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アフターコロナの夏は冷房25度から考えよう

今日の最高気温が29度だったと知って、エアコンをつけるべきだったかなとちょっと考えるなど。冷房の推奨温度は28度で、真夏日前から冷房はまだ早いだろうか。僕はそうは思わない。むしろ室温25度をスタート地点として、自分なりの適温と冷房設定温度を考えた方がいいんじゃないかと思う。

実は根拠はなかった「冷房は28度」

クールビズ活動開始から15年、なんとなくみんな「冷房は28度」とクールビズの推奨温度を刷り込まれてるんじゃないかと思う。でもこれが「何となく28度という目安でスタートした」と明言されていることは、同じように知られてるだろうか。事務所衛生基準規則建築物環境衛生管理基準の「気温が17度以上28度以下」の定めが基になったという。上限ぴったりの数字に、ギリギリまで冷房を弱めたいというシンプルすぎる意図が見える感じだ。

「何となく」はクールビズ導入当時に担当課長として関わっていた盛山正仁法務副大臣の発言で「働きやすさの観点から検討しては」と続いたという。多分実際に検討が進められたのだろう。クールビズ公式サイトでは、現在も28度という数字は掲げているものの、あくまで目安であること、また室温28度であり冷房設定温度ではないことがくどいくらいに注記されている。

働きやすさの観点からといえば、生産性と温度の関係は1950年代から研究されている。1992年のRamseyの論文では、1965年のWingをはじめとする既存研究を整理しその関係をモデル化したが、対象になった研究数は150本にもなったという。これほど盛んな研究の背後には「こんな環境で満足に働けるか」という労働者と「過剰な投資はできない」という雇用者の間で、当時から着地点として「第三者の示す適温」が求めら続けてきたのではという気もする。「28度の一人歩き」も、これが第三者の示した適温、落としどころとして重宝だったからかもしれない。

25度を超えると作業効率が低下し始める

そうした研究の中で、最近の28度を見直そうという意見でよく引き合いに出されているのは、「コールセンターの室内環境が知的生産性に与える影響」だろう。約1年間、70~120名が配置されるコールセンターでの累計13,169件の電話対応のデータを調べた大規模な実験に基づくものだ。室内温度が25度から26度に上昇したとき作業効率が2.1%低下したという結果になり、「25度から28度に上がると6%も生産性が低下」とも報じられた

昨夏、この研究を踏まえ、逆に28度から25度に下げたらどうなるかを姫路市が実践。市役所本庁舎全体を一夏の間、25度設定にした。結果は職員の8割以上が業務効率向上と回答、総残業時間が前年比14.3%減、人件費約4000万円減、光熱費はわずか7万円増という数字になったという。これは前記の実験に負けないほど大規模なだけでなく、市役所全体という様々な業務と老若男女含めた様々な職員が対象になった、とても多様性が高い実証実験になっていると思う。業種や人員構成によらず、たいていの仕事環境で同じ傾向が出そうだ。

リモートワーク環境は「自分の最適」温度に

この夏、仕事環境の室温管理は、雇用者やそこから任命された事業所衛生管理者だけの問題じゃなくなる。アフターコロナでリモートワーク継続の企業も多いようだ。きっとはじめて一夏を自宅勤務で過ごすという人、家庭も多いんじゃないかと思う。その場合の事業所は自宅で、事業所衛生管理者は自分になる。仕事中の室温というのを、僕たちは自分で考えなきゃいけない。28度で本当にいいんだっけ、と

実際のところ、自宅に仕事に適した場所があると、仕事にはすごく集中できるようになる。同僚からの声掛けどころか視界内に動くものもない環境だから、1時に午後の業務を開始して気づくと5時なんてこともたまにある。午後の暑い4時間、水分も摂らずに集中してたら、脱水症状や熱射病などいろいろと怖い。もちろん定期的に休憩と水分補給が大事だけど、それを忘れても倒れないように適温も大事だ。

28度があなたにとって快適でなければ、冷房設定温度を下げることをためらわないでほしい。28度は多くの人にとっては生産的でも経済的でもエコでもない(少なくとも証拠はあまりなく反証は多い)。ステイホームに快適を。アフターコロナの夏は25度から考える。どうぞステイ適温でお過ごしくださいませ。いま倒れて病院を密にしないように。

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