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政治講座ⅴ1819「投資詐欺にご用心」

以前掲載したブログもご参照ください。
騙されない為の心得  副題 18歳で成人になる若者へ|tsukasa_tamura (note.com)

「おれは詐欺に騙されない」と思っても「オレオレ詐欺」に騙されている場合が多い。なお、合法的な詐欺に関しては弁護士などに相談をお勧めする。
今回は中国で起きている詐欺と日本で起きている合法的な詐欺における報道記事を紹介する。

     皇紀2684年6月17日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

中国で政府や国有企業の幹部になりすました投資詐欺への取り締まり強化へ AI活用で巧妙化する手口に警戒感

NEWSポストセブン によるストーリー

中国でも投資詐欺が横行© NEWSポストセブン 提供

 日本では有名人を騙るSNS投資詐欺が急増しているが、中国では政府省庁や国有企業の幹部などになりすまして投資家を騙す詐欺事件が問題視されている。中国政府は、警察機関である中国公安省に対して、このような犯罪の検挙を最優先課題とするよう通達を出した。

 同時に、中国財務省や農業農村省など20以上の中央省庁や国有企業も、このような投資詐欺は「共産党と政府のイメージを著しく損ない、社会・経済秩序を混乱させる」ことから、「撲滅キャンペーン」を行うと発表した。国家ぐるみで詐欺犯罪の取り締まりに乗り出している。

 新華社通信などによると、中国東北部の山東省徳州市で起きた事件では、ある詐欺グループが「政府の後ろ盾がある」と称して286人の被害者から約2900万元(約63億円)をだまし取った。

 中国国営放送テレビ(CCTV)によると、2023年5月に起きた別の事件では、国家の経済政策を立案する国家発展改革委員会(NDRC)のワーキンググループの幹部になりすました詐欺師が、地方政府関係者に最高100億元(2170億円)の補助金を得られるとの話をもちかけ、「(その省の)農村開発を進めているが、そのためには当座の資金として10億元(21億7000万円)が必要、しかし、すぐにNDRC本体から100億元の助金金が出るので心配ない。10億元もすぐに返すことができる」などと、10億元をだまし取る事件が発生した。

 この詐欺事件により、同委はWeChatの公式アカウントで、「そのようなワーキンググループは存在せず、そのような政府補助金もない」などとの声明を出さざるを得なくなった。

 また、中国公安省は「詐欺師らはAI(人工知能)も使い、ますます洗練された技術を使う金融犯罪を行っている」としたうえで、詐欺師たちは頻繁にメディアに登場する知名度の高い政府高官そっくりの動画を作成するなど、詐欺の手口が巧妙化していると指摘している。

「悲劇的な経験」を売りにした中国の女性インフルエンサーに懲役11か月の判決 偽の身の上話で同情集め詐欺的商法で荒稼ぎ

「悲劇的な経験」を売りにしたインフルエンサーに天罰

「両親が亡くなり、家で弟と妹の世話をするために小学校を中退。毎日サツマイモを食べていました」などと虚偽の身の上話をでっちあげ、貧しい身なりでネットに登場し、5年以上に渡って視聴者から多額の金を得ていた女が3月18日、裁判で懲役11か月と罰金8万元(約160万円)の判決を言い渡された。中国紙「紅星報」が報じた。

 彼女は中国四川省梁山市に住む梁山孟陽と名乗り、2018年からインターネット配信を始めた。粗末な日干し煉瓦造りの家に住み、浅黒い肌と痩せた体で、ボロボロになった汚い服を着て、山に登って薪(たきぎ)を拾ったり、鍬をもって畑仕事をするなどの動画を配信。涙ながらに、「このような生活はもう嫌だ。誰か助けて下さい」などと語っていた。

 このような「悲劇的な経験」を売りにした動画が評判を呼び、その後5年ほどで500本以上の動画を作成し、一時は386万人ものフォロワーを獲得、一躍ネットのインフルエンサーに駆け上がった。その一方で「生活の足しにするため」という理由で、農産物などを販売するようになり、これまでに3000万元(約6億円)もの売り上げがあったという。

 ところが、彼女に同情したフォロワーが激励しようと現地に行ってみると、貧しいはずの彼女は高級マンションに住み、ブランドの洋服や時計を身に着け、高級レストランで食事をするなど裕福な生活をしていることが分かった。

 実は、動画が評判を呼んだことで、彼女は動画作成のための会社を設立して、カメラマンや脚本家などのスタッフを雇い、貧困や悲劇的な人生経験の動画を撮影。安く仕入れた農産物を現地の特産品と偽って高額で売るなどの商売をしていたのだ。

 こうした事実が明らかになると、フォロワーらは彼女らの詐欺的行為を訴え、地元の公安当局が昨年9月に彼女を含め仲間も検挙した。そして今年3月18日の裁判で有罪判決が下ったという。「悲劇的な経験」を売りにしたインフルエンサーに天罰

「両親が亡くなり、家で弟と妹の世話をするために小学校を中退。毎日サツマイモを食べていました」などと虚偽の身の上話をでっちあげ、貧しい身なりでネットに登場し、5年以上に渡って視聴者から多額の金を得ていた女が3月18日、裁判で懲役11か月と罰金8万元(約160万円)の判決を言い渡された。中国紙「紅星報」が報じた。

 彼女は中国四川省梁山市に住む梁山孟陽と名乗り、2018年からインターネット配信を始めた。粗末な日干し煉瓦造りの家に住み、浅黒い肌と痩せた体で、ボロボロになった汚い服を着て、山に登って薪(たきぎ)を拾ったり、鍬をもって畑仕事をするなどの動画を配信。涙ながらに、「このような生活はもう嫌だ。誰か助けて下さい」などと語っていた。

 このような「悲劇的な経験」を売りにした動画が評判を呼び、その後5年ほどで500本以上の動画を作成し、一時は386万人ものフォロワーを獲得、一躍ネットのインフルエンサーに駆け上がった。その一方で「生活の足しにするため」という理由で、農産物などを販売するようになり、これまでに3000万元(約6億円)もの売り上げがあったという。

 ところが、彼女に同情したフォロワーが激励しようと現地に行ってみると、貧しいはずの彼女は高級マンションに住み、ブランドの洋服や時計を身に着け、高級レストランで食事をするなど裕福な生活をしていることが分かった。

 実は、動画が評判を呼んだことで、彼女は動画作成のための会社を設立して、カメラマンや脚本家などのスタッフを雇い、貧困や悲劇的な人生経験の動画を撮影。安く仕入れた農産物を現地の特産品と偽って高額で売るなどの商売をしていたのだ。

 こうした事実が明らかになると、フォロワーらは彼女らの詐欺的行為を訴え、地元の公安当局が昨年9月に彼女を含め仲間も検挙した。そして今年3月18日の裁判で有罪判決が下ったという。

中国の愛人契約詐欺集団 19歳女性を手玉にとった方法

弱みにつけこまれると大変(写真:アフロ)

 日本でも「パパ活」なる言葉が一般化しつつあるが、やはりリスクとは背中合わせと考えざるをえない。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 習近平指導部が進める反腐敗キャンペーンにより、多くの腐敗官僚が摘発されてきた中国だが、党中央が「生活腐敗」と呼ぶ、男女の乱れはまだまだ盛んであるようだ。それを連想させる社会の動きがメディアに盛んに報じられるようになったのは、2017年末からのことである。

「愛人契約詐欺」と呼ばれる犯罪の蔓延である。いったい何が「愛人契約詐欺」なのだろうか。

 貧しい暮らしをしている女性がまだまだ多い中国では、ネット上に愛人希望の女性の呼びかけが頻繁にアップされているのだが、先の集団はまさしくそうした女性たちをターゲットにするという。

『都市快報』が2017年末に報じたケースの被害者は、浙江省寧波に住むまだ19歳の女性だった。

 最初に女性が詐欺グループの男と接点を持ったのは「毎月30万元(510万円)で愛人」というミニブログの一文からだった。

 間もなく女性は男と接触。会って話しているうちに男性から「とりあえず52万元を支払うから、愛人になってほしい」と誘われ、実際に彼女のスマホにも入金情報が送られてくる。

 ただ、ここからが問題で、送金されてきた情報はそもそもネットを使った仕掛けであり、その上、「金額が高額なことから引き出すのには手数料が必要」という通知が入るのである。

 請求されたのは7000元(約11万9000円)であった。

 通常であれば簡単に払うようなものではないが、「30万元」のためであればという感覚に陥る。その後、男は「52万元」がまだ引き出されていないのに、新たに「66万元を振り込んだ」、今度は「88万元を」というように矢継ぎ早に振り込みをしてきたという。

 女性はそのたびに手数料を振り込み続けたのだが、その結末は想像の通りである。

 結局、彼女は相手から一銭も得られないまま、3万元(約51万円)ものカネを騙し取られ、さらに悪いことに親友にもこの「おいしい話」を進めたため、彼女たちにも被害を広げてしまったという。

中国人民軍将軍騙る債券詐欺多発 3か月で270人逮捕

中国ならではの詐欺が展開された

 今年に入って中国各地で「中国人民解放軍幹部」と称して、「軍が発行する高利回りの債券」を売りつける詐欺事件が多発しており、今年7月から10月までの3カ月間で、270人の偽軍人が逮捕されていたことが分かった。

 中国では「銃口から政権は生まれる」と言われるように、人民解放軍幹部は中国共産党政権の重要な構成基盤であるのに加えて、320万の将兵を擁する世界最大の軍隊であり、その絶大なる信用を利用しての詐欺事件が後を絶たない。

 中国国営の中国中央テレビ局によると、北京では今年に入って男女の詐欺師2人がそれぞれ「将軍」と、その秘書の「大佐」と名乗って、「軍関係者でなけれれば買うことができない特別な債券(軍債)がある」と言葉巧みに「あなただけに特別に売ってもよい」と持ちかける手口で、数百人が騙される大規模詐欺事件が発生。被害総額は少なくとも1500万元(約2億5000万円)に達したという。

 中央軍事委員会規律検査委員会所属部隊と警察が協力して捜査した結果、今年7月にこの偽軍幹部2人を逮捕。2人が宿泊していたホテルの部屋から偽の名刺や携帯電話5台が見つかり、自宅には偽の軍服が段ボール箱10箱に詰め込まれていたという。

 中国では軍幹部を騙る詐欺事件が多発しており、軍事委規律検査委と警察は今年7月から10月まで集中捜査したところ、270人の詐欺犯を逮捕。彼らが持っていた偽の軍服や軍用銃、身分を表す肩章などの各種の関連品は合計で1万5000点以上にも上ったという。

「人民解放軍幹部」を名乗っての詐欺事件で被害総額が最も多かったのが2014年8月の北京市内での事件だ。中国内陸部の陝西省出身の農民3人がそれぞれ「中将」、「大佐」とあろうことか「国防大臣」になりすまし、総額3400万元(約6億5000万円)をだまし取ったもの。

高齢者に群がる業者「合法的詐欺」の手口

2016/06/03(金) 12:33 配信
オリジナル
高齢者を「食い物」にしている人たちがいる──。それは「オレオレ詐欺」のような明らかな犯罪の話だけではない。いまや有名企業の中にも増えている。
問題は合法と違法の間、違法すれすれの合法的手法が幅をきかせつつあることだ。では、どんな人たちが、どのように被害に遭い、また逆に、どんな「やつら」がそれを仕掛けているのか。高齢者が「餌食」となる被害の現場を見つつ、仕掛ける「やつら」の側にも分け入ってみた。(ジャーナリスト・岩崎大輔/Yahoo!ニュース編集部)

羽毛布団15セットが、一人暮らしの4畳半に積まれた

訪れてみると、その一室は段ボール箱で占められていた。
埼玉県川口市にある木造モルタルのアパート。4畳半二間、風呂もない間取り。とても「お金持ち」には見えなかった。
だが、奥の4畳半に積み上がった段ボール箱の中身は、新品の高級羽毛布団15セット。一組80万円以上、総額で1000万円を超える。その部屋で一人暮らしをする76歳の婦人のもとに訪問販売業者が押しかけ、個別式クレジット(カード式とは異なり、自動車ローンやリフォームローンのように商品購入の都度申込書を書くクレジット決済方式)を利用して購入させていたのだ。
近隣の福祉関係者の相談で駆けつけた日本弁護士連合会・消費者問題対策委員会委員の池本誠司弁護士が尋ねてみたが、老婦人は販売業者のことを悪くは言わなかった。
「"あの人"が来ると断れなくてねぇ」
老婦人は長年使い古したペラペラの布団から半身を起こし、そう応じた。購入した羽毛布団は、自分自身では使っていなかった。
こんなに布団は必要ないですよね──。池本弁護士は業者への怒りを抑えつつ質問したが、老婦人は「断れなくてねぇ」と同じ言葉を繰り返した。

クーリングオフ(違約金のない契約の解除)ができる8日間はとうに過ぎていた。訪問販売業者が次々と押しかけ、高価な商品を販売する手口を「次々販売」と呼ぶ。老婦人はこの次々販売の「餌食」となっていた。池本弁護士が振り返る。
「この事案当時の特定商取引法では一度契約を交わすと、悪質な手口を被害者が詳しく説明・再現できないと取り消すことができなかった。でも、おばあさんに尋ねても、『どうだったかねぇ』と首を傾げるばかり。次々に契約を交わすと、被害者は再現が困難になり、悪質業者に有利な仕組みでした」
池本弁護士はこの案件を「解約」「返品交渉」にした。その結果、利息を含む800万円のクレジット残金は支払い免除となったが、販売業者とは連絡が取れなくなり、すでに引き落とされた400万円近くのお金は戻ってこなかった。老婦人は老後の生活にあてるはずだった預貯金をすべて失っていた。
「歳をとればとるほど、誘ってくる人に対しての断る力──拒絶能力が低下します。そのため、悪質、強引な勧誘にさらされると、契約をしてしまう。働き盛りの人なら『俺は大丈夫』と思うでしょうが、歳をとると、そうではなくなるのです。認知症やMCIと呼ばれる軽度認知障害の人たちだけの話ではありません。高齢になれば、判断能力や記憶力が低下していなくても、熱心に説得されると不満を感じつつも受け入れてしまう傾向が強くなります」(池本弁護士)

7000万円の貯金は、連日50万円ずつ引き出された

「おばあさんの様子がおかしいのですが」
マンションの住民から地元の民生委員に連絡があった。
都内城南地区、一等地に位置する2LDKのマンション。「成年後見センター・リーガルサポート」の副理事長で司法書士の川口純一氏が民生委員とともに玄関を開けると、タバコの吸殻やコンビニ弁当の空容器、ゴミ、脱ぎ捨てられた衣服などが無造作に散らばっていた。
そして、小銭の詰まった空き缶。それを見て、川口氏は状況を把握した。過去にも見てきた現象、認知症だった。
「認知症になると、簡単な計算もできなくなります。すると、買い物はお札を渡すだけになり、お釣りはそのまま空き缶に入れてしまう。その典型的な現象でした」
70代後半の老婦人は、大手メディアに長く勤務した、キャリアウーマンのさきがけだった。だが、親族もなく、都心のマンションにひとりで暮らし、いつしか認知があやしくなっていた。
川口氏は行政の依頼を受け、老婦人の成年後見人(高齢者、知的障害者など判断能力が十分でない人の財産や権利を保護するために、法律面を中心に支援する人)を引き受けることになった。そうなって川口氏が驚いたのは、老婦人の資産の減り方だった。
2年前には彼女の預貯金は7000万円近くあったが、いま手にした通帳では、わずか30万円ほどに減っていた。部屋のあちこちに散らばっていた商品購入の痕跡は、多種多様なものだった。先物取引、高配当や高利率をうたった投資商品のパンフレット、健康グッズ、浄水器、ウィッグ(かつら)、内装のリフォーム......。共通していたのは、いずれの商品も高額であること。そして、老婦人の日常生活にとって必要性という点では疑問符のつく商品ばかりだった。

預貯金の通帳を点検してみると、銀行の口座間の取引はなされておらず、毎回ATMで引き出せる最大額の50万円が、支払金額として記録されていた。時期によっては、連日50万円の引き出しが行われていた。おそらくは業者が寄り添って銀行まで通っていたと推測された。
川口氏は返金を求めようと、すべての業者に電話をかけた。ところが、パンフレットに記載されている連絡先は、ただの1件も電話がつながらなかった。
「業者の連絡先はもともと虚偽だったか、あるいは短期間で閉鎖されていました。もちろん、おばあさんに尋ねても、何もわかっていない。彼らの巧妙かつ大胆な手口に途方にくれました」
問題がわかりにくかったのは、老婦人は日常の生活も会話も一見不自由なくできたことだった。金融商品の契約書には自筆での署名もあった。だが、会話の内容を長く覚えることはできず、その内容を理解していないことも多々あった。
「だから、周囲からすると、ふつうに見えた。それがおばあさんの異変に気づくのを遅らせることになっていました」

川口氏は一度だけ訪問販売の営業と出くわしたことがあった。短髪で背広姿の30代の男だったという。川口氏の姿をみると、何かを察したのか、脱兎のごとく逃げ出した。
「今の男性、何者かな?」と川口氏が老婦人に尋ねると、
「あの人はいい人よ。やさしくていい人なのよ」
そう微笑んでいた。

詐欺罪には問えない「詐欺的」な事例が続々

2016年5月24日に発表された「消費者白書」は、「高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル」について警鐘を鳴らしている。
〈高齢者に関する消費生活相談において、詐欺的な手口に関する相談が特に最近増加傾向にあります〉
「詐欺的な手口」とは、あきらかに事業者側が「だます」という意思をもっていると消費者や消費生活センター側に判断されたものをいう。消費生活センターにおける高齢者に関する相談のうち、「詐欺的手口」に関するものの割合は、2010年度には6.2%だったものが年々増え、2015年度には16.0%(2014年度は16.8%)と3倍近くに増加した。
高齢者が増加する中、こうした消費者トラブルが日常的になってきた。法的な面では、2000年の消費者契約法や特定商取引法(旧・訪問販売法)の改正などの対応がとられてきたが、法の目をかいくぐる業者は後を絶たず、問題は増え続けてきた。

2016年の通常国会では罰金刑の上限が上がった改正案が上程され、5月25日に成立した。泣き寝入りしがちな被害者のもとに被害金が戻るような指示権限が規定されている。
「被害に遭った後の救済策だけでなく、入り口で防止できる制度が不可欠です」。池本弁護士も指摘するように、悪質な訪問販売は入り口で追い返すのが最善策だろう。だが、多くのケースを聞いていると、認知症であるか否かにかかわらず、高齢者がそうした業者をたやすく受け入れていることがしばしばある。"やさしくていい人"として歓迎さえしているケースも少なくない。
だとすれば、そんな"やさしくていい人"とはどんな人なのか。取材を進めると、たしかに「やさしくていい人」と映る業者に出くわした。

まったくないです、やましさなんて

東京・池袋のカフェ。その男性は「いまはやっていませんよ」と爽やかな笑みを浮かべ、厳しい質問にも表情を変えることはなかった。取材の中盤、やましさについて尋ねたときも、「まったくないです」と満面の笑顔で返した。
「完全にゲーム感覚、です。『あとちょっとで100万円いくな。明日は東北訛りでいってみようかな』と相手に取り入ることばかり考えていましたから。こうすればもっと稼げるな、ああすればいいかなって。むしろ、知恵と努力とストレスの日々なんですよ」
かつて訪問販売の会社に勤めた福岡桂一氏(仮名・39歳)は振り返る。
福岡氏は若い頃は舞台役者として活動。だが、芽が出ることなく、28歳で断念、就職した。それが多様な商品を扱う訪問販売の会社だった。芝居経験がよかったのか、営業では、すぐに頭角を現した。給料は歩合制だったが、2年目で年収は1500万円を超えたという。

32歳の若さで50人の部下を持ち、最年少の東京支社長となった。
「その会社では年2回、神奈川県にある保養所に全営業社員が集められ、成績順に座らされました。そこで社長から、『福岡君がトップ。今月の給与が歩合を入れて160万円、ボーナスが440万円です。明日振り込まれます』と皆の前で表彰される。さらに会社からハワイ旅行や金貨もプレゼントされた。結果を出せばこんないい思いができるとわかると、ますます頑張りましたね」
商材として扱っていたのは、当初は「洗剤類」だった。そのうち高齢女性向けの「補整下着」や「化粧品」「ウィッグ」へと広がっていった。福岡氏はこれらを「コンプレックス商材」と呼ぶ。本人が劣等感を感じるところにつけ込む商材で、扱うのは相場の10倍以上の金額、1点70〜100万円といった額だった。なぜそうした商材を扱うのかと言えば、「だまされたと気がついても、恥ずかしいから誰にも相談できない」よさがあるからだという。
だが、そうした商材をどのようにして販売や契約まで結びつけるのか。尋ねると、福岡氏は「コツがあるんですよ」と解説をはじめた。

お茶が出る仲になってからが本番

入り口は完全な飛び込み営業で、高齢者がいそうな家を見定め、声をかける。当然、反応はよくないが、それにめげずに、ていねいに会話をつなぐ。嫌がられても「サンプルだけでも」「たしかに疑いますよね」などと言葉を重ねる。
ただし、その初日に「結果」を求めることはしない。自分の名前や顔を覚えてもらうにとどめ、さっさと帰る。そして、数日後にまた訪ねていき、そこからが腕の見せどころとなる。
「背中を見せて、働くんです」
どういうことかと言えば、営業の話は最低限に控え、黙って高齢者宅の役に立つことをするのだという。
もし自家用車洗剤なら、車を洗い、ワックスをかけ、さらに駐車場や門も綺麗にする。食器洗剤の場合はフライパンを磨き、ガス器具や換気扇を磨き、キッチン回りをピカピカに仕上げる。また、溜まった新聞を捨てに行ったり、掃除をしてあげたりすることもある。要は、高齢者が日頃やっていないことや困っていることをしてあげる。そして、笑顔だけ見せて帰っていく。
「これは自分が勝手にやったこと。だから、恩着せがましく『綺麗にしておきましたからね』『捨ててきました』とも言い添えない。作業には一切触れずに挨拶だけして帰る」

ふだんその高齢者がしたかったことを満たしてあげる。そんな関係を築き、お茶が出るような仲になれば、そこからが本番だ。
「たとえば『この間熊本で地震ありましたよね』と時事ネタから入り、おばあさんの家の話につないでいく。『ところで、この家、大丈夫なんですか?』と」
相手が会話に乗ってきたら、「友人が無料で耐震診断をしてるんですよ」ともちかける。そこで仲間を連れてきて、決して「お友達価格」ではない耐震補強の契約につなげていく。
相手にノーと言われても、「無理強いはしないのがコツ」とも語る。「一度に大金をせしめるやり方もありますが、細く長く利用してもらうという考え方もある。老人の顧客が十数人いれば、ルート販売のようにまわっていくだけで、いろんな商材で稼げる。化粧品や洗剤など消耗品がなくなる頃にまた顔を出す。掃除をして話し相手になって犬の散歩もして買い物に行って、ついでに銀行に寄ってね」。
そこで残り資産も確認できるという。高齢者に信頼されてこそ、できる方法だ。こうした方法で、福岡氏は1人あたり数百万円といった額の商売をする高齢者の顧客を、数百人は抱えていた。中には、認知症らしき人もいたが、「法に触れることはしていない」という。ただ、「ふつうよりちょっと高い商品」をサービス付きで売ってきただけのこと。そう福岡氏は主張する。
「いろんな商売の仕方があるわけです。モノが高くても、おばあさんも喜んでくれていれば、いいんじゃないですか。こちらも奉仕していますしね」

一般市民が"法的に"高齢者を支える仕組みも

2016年4月8日、成年後見制度利用促進法が成立、それに関連する民法も一部改正された。従来の成年後見人は親族のほか、弁護士や司法書士などの法律専門職がなるケースが多かったが、この新法は、一般市民が一定の研修(案では50時間以上)を行えば、後見人として活動できるようになる「市民後見人制度」の拡充を図るものだ。
財産や人権といった重要事項を、血縁などの関係のない一般市民が後見人として扱える、という大きな法改正が行われたのは、今後の高齢者の急増を考えると、いまから対策をとっておかねば間に合わないという焦りが行政側にあるためだ。
東京都では高齢者の一人暮らしが多い。2010年には65歳以上の都民の4人に1人にあたる62万人が一人暮らしだったが、25年後の2035年には104万人に達する。65歳以上の夫婦のみの世帯も合わせると、推計で170万世帯を超える。

都の「東京都長期ビジョン」では、2024年までに高齢者の消費者被害防止のために見守りネットワークを全市区町村に構築することを構想している。こうして高齢者の消費者被害防止に取り組むのは、前述の池本弁護士の話にもあるように、お年寄りは、拒絶能力が低下するにつれて必要のない購入や契約をしてしまう可能性が高まるためだ。認知症であるなしにかかわらず、その消費が妥当なものか周囲が注意して見守る必要があると都も考えている。
「市区町村ごとに高齢者への『見守りネットワーク』はあり、機能しています。ただ福祉部門に特化しているケースが多数です。今後は、その福祉部門と訪問販売などの消費者被害を扱う部門との連携を強化していく方針です」(東京都消費生活総合センター相談課)
都が懸念するとおり、あの手この手で高齢者をだまし、高額商品や高額契約でお金を引き出そうとする詐欺的手口の業者は、より狡猾になっている。そして問題は、そうした業者の中に、一部上場企業など著名な企業も交じりだしていることだ。

有名企業でも油断は禁物

著名な証券会社が売りだした複数の投資信託に、読みきれないであろう複数の新聞購読契約、同様に観賞しきれないだろう有料衛星放送の複数契約。売り手はどれも有名企業だ。商品・サービス自体、違法なものではない。
だが、購入・契約する「買い手」が80代以上の女性となると、話は変わってくる。前述の池本弁護士の指摘のように、拒絶能力が低下した高齢者は、認知症でなくとも、業者の押しを拒みきれず、受け入れてしまう。すると、本当にその商行為が本人の意思に基づくものだったのか疑わしく映るものが少なくない。
そんな一つに、大手生命保険会社の終身保険のケースがあった。じつは前出の大手メディアに勤めていた老婦人は、掛け金600万円という終身保険に入っていたが、その死亡時の受取人は無記名のままだった。つまり、親族のないその女性が亡くなった際、その保険金の受け取り手は誰もいなかったのである。
契約書を開くと、老婦人の自筆サインと印鑑が確認できた。また、当初契約からたびたび組み替えられていた形跡もあった。だが、どういう形であれ、受け取り手もいないのに終身保険をかける人はいないだろう。

担当した川口純一司法書士は、契約書を見つけると保険を解約すると同時に、当時の担当者を探してもらうよう、同生保に調査を依頼したが、担当者はすでにいなくなっていた。
「あれは担当者個人の考えだったのか、会社の方針もあったのか。それはわかりません。ともかく、解約で戻った600万円を婦人の老人ホームの一時金に充当しました」
こうした高齢者をターゲットにしたビジネスには、今後ますます注意する必要があると川口氏は指摘する。
「ふつうの会社のふつうの外回り営業職の中に、高齢者を巻き込む人たちが増えてきたということです。それは悪いものというわけでもない。しかし、その人にとって本当に必要かどうかで言えば疑問となる。高齢者向けのビジネスをどう評価するのか、今後ますます難しい問題が出てくるかもしれません」
ひとつ数千円の野菜、数万円の食品でも、「からだにいい」「おいしい」「よかった」と本人が納得すれば商行為として成立する。商品の内容はわからなくても、「いい人」だから、「話を聞いてくれる」から買ってあげる人付き合いもある。
そんな「ふつうよりちょっと高い商品」を高齢者に販売する商売が広がりだしている。


岩崎大輔(いわさき・だいすけ)
1973年、静岡県生まれ。ジャーナリスト、講談社「FRIDAY」記者。主な著書に『ダークサイド・オブ・小泉純一郎「異形の宰相」の蹉跌』(洋泉社)、『激闘 リングの覇者を目指して』(ソフトバンククリエイティブ)、『団塊ジュニアのカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた』(講談社)など。


参考文献・参考資料

中国で政府や国有企業の幹部になりすました投資詐欺への取り締まり強化へ AI活用で巧妙化する手口に警戒感 (msn.com)

中国の愛人契約詐欺集団 19歳女性を手玉にとった方法|NEWSポストセブン (news-postseven.com)

中国人民軍将軍騙る債券詐欺多発 3か月で270人逮捕|NEWSポストセブン (news-postseven.com)

高齢者に群がる業者「合法的詐欺」の手口 - Yahoo!ニュース

騙されない為の心得       副題 18歳で成人になる若者へ|tsukasa_tamura (note.com)

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