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車のない街を考える

以下の記事を読んで、EV(電気自動車)も「はじまりの終わり」が始まったなあと思います。ガートナーのハイプサイクルで言えば、めちゃくちゃ期待されてたピークを過ぎて、失敗事例が噴出してきてノリで参加してた人たちが醒めていく時期。

ピーク期に種が大量にまかれる「失敗事例」の中には、イメージ先行で雑に煽った期待になんの実体もなかったからみたいな、単なるミスマッチ事例がかなり多く含まれます。でも本質的な問題が浮かび上がってきて、この領域の未来のためにそこは乗り越えないととなる「問題事例」もあるのですが、それにしてもいきなり構造的な問題を衝いちゃってるな。

最近になって、東京大学の生産技術研究所所長を務めておられる教授の岡部徹さんや、海外メディアなどからも「電気自動車、言うほど良くないんじゃね」とか「ニッケルなどレアメタルの採掘や精錬には有害物質の排出が伴うから微妙やんけ」などの議論が出てくるようになりました。そりゃそうですね。採掘も精錬も廃棄も滅茶苦茶環境負荷が高いバッテリーを載せている電気自動車が、確かに走ってるところや充電では環境にやさしいからという一点で優れていると言われてもなあ…って感じです。

熱狂が冷める電気自動車(EV)のミライ「イメージで環境にやさしいとか言ってくれんなよ…」 | 文春オンライン

電化、電池化が「優しい」というのは、すごく雑に言えば燃焼と廃棄を「現地分散」から「製造地集約」するので、まず暮らしの現場には優しい。そのあとは、集約された製造や廃棄は環境負荷低減に効率的に取り組めるという事なのかなと思ってます。トータルに効くのは後者で、後者は「努力しやすい」だけで、電化しただけで自動的に環境に優しくはならない。でも中期的には、その努力と努力を促す適切な規制とかが始まって、ここからハイプサイクルで言う幻滅期を乗り越えてトータルで環境に優しい安定期に進んでほしいと思います。

で、適切な規制をするにあたって「こういうことも考えないと」と、もっと大きな構造問題についても言及されてるわけですが。

裏を返せば、大容量バッテリーを積んだ車を大量生産するにあたり、貴重な各種レアメタルをどんどん消費するようなサイクルが地球の環境において持続可能なはずがないのです。もちろん二酸化炭素の排出は削減しなくてはいけないのは当然としても、レアメタル乱採や廃棄・処分コストも含めてトータルで見たとき「二酸化炭素の削減には成功しましたが環境破壊は凄く進みました」という、手術に成功したが患者は死んだぞ的なことになりかねません。(略)環境破壊を不退転な形で抑えるには、結局は大量生産大量消費の経済に歯止めをかけると同時に極力車で移動しない都市社会に移行してお前らは電車と徒歩で移動しろという仕組みにするほかないんじゃないのと思ったりもします。

熱狂が冷める電気自動車(EV)のミライ「イメージで環境にやさしいとか言ってくれんなよ…」 | 文春オンライン

オフトピな話を絡めますが、人生100年社会の高齢者ドライバー問題も含め、私もこれはやるべきじゃないかなと思ってます。正味の話、まだ折り返し地点直前ぐらいな同年代が口をそろえて「最近パソコンの文字が見にくくてさ」とか言い始めてるのに、運転はOKとか怖いです。むしろ体力が衰えていくこの先は運転ができないと遠出とか家族を病院に連れていくとかすらできないとか、100歳まで運転しないといけない社会とか、運転するこっちが怖いわけです。免許持ってないけど。

高齢者が年金下げて代わりに都市部で高齢者優遇で公団提供充実させて、収入オンリーではない生活の持続性を保証するとかすれば、都市部に高齢者、郊外に若者な住区分は自然にできていかないのかなと思うし。そのうえでロンドン市内みたいな渋滞税とか「超低排出ゾーン」設定による通行量とか設定したら、都市部までは車で来ても都市内では徒歩&公共交通機関移動が促されないかなと思うし。これらは課税とか受益者負担とかお金を取ることより、都市内で車を使わないインセンティブを設けて自然に移動手段を使い分けるように促すナッジなんじゃないかなと思います。

自動車を減らしつつ、必要なだけの自動車は社会として持つし、それまでの間やそれ以降の持続性を考えれば電気自動車かと製造環境負荷は喫緊の問題として解決していく。「言うだけなら簡単」にもほどがありますが、でもそうなっていってほしいなと言っておきます。繰り返すけどこの先、年をとっていってもドライバーとかやりたくない、やってほしくもない。家の広さより買い物などの生活施設や病院などの医療施設までの距離が重要な高齢者は都市部に集中して住んで、車無しで不便しない徒歩圏生活をしてて、街中は公共交通機関や緊急車両(救急車とか)がすいすい走っている。それがニューノーマルであってほしい。

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ヘッダ画像はDALL・Eで生成。なぜか自動車が横断歩道を渡っていて、地味にシュール。

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