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ハンコンのクランプのネジがバカになったからあれと引き換えにリコイルした。

最近めっぽうラリーゲームが面白い。一日中、コースやコーナーの曲がり方を考えていると言ってもよいほどである。

しかしハンコンでバカになるのは構わないが、ハンコンがバカになるのは困る。ハンコンをデスクに固定するクランプのネジが、ある一定のところからしまらなくなったのだ。回しても回しても同じところをぐるぐるするだけなのである。

👆ハンコンの底面。逆U字状のものがクランプ。これを下から締め上げて机を思いっきり挟みハンコンを動かないようにする仕組みである

実は雄ネジの方はかなり早い段階でバカになってしまっていた。しかしそれはサイズの合う別のネジを交換すればいいだけで済んだ。しかし先日、いよいよ膣側というか観音様というか雌ねじがおかしくなったのである。

👆よく見ると溝が絶望的にない

調べた結果、車の整備などでそういうことは実はよくあるらしく雌ネジを交換する方法が世の中に存在していたのである。今回ご紹介するのはこの修理法についてのみならず、全世界において慢性的に続いている深刻な半導体不足、国際情勢の変化による急激な物流の悪化、インフレ、いまだ感染者が減らないコロナ、といったさまざま問題を抱える現代において、ハンコンの最新リペアリング技術が我々に一体どのような未来をもたらすかである。


■リコイルとは何か

私も初めて知った言葉であった。リコイルとは閉経を迎えた雌ネジを交換するテクのことなのである。発火しそうな暖房を家電メーカーが引き取る処置とは関係ないらしい。

大雑把に手順をいえば、ドリルで一回穴を大きくし、それから溝を掘る。そしてその溝に合うリングをはめ込むというものである。

👆〝味〟がすごい

👆左から穴掘りドリル、溝堀りドリル(タップ)、リングを入れる治具、リングの端を折る治具
👆リング。要するにこれも外側がネジのようになっていて、「ネジのネジ」みたいなメタ構造で再生するのである


■大きな穴を開ける

ハンコンのクランプのネジはちょうど直径10mmであった。そこに一回り大きい13mmぐらいの穴を開ける。キットにはそのドリルもきちんと付属しているのであるが、早速私は行き詰まったのである。

👆ん?

上記キットに付属しているのはドリルの歯だけで、よく考えると、それを回転させるこういうインパクトがないのである。

👆カッコいいし、なにか我々に新たな世界を見せてくれそうな可能性はあるもののさすがに1万以上するのは渋過ぎである

そこで手動ドリルも探したが小さい。13mmの穴を開けられる手動はアマゾンにないのである。

できるだけ安価で目的に適う道具はないかとインターネットを航海した結果、結構いいのではないかと見つけたのがこれであった。

👆700円。これも要するにドリルである。傘っぽい形状の金属歯の部分でハンコンの穴を思いっきりえぐり出している勇敢な自分がはっきりイメージできた。

👆買ったのである
👆かなり力が必要だったが確かにでかめの穴が開く。正確な大きさではないし、先細りした穴になっていることは明らかである


■溝を掘る

無事大きい穴を開けたので、続いてリングを入れる溝を掘るのである。溝を掘る道具(タップ)はキットに付属していたが……

👆ん?

また回す道具がない。しかしタップはドリルと違ってなにやら端が四角に角張っているため、ぴったり挟めるサイズのレンチが家に奇跡的にあったのでそれで回すことができたのである。

その日が試練の始まりであった。

👆しぎぃっ、ぬひっ!かぁあっ!ひぎぃぃいいいやぁぁあああ――いっ!!!

ものすごく指が痛いのである。考えてみれば金属を掘るわけであるから、たぶんゴリラとかの腕力がないと無理なのだ。「レンチのもっと外の方持てばいいじゃん。」と思うかもしれないがそうすると非常に不安定になり、レンチが外れてしまうし、タップを垂直に保てない。アリストテレスの名言「足場があれば地球を動かせます」の確かに〝足場〟がなく、地球にいる人差し指が地球を動かさねばならぬという戦況に追い込まれたのである。

しかも穴の奥の方が狭いから、進むほど〝より〟である。大きな穴を開けるステップで変な傘みたいなドリルを使ったツケが早速回ってきた。

👆1時間で5%入った。息を切らしながら、唖然と見つめるしかなかった


■リングを入れる

——いまやめたら今日おまえの大好きなファミコンできないぞ。ゲームしたいだろ?ダートラリーはやくやりたいだろ?

レンチの角度を10度回してはタオルで汗を拭き10分休憩、10度回してはタオルで汗を拭き10分休憩を繰り返し、青函トンネル開通の大工事は少しずつ進められ、遂にタップは青森津軽の地を踏んだのであった。

👆もはや「わあい」とかでなく、「なめんじゃねえぞ……」みたいなむしろちょっとキレている感じの喜び方である

最後はリングをサクっと入れて完了……

👆あれ……?あれ……?

……のはずだったが、しかし溝を掘るの段階で適切な道具を使わなかったせいもあり、最後の簡単なリングを入れる工程さえも芋づる式に非常に面倒になってしまったのである。途中から奥に入らない。溝が甘かったらしい。やり直そうとしたもののもはや逆回しもできず取り出すに取り出せないという状況になり真っ青に(実はリングと言っているが、もっと正確にいうと構造はバネのようになっているため、一方の方向にはしっかり回るのだが、逆回しをするとバネがほどけるような塩梅となって力がしっかりかからないのである)。

👆なんとかペンチやプライヤーを駆使してほじくり出すことができて、九死に一生を得た様子
👆しぎぃっ、ぬひっ!かぁあっ!ひぎぃぃいいいやぁぁあああ――いっ!!!

何時間も溝を掘ってリングを入れるの繰り返しである。もはや私の右手はスーパーの重いレジ袋を何時間も持っていた時のように、レンチを握った形のまま固まり伸ばせなくなっていた。

——いまやめたら今日おまえの大好きなファミコンできないぞ。

一念岩をも通す。

一念リコイルのリングをも通す。

素人仕事の試行錯誤の果ての果て、最後は「穴も溝もいびつだしもう絶対無理だ、5万のハンコン丸ごと買い替えだ!」と思ってあきらめかけた時に、なんでかよくわからないけどリングがうまく入った、という形で決着したのである。

👆最後はなんか偶然うまく収まったような一抹のフロック感が残っていた。もう二度と同じことはできない気がするし、心底やりたくもないので、以降ハンコンを設置する時は毎回こわごわネジを回している
👆若い雌ネジを拡大した無修正のサービスショット


■まとめ――最新リコイル技術がもたらす未来とは

私のようにハンコン専用のスタンドを使わずに遊んでいる向きは、頻繁にクランプを付けたり外したりするため、ネジが完全バカになってしまうことがあるかもしれない。その時はぜひ私の方法を参考にしてほしい。

結局重要となったのは道具の選定と言えるだろう。リコイルを日常に行っていない者にとってはいかにも元が取れなそうな色々な道具が必要となってくるのである。購入という試練か、保留という試練か。

ともかく、年を取ってくると身体の各関節部の痛みの治りが悪くなるのである。すなわち最新リコイル技術がもたらしてくれる未来とは、正味1ヶ月におよぶ、右人差し指が「なんとなく突き指で、ポキって鳴らせた時軽く嬉しい。」という日々である。

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