政治(法律)講座ⅴ1457「事実に基づいた韓国大法院の判決と『国民情緒法』からの脱却」
歴史的な時代背景も考えずに、大衆先導という「国民情緒法」で、行政が立法に介入する手段として使われた。皮肉を込めて「 -法」という名が付くが、大韓民国における法律の類ではなく、不文律であり、法律や条例、条約、大韓民国憲法さえも超越する法の軽視の風潮を揶揄した言葉である。今般の判例は大統領が交代して初めてできた判決である。文在寅政権ではあらゆる解釈が左派の傾向にゆがめられていたことは否めない。今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2683年10月27日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
はじめに
韓国に李承晩大統領時代から捏造歴史教育が強制で、かつ、韓国の優秀な人材が粛清されて、古い慣習にとらわれた事実認識と前近代的な法治国家として営まれてきたのである。今般、「国民情緒法」の意識から脱却して、やっと近代的な法治国家に近づいてきたような気がする。
「帝国の慰安婦」著者、韓国最高裁が有罪判決を破棄…「無罪の趣旨」で審理差し戻し
読売新聞 によるストーリー •
【ソウル=小池和樹】学術書「帝国の慰安婦」で元慰安婦の名誉を傷つけたとして、名誉毀損(きそん)罪に問われた著者で韓国・世宗(セジョン)大の朴裕河(パクユハ)名誉教授(66)の上告審で、韓国大法院(最高裁)は26日、罰金1000万ウォン(約110万円)としたソウル高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。
大法院は著作内の表現について「学問的主張ないし意見の表明と評価するのが妥当」とし、「無罪の趣旨」で高裁に差し戻すとした。
この裁判では学術研究における言論と表現の自由などが争点になった。朴氏は「個人の名誉を毀損していない」などとして一貫して無罪を主張してきた。
2017年1月の1審判決では、検察が「虚偽」と主張した「日本軍と同志的な関係にあった」「自発的な意思で慰安婦になった」などとする表現について、名誉毀損にあたらないと判断した。本の出版は公共の利益のためだったと認め、「表現の自由を幅広く保障しなければならない」として無罪とした。
ただ、同年10月の控訴審判決では「元慰安婦らの社会的評価が低下することを認識しながら執筆した」と認定し、逆転有罪判決を言い渡した。
◆「帝国の慰安婦」=日本の帝国主義下での女性の人権侵害を描く一方、元慰安婦が「旧日本軍の性奴隷」という一面的な見方に疑問を示した学術書。2013年8月に出版され、日本でも翻訳本が14年11月に発刊された。韓国検察は同年6月に元慰安婦らの告訴を受け、元慰安婦らの名誉を傷つけたとして15年11月に朴氏を在宅起訴した。
「帝国の慰安婦」著者 有罪判決差し戻し、無罪の公算大 韓国最高裁
毎日新聞 によるストーリー • 8 時間
判決後、記者団の取材に応じる朴裕河・世宗大名誉教授=韓国最高裁前で2023年10月26日午前11時53分、坂口裕彦撮影© 毎日新聞 提供
韓国最高裁(大法院)は26日、著書「帝国の慰安婦」で虚偽の記述をして、元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉毀損(きそん)罪に問われた朴裕河(パク・ユハ)・世宗大名誉教授(66)について、「無罪とみるべきだ」として、罰金1000万ウォン(約110万円)とした2審判決を取り消し、審理をソウル高裁に差し戻した。同高裁で今後、無罪判決を受ける公算が大きい。
判決は「著書における表現は、学問的な主張や意見の表明だったと評価するのが妥当だ」と指摘し、名誉毀損罪にはあたらないとの判断を示した。
朴氏は判決後、「正しい判決を出してくれた判事たちに感謝する。著書をめぐっては非常に多くの誤解を受けた。重要なのは、この本は慰安婦問題の解決方法に対する支援団体の考えや主張について検討したものだということだ」と強調した。
朴氏は2013年に出版した「帝国の慰安婦」で、慰安婦問題は帝国主義下での女性に対する人権侵害だと指摘する一方、当時の慰安婦と日本軍は「同志的な関係」にもあったなどと表現した。元慰安婦らは反発して14年に朴氏を刑事告訴。検察が15年に朴氏を名誉毀損罪で在宅起訴し、16年に懲役3年を求刑した。
1審のソウル東部地裁は17年1月に「元慰安婦の社会的評価を落とす意図はなかった」などとして無罪判決を下した。
しかし、2審のソウル高裁は同年10月に「虚偽の事実を示し、元慰安婦の名誉を毀損した」として、1審の無罪判決を破棄し、罰金刑を言い渡した。朴氏は一貫して無罪を主張。朴氏と検察がそれぞれ上告していた。【ソウル坂口裕彦】
「帝国の慰安婦」、名誉毀損認めず 韓国最高裁が著者の有罪判決破棄
朝日新聞社 によるストーリー • 2 時間
判決後、記者団の取材に応じる朴裕河・世宗大名誉教授=2023年10月26日、ソウルの大法院、稲田清英撮影© 朝日新聞社
著書「帝国の慰安婦」の記述をめぐり、元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉毀損(きそん)の罪に問われた朴裕河(パクユハ)・世宗大名誉教授に対する上告審で、韓国の大法院(最高裁)は26日、名誉毀損を認めた控訴審のソウル高裁判決を破棄し、差し戻した。「無罪の趣旨」による破棄・差し戻しだとしている。
【写真】「帝国の慰安婦」の著者、朴裕河・世宗大名誉教授(中央)。朴氏は判決後、「正しい判決に感謝している」と語った
朴氏は控訴審で有罪判決を受け、罰金1千万ウォン(約110万円)の支払いを命じられていた。
判決では、同書の表現について「学問的な主張や意見の表明だと評価することが妥当」として、名誉毀損には当たらないとの判断を示した。記述は、慰安婦全般に関するもので、特定の個人に関する具体的な内容ではないとも指摘した。
朴氏は判決後、記者団に「本は慰安婦問題の解決方法に関する支援団体の考えや主張などを検討したものだ。正当な判決を出してくれたこと、多くの方々が(著書の)意図を正確に見抜いて支持、応援してくれたことに感謝したい」と述べた。自身のSNSでは「今日の判決は韓国の国民に思想の自由があるかどうかに関する判決だった」との見解を示した。
「学問の自由」抑圧の懸念回避 「帝国の慰安婦」著者の裁判
毎日新聞 によるストーリー •
著書「帝国の慰安婦」の記述をめぐり、名誉毀損(きそん)罪に問われた韓国の朴裕河(パク・ユハ)・世宗大名誉教授(66)の裁判。最大の焦点は「学術的な研究に名誉毀損が適用されるのか」という点だった。韓国最高裁が26日、「朴氏は無罪とみるべきだ」との判断を下したことで、日韓の歴史研究など「学問の自由」が抑圧される懸念はひとまず払拭(ふっしょく)された。
朴氏が2017年にソウル高裁で罰金刑の有罪判決を受けた後、100人を超える日韓の研究者らが抗議声明を発表。「身の安全を確保するためには、国内の主流集団が正しいと認めた歴史認識のみに従わなければならなくなる」と強く批判していた。
韓国最高裁が示した「学問的な表現物に関する評価は、刑事罰ではなく、原則的に公開討論と批判の過程を通じて行わなければならない」との見解は、こうした主張を受け入れたものとも言える。
ソウル高裁の判決後には、慰安婦問題で強い影響を持っていた市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、旧挺対協〈ていたいきょう〉の寄付金不正流用疑惑が発覚。国民の強い批判にさらされた。元慰安婦を支援する市民団体の活動が「聖域」として扱われてきた状況に変化が生じたことが、最高裁判断に影響を与えた可能性もある。
朴氏は判決後、「私を支持し、応援してくれた多くの皆さんに感謝している」と時折、声を詰まらせながら語っていた。【ソウル坂口裕彦】
国民情緒法または国民感情法とは
国民世論次第で司法判断が歪められ決まるなど罪刑法定主義・法治主義・法の支配が崩れがちな大韓民国の政治・社会体質を皮肉った言葉である。
国民情緒に合うという条件さえ満たせば、行政・立法・司法は実定法に拘束されない判断・判決を出せるという意味である。韓国国内でも用いられる特徴である。
皮肉を込めて「 -法」という名が付くが、大韓民国における法律の類ではなく、不文律であり、法律や条例、条約、大韓民国憲法さえも超越する法の軽視の風潮を揶揄した言葉である。
一部の市民団体(圧力団体)や学者の私見によって具体化され、大衆世論によって成否が判断され、これを韓国メディアが後押しすることで、国民情緒法は(比喩的に言って)「制定」される。
法の支配や時効や法の不遡及といった近代法の原則すら時に無視され、国民情緒という揺らぎやすい世論に迎合して、いかなる裁定をも下すことができるとされる。この風潮の最たる例が「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」で、この法律は「日本統治時代の朝鮮で財産を得た当時は合法だったとしても、親日行為を通じて得た財産を子孫からでも没収できる」という法律であり、この時には「法令の効力は過去の行為に遡及して適用されない」という、法の一般原則をも否定した。
国民情緒への偏重は下級の地方法院、高等法院の判決で多く見られ、大法院(最高裁)ではこれらの判決が覆ることもあった。
中央日報によると「数十年前の偽装転入、半世紀を超えた父親の親日などの問題で、国民情緒に背いた(ある)公職者は現職から退く『恥辱刑』を受けた」。被告は「通貨危機の直後、国民の憂憤に押されて『政策も司法的審査の対象』と」されたが、結局は「最高裁で無罪が宣告された」と言う。
無罪確定まで6年を要しており、当事者は長く不当な苦難を甘受しなければならなかった。
罪刑専断主義との違いは、権力者の恣意性が必ずしも働かないという所で、逆に言えばポピュリズムに支配され、国家の法的安定性やコントロールができなくなる恐れがある点である。
具体的には、2005年に当時の盧武鉉大統領が、日韓基本条約の日韓請求権協定に(慰安婦・被爆者・サハリン残留韓国人は含まれないが)徴用工は含まれるとの見解を示したにもかかわらず、8年後の2013年に戦時朝鮮人徴用工への賠償再燃問題でソウル高裁が徴用工は請求権協定の範囲に含まれないという逆の判断をして新日鐵住金(現・日本製鉄)に賠償を命じた件がその代表例である。
そもそもその前提になる朴正煕大統領の(1965年の)政治判断を、憲法裁判所は2011年8月に覆しており、国民情緒を慮って、韓国政府が慰安婦の賠償請求権に関して解決に向けて努力しないのは違憲だと判断していた。
日本経済新聞は東北アジア歴史財団の都時煥研究員のコメントを掲載し、韓国の行政・司法は世論の動きに流されやすく「憲法の上に『国民情緒法』がある」とし、「一連の判決は、国家優先から人権重視へ移行する国際社会の潮流を、韓国の裁判員が感じ取った結果」であると分析した。
他の例では、靖国神社の門に放火した中国籍の男が、韓国で政治犯に認定されて日本側への身柄引き渡しを拒否する判決が出た件(靖国神社・日本大使館放火事件)、対馬の観音寺から盗まれ、韓国で発見された仏像について、忠清南道の浮石寺が日本に返還しないよう求めた問題(対馬仏像盗難事件)で、盗品の返還を拒む司法判断をした件などが沢山ある。
また反日とは関係の無い問題でも、国民情緒が司法に影響する場合がある。セウォル号沈没事故の裁判で、韓国の現役判事が業務上過失致死傷が妥当というところをセウォル号元船長以下4名が異例の殺人罪で起訴された件は、検察が判例よりも本件で激怒したとされる朴槿恵大統領の意向と死刑を求める世論に動かされ、国民情緒に寄り添った結果であるとされる。ナッツ・リターン事件で大衆の不興を買った財閥令嬢の趙顕娥副社長に対する量刑でも、国民情緒が影響したとされる。2019年、就任前の法務部長官・曹国にまつわる不正が明らかになった後、ハンギョレは曹が置かれる状況を「国民感情法にはまって戻ってこられなかった」と危惧した。
2018年には朝日新聞が徴用工裁判を受けて、国民情緒法によって国交正常化の前提が崩れ、日本政府や企業にとって受け入れられないと批判するなど、韓国世相の表現として用いられた多数の例がある。
参考文献・参考資料
「帝国の慰安婦」著者、韓国最高裁が有罪判決を破棄…「無罪の趣旨」で審理差し戻し (msn.com)
「帝国の慰安婦」著者 有罪判決差し戻し、無罪の公算大 韓国最高裁 (msn.com)
「帝国の慰安婦」、名誉毀損認めず 韓国最高裁が著者の有罪判決破棄 (msn.com)
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