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政治(経済)講座ⅴ1415「持続可能な経済の視点:GDPだけを見る幻想」

 経済の論評を見て、「木を見て森を見ず」的に感じる。
GDPがあらわす経済が国民に及ぼす「幸福」とはなんであろうか。
中国の経済崩壊の危機を見て、世界GDP2位と言われながら、国民の所得格差が大きく、決して豊かな経済とは言えないのである。
そして、不動産開発に偏った過剰投資と過剰なマンション(鬼城マンション群:ゴーストタウン)はGDPには寄与してであろうが、決して豊かな経済環境を構築できたとは思えない。
何故なら、借金(債務)による投資で、費用対効果の望めない物ばかりである。
将来の建築物の老朽化とメンテナンス面などの長期計画まであるとは到底思えないのである。
それは、GDP至上主義を経済目標にした結果である。
そして、中国から海外投資や企業が逃避し出している。
これで、中国のGDPは不動産開発崩壊と海外企業の流出でGDPの低下は明白である。
翻って日本のGDPに関して言うと、産業の空洞化で海外進出した企業が国内回帰する兆しが見える。
GDPで経済と豊かさを算出するための手法としては、「木を見て森を見ない」に等しいのである。経常収支やGNIなどの観点も必要であると痛感するのである。第1次所得収支が貿易収支の黒字を上回り、投資収益が日本の経常黒字を支える構図が強まっていることに注目すべきである。

     皇紀2683年10月11日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

はじめに

GNIとGDPを混同して解説する輩もいるので定義から解説する。
国民総所得 (GNI)
は「当該国の居住者主体によって受け取られた所得の総額」で、国内総生産に国外からの所得(雇用者報酬、財産所得)の純受取を加算したものである。

GDP (国内総生産)とは、一定期間に国内で生産された付加価値の合計である。
何かを生産するときに掛かった費用を売り上げに引いたものが付加価値
と言う。
つまり、売り上げ ー 費用 = 付加価値ということです。GDP (国内総生産)は固定資本減耗を含んでいない。

固定資本減耗とは、生産によって機械などの性能が落ちて価値が下がることです。
固定資本減耗は不正確なデータなので、引かずにGDPは計算されています。GDPは市場価格が原則なので、自然環境の悪化などが考慮されていません。
生産する上で燃料を使用して多量に排気ガスを排出してもGDPでは測ることができません。
他には、企業の生産量を上げたいという思いから、労働者の労働時間が増えてしまったり、人間関係の悪化などは考慮されない。
これらがGDPの問題点とされ、数十年以上も前から世界中が問題視しています。

順位 国名     単位:百万US$
1  アメリカ   21,433,225
2  中国     14,731,806
3  日本      5,079,916
4  ドイツ     3,861,550
5  インド     2,868,930
6  イギリス    2,830,764
7  フランス    2,715,818
8  イタリア    2,715,818
9  ブラジル    1,839,077
10 カナダ     1,736,426
出典:https://www.imf.org/external/index.htm
日本は世界3位のGDPを誇ります。(2019年統計データ

GDPというのは、国全体の生産量になることから、人口が多ければ自然の数字は大きくなる。
国の豊かさを見るには、人口で割った一人当たりのGDPを見る。人口が多ければ多いほどGDPが高くなることから、GDPが高いからと国全体が豊かであるとは限らない

GDPは、世界中の国々で経済の規模を測るときに最も使われる。

GDPは多くの要素から構成されていますが、構成要素を大きく分類した上で、式で表すと以下のようになる。

GDP=民間の消費+民間の投資+政府の支出(消費と投資)+(輸出−輸入)

GDPがどれぐらい成長したか、という表面的な数字の変化率だけではなく、GDPの内訳をそれぞれ確認する必要がある。

中国が14億人の人口に対して、30億人分のマンションを建築したと言われている。これを建築した投資は30-14=16の算数でも分かるほどの過剰投資である。GDPとして世界2位に引き上げた効果があったかもしれないが、その資金は、売買代金で賄われることなく、借金(負債)が残ることになる。 建築物は老朽化してゆく。インフラ設備も老朽化していく。そのメンテナンスの資金はどこから捻出していくのか。使用者(利用者)負担か、増税か、という問題が、中国にのしかかってくるのである。その前に、国家破綻することになるのであろう。GDP世界2位にまで引き上げた投資資金(負債)が返す当てがないように見える。それは、一帯一路で開発途上国への投資でも分かる。返済財源の目途の無い融資をして「債務の罠」に堕ちる国をつくる融資から、長期投資計画ができない能力のない中国がやっていることであるから当たり前かもしれない。当然の帰結であろう。GDPを引き上げること、すなわち、経済発展であると錯覚した結果であろう。これらが、表題の「持続可能な経済の視点:GDPだけを見る幻想」の趣旨である。

日本のGDPは世界13位から27位に転落 「先進国のグループから転落しかねない」

野口悠紀雄 によるストーリー •3 時間

日本のGDPは世界13位から27位に転落 「先進国のグループから転落しかねない」© AERA dot. 提供

 日本の国際的地位が低下している。2012年には日本はG7の中で上位グループだったが、いまや最下位に転落した。経済学者の野口悠紀雄氏は、「いまの状態が続けば、日本は、先進国の地位を失う可能性が強い」と指摘する。『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。

*  *  *

■一人当たりGDPで韓国や台湾とほぼ同水準

 2022年は、日本が貧しくなったことが痛感される年になった。急激に円安が進んだため、様々な指標で日本の国際的地位が下がったからだ。

 10月に公表されたIMF(国際通貨基金)のデータによると、2022年には、台湾の一人当たりGDPは4万4821ドル(世界第24位)となり、日本の4万2347ドル(27位)を超えた。ただし、2023年に公表されたIMFのデータでは、台湾は、日本をわずかに下回った。

 10年前の2012年をみると、日本の一人当たりGDPは、韓国の1.9倍、台湾の2.3倍だった。

 2013年に異次元金融緩和が導入されて円安が進み、日本の地位は顕著に低下した。それが2019年まで続いたのだが、2020、21年に、韓国、台湾が日本に急迫したのだ。

 IMFの予測によると、日本、韓国、台湾の相対的な関係は、今後も暫くはいまのままで続く。しかし、韓国の成長率が日本より大幅に高いので、近い将来に韓国も日本を抜く可能性が高い。

 これまでも、シンガポールと香港の一人当たりGDPは、日本よりかなり高かった(2022年で、シンガポールは世界第5位、9万9935ドル、香港は第16位、6万2015ドル)。ただし、人口は数百万人だ(シンガポールは569万人、香港は748万人)。つまり、都市国家であって、日本とは簡単に比較できない面がある。

 それに対して、台湾は人口が日本より少ないとはいえ、数千万人のオーダーだ(2357万人)。この規模の人口のアジアの国・地域の一人当たりGDPが日本とほぼ同じになるのは、初めてのことだ。

 韓国、台湾の成長率は日本よりかなり高いので、韓国、台湾が日本を抜くだけでなく、将来は差が拡大していく可能性が強い。

■賃金で日本が韓国に抜かれたかどうかは、議論の余地がある

「賃金では、数年前から、日本は韓国に抜かれていた」との指摘があるかもしれない。確かに、OECDのデータによると、年間平均賃金では、すでに2015年に、日本は韓国に抜かれている。そして、2021年には、日本が3万9711ドルに対して、韓国が4万2747ドルになっている。

 ただし、このデータを見るには注意が必要だ。

 ここでは、市場為替レートでドルに換算しているのではなく、購買力平価で換算している。これは、世界的な一物一価が成立する為替レートだ。2021年には、1ドル=100.412円と、1ドル=847.457ウォンだ。他方、市場レートは1ドル=109.754円と、1ドル=1143.958ウォンだ。

 したがって、市場レートで見れば、日本は上記の値を0.915倍して3万6335ドルであり、韓国は0.741倍して3万1675ドルだ。だから、まだ日本の方が高い。

■国際的地位の低下は、低い成長率と円安による

 日本の一人当たりGDPが台湾や韓国に追いつかれたのは、2つの理由による。

 第1は、円安だ。2013年から14年、そして2022年に日本の相対的地位が急速に低下したのは、円安によるものだ。

 第2の原因は、自国通貨建てでみた一人当たりGDPで、日本の成長率が低かったことだ。

 2010年から22年までの期間の成長率を見ると、次の通りであり、大きな差がある。日本1.11倍。韓国1.60倍。台湾1.71倍。

 日本の成長率が低くなる大きな原因は、人口高齢化が進んで労働人口の増加率がマイナスになっていることだ。ただし、ここで見ているのは一人当たり計数なので、これによる影響はかなり緩和されている。

 もう一つ注意すべきは、韓国においても、出生率低下によって、労働力が減少していることだ。それにもかかわらず、韓国の成長率が高いのは、技術進歩率が高く、産業構造が高度化しているからだ。

 なお、以上で見た状況は、日本と韓国、台湾との間だけのことではない。日本と世界の多くの先進国の国との間で同様のことが言える。いまの状態が続けば、日本は、先進国の地位を失う可能性が強い。

■アベノミクスで、日本は世界13位から27位に転落

 IMFは、世界の40の国・地域を「先進国」としている。

 アベノミクス・異次元金融緩和が始まる前の2012年には、日本は先進国の中で第13位だった。いまは第27位だから、この10年間に大きく順位を落としたことになる。いま日本は、先進国のグループから転落しかねない状態に陥っている。

 アベノミクス・異次元金融緩和が何をもたらしたかを、これほどはっきりと示しているものはない。

 2012年で日本より上位にあったのは、ヨーロッパの小国あるいは、北欧諸国が中心だった。

 G7諸国中で見ると、カナダ、アメリカ、日本の順だった。つまり、日本はG7の中で、上位グループにいた。一人当たりGDPで、アメリカと日本は、ほとんど差がなかった(アメリカ5万1736ドルに対して、日本4万9175ドル)。

 しかし、この10年間に、日本は、一人当たりGDPで英独仏に抜かれた。つい最近まで、イタリアが日本より下位にあった。しかし、2023年には、イタリアも日本を抜いた。つまり、いまや日本は、G7の最下位だ。

 そして、アメリカの一人当たりGDP(第8位8万9546ドル)は、日本の2.1倍になった。

 これほど大きな変化が、この10年の間に起きたのだ。

●野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)

1940年、東京生まれ。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。近著に『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社、岡倉天心賞)、『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』(日経プレミアシリーズ)、『2040年の日本』(幻冬舎新書)、『超「超」勉強法』(プレジデント社)、『日銀の責任』(PHP新書)ほか多数。

X(旧ツイッター) https://twitter.com/yukionoguchi10note https://note.com/yukionoguchi/

野口悠紀雄Online https://www.noguchi.co.jp/

経常収支とは 投資収益が黒字支える

2022年4月9日 日経

▼経常収支 海外との貿易や投資といった経済取引で生じた収支を示す経済指標。自動車などモノの輸出から輸入を差し引いた貿易収支、旅行や特許使用料などのサービス収支、海外からの利子や配当を示す第1次所得収支、政府開発援助(ODA)などの第2次所得収支からなる。

経常収支に企業の買収や株式投資など金融資産の動きを示す「金融収支」を加えたものが国際収支となる。財務省が毎月統計を公表している。日本は長らく経常黒字が続いているが、かつて黒字をけん引した貿易収支は2000年代から黒字幅が縮小し、11年から15年までは赤字に転落した。

05年からは第1次所得収支が貿易収支の黒字を上回り、投資収益が日本の経常黒字を支える構図が強まっている。貿易収支は輸入額の増加が赤字に直結する。原油や天然ガスなどのエネルギー資源の大半を海外に依存する日本は、資源価格の高騰が経常収支の圧迫につながりやすい。

参考文献・参考資料

日本のGDPは世界13位から27位に転落 「先進国のグループから転落しかねない」 (msn.com)

GDP(国内総生産)をわかりやすく解説!【初心者でもわかる経済学】 | kazuglobal

国力 - Wikipedia

経常収支とは 投資収益が黒字支える - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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