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徹夜テンション散文

「やぁ、気分はどう?」

「可もなく不可もなく、かな。」

「それは良かった。フラットな状態、素晴らしいね。」

「日付で見れば気分は最高であるべきだったんだけどね。」

「何かあったっけ?」

「君をこっぴどくフった日だよ。」

「ああ、そうだった。君にこっぴどくフラれた日だね。」

「それなのにまた君はここにいるんだ。そりゃプラマイゼロにもなるさ。」

「嬉しいくせに。」

「まさか。君こそ忘れてなんかないくせに。」

「まあね。」

「なんで忘れたふりなんかするかな。」

「忘却はよりよき前進を生む。ニーチェが言ってたんだ。今朝の朝刊で見てね。せっかくだからあやかろうと思って。」

「なるほど、いい心がけだね。今さら進めやしないくせに。」

「それはお互い様だろうに。」

「分かってて言ってるんだよ、『未来に進むことは今の放棄だ』。」

「いい言葉だね、誰のかな。」

「いい言葉だろう?今考えたんだ。」

「となれば僕たちは誰よりも今を生きているわけだ。物は言いようだね。」

「君は私なしじゃ未来に踏み出せないし私はずっと君のそばにいるつもりもない。フった相手が付きまとってくるんだ、このくらいの罰ゲームはあってもいいんじゃないかな。」

「君は僕がいなくならなきゃ今を生きるしかないし僕は離れるつもりもない。君が僕をこんな風にしたんだ。このくらいの意趣返しはいいだろ?」

「君がずっと未来に踏み出せないのも悪くないね。」

「君がずっと今にとらわれ続けらのもいいね。」

「私は君が大嫌いだ。」

「僕は君が大好きだ。」

「おやすみ、正直者、また明日。」

「おやすみ、大嘘つきさん、さようなら。」



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