連携強化を図ることで一致した。この背景には中国が念頭にあり、中国が半導体や人工知能などの分野で影響力を高め、各国が中国への依存を深めれば、政治的緊張が高まった際に中国が輸出規制や関税引き上げといった手法で圧力を掛けてくる恐れがあり、俗に言う中国による経済的威圧に対処するためだ。

近年、中国は関係が冷え込んだ国々に対して経済的威圧を度々仕掛けている。新型コロナの真相究明や人権問題で追求しているオーストラリアに対し、中国はオーストラリア産のワインや牛肉の輸入を突然ストップし、同様に台湾に対しては台湾産のパイナップルや柑橘類、高級魚ハタなどの輸入を停止するなど、経済的攻撃を仕掛けることで相手に政治的プレッシャーを掛けてきた。日本に対しては、昨年8月、日本産水産物の輸入を全面的に停止する措置を講じるなど、諸外国の間では経済的威圧=中国という固定観念が確立している。

しかし、経済的威圧別に中国だけに言えることではない。バイデン政権も最近は経済的威圧を強化している。バイデン政権は2022年10月、中国が先端半導体を軍事転用するのを防止するため、先端半導体分野で中国への輸出規制を強化したが、単独ではそれを防止できないと判断し、昨年初めに半導体製造装置で先端を走る日本とオランダに対して同規制に加わるよう要請し、両国は半導体製造装置の分野で中国への輸出規制を開始した。

だが、バイデン政権は日本やオランダの半導体関連企業が依然として中国で販売した製品を修理し、予備部品を販売していることで対中規制が上手くいっていないと強い不満を抱いており、最近はオランダに対し、オランダの半導体製造装置大手ASMLに対して修理しないなど中国向けのサービスを停止するよう要請した。また、バイデン政権は韓国やドイツにも規制に参加するよう呼び掛けており、中国の半導体産業の成長を何が何でも食い止めるような姿勢を示している。

各国には各国なりの中国との関係がある。日本にとっては依然として中国が最大の貿易相手国であり、米国による輸出規制要請をそのまま飲めるだけではない。実際、日本が開始した半導体製造装置関連の輸出規制は米国が求めるほど強い規制ではなく、日本の経済合理性とのバランスを配慮した規制である。しかし、内向き化する米国がそこを配慮することはないだろう。安全保障に直結する分野での対中規制は十分に理解できるが、その範囲を超えたかのような規制に協力する必要があるのだろうか。同盟国に同調圧力を掛け、中国の先端半導体の獲得阻止だけでなく、半導体産業発展そのものを阻止しようとする米国の行動も経済的威圧と言えるだろう。焦る米国は冷静さを失いつつある。

◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。

中国外交部、米日比3カ国首脳会談のマイナスの動きを批判

新華社 によるストーリー

中国外交部、米日比3カ国首脳会談のマイナスの動きを批判© 新華社

記者会見に臨む中国外交部の毛寧報道官。(資料写真、北京=新華社配信)

 【新華社北京4月13日】中国外交部の毛寧(もう・ねい)報道官は12日の記者会見で米日比首脳会談に関する質問に答え、関係国によるブロック政治に反対を表明した。

 記者:米日比首脳は11日に3カ国首脳会談を行い、共同声明を発表した。米国は首脳会談と米日比協力について「中国を標的にしたものではない」としていたが、声明は南中国海と東中国海の問題で中国を非難し、台湾問題で妄言を流している。  

 報道官:中国は関係国がブロック政治をもてあそぶことに断固反対する。矛盾をあおり、激化させ、他国の戦略的安全保障と利益を損なういかなるやり方にも断固反対する。地域で閉鎖的、排他的な小グループをつくることに断固反対する。無論、日本とフィリピンは他国と通常の関係を発展させることができるが、陣営対抗を地域に持ち込み、他国の利益を損なうことを代償に3カ国の協力を行うべきではない。米日比首脳会談と3カ国の協力が中国を標的にしているかどうかは、3カ国が発表した共同声明を見れば明白だ。これが中国に対する恣意的な中傷、攻撃でなくて何なのか。  

 台湾問題は完全に中国の内政で、台湾問題の解決は中国自身のことであり、他人の口出しは許されない。現在、台湾海峡の平和にとって最大の脅威は「台湾独立」分裂行動とそれに対する外部勢力による容認や支援だ。関係国が本当に台湾海峡の平和と安定、世界の安全と繁栄を考えるなら、「一つの中国」原則を厳守し、「台湾独立」分離活動に旗幟鮮明に反対し、中国の国家統一を支持することこそ、台湾海峡の平和と安定を守る正しい道だ。いかなる者も中国人民の国家主権と領土を守る断固たる決意、確固たる意志、強大な能力を見くびってはならない。  

 中国は釣魚島と付属島しょ、南中国海諸島に対し、争う余地のない主権を有している。中国の東中国海、南中国海での活動は正当かつ合法で、非難されるいわれはない。中国は関係国による東中国海、南中国海問題での中国に対する理不尽な非難と悪意ある中傷を決して受け入れない。南中国海仲裁裁判の不法な裁決と、裁決に基づくいかなる一方的行動も受け入れない。現在、東中国海、南中国海情勢は全体的に安定しているが、一部の国は域外国の支援を受けて増長し、海上で権利侵害・挑発行為を続け、情勢をエスカレートさせている。域外の一部の国が火をつけて対立をあおっていることに憤慨を覚える。

 改めて強調したい。中国は自らの領土主権と海洋権益を揺るぎなく守り、直接当事国と対話・協議を通じて2国間の海洋問題を適切に処理することを堅持するとともに、域外国が介入してもめ事を起こし、事態をエスカレートさせることに断固反対する。


参考文献・参考資料

米中新貿易戦争勃発で習近平秘策の「新質生産力」が壊滅へ (msn.com)

初の日米比首脳会談 安全保障、経済協力拡大の共同声明 (msn.com)

中国にらみ「同盟網」強化=日米、比支援で結束―負担共有、問われる覚悟・3カ国首脳会談 (msn.com)

「中国と密約」前政権批判 比大統領、南シナ海問題で (msn.com)

劇化する半導体覇権 中国の成長阻止したい米国 経済的威圧が頼みの綱? 冷静さ失いつつあるバイデン政権 (msn.com)

中国外交部、米日比3カ国首脳会談のマイナスの動きを批判 (msn.com)

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