見出し画像

「経営に入り込むデザインリーダー」とは何者か?どうやってなるのか?

Hello, 辻原です。すごい久しぶりにnoteを書きます。
外部公開できないものの、23年はビジネス書1冊くらいの原稿を書いたので、年始の「今年は文章を書くぞ!」はクリアしたものと思っており発信系をサボりつつあったのは正直なところ自分への甘えです。

今年は弊社でクリエイティブキャピタルの取り組みをスタートしたこともあり、年の後半の辻原個人のテーマは「経営に参画するデザイナーに必要なスキルは?」「どんな振る舞が求められ・どんな役割を果たすべき?」という観点であり、こうした自己問答を繰り返していました。23年最後にできるだけ簡単に整理しておこうかなという気持ちでnoteを書いています。

もっと経営に貢献したいぜ〜という野心と向上心と利他心をお持ちのデザイナーさんのお役に立てると嬉しいです。

「経営に入り込めるデザインリーダー」って?

この表現はgoodpatch土屋さんのnoteから引用しています。

彼のnoteにも書かれているように、2018年にデザイン経営宣言が提示されてから、国内でもデザインと経営の距離を縮めようという働きかけは多くの場所で見られますし、新規事業開発にデザイ思考の重要性が説かれてから、日本でもなんとなく「デザインって絵を書いたり・ものをつくるだけじゃないらしいよ」みたいな認知は大企業やベンチャーまで広がってきたように感じます。

しかしながらデザインが経営に活用されているか?デザインリーダーが経営者のそばにいるか?という観点では「まだまだ」というのが現状です。とはいえ、きちんと考えたいのは、デザイナーが「経営に入り込む」ってそもそもどういうことなんだろう?ということです。会社の意思決定に関わること?大きな決裁権を持つこと?私の認知できる範囲でいうと、デザイン界隈ではこのあたりが言語化されていないなあと感じていているので、このnoteではその辺りのモヤモヤを晴らすことを目的としてみたいと思います。

経営者はデザインの力が欲しいのか?

これは私の反省でもあるのですが、デザイナーは「デザイン」という手法や態度・概念に誇りを持ち過ぎています。デザインという言葉が大好きすぎて、多くの場合「デザイン」という言葉の翻訳を怠け過ぎています。デザインイズデザイン、みたいな。

しかしよく理解しておきたいのは、経営者は「経営にデザインを取り入れたい」わけではなく「何かしら有効そうな手段を用いて会社や事業を成長させたい(あるいは適切に維持したい)」のです。そのためにデザインが使えるのであれば使いたいし、そのためにデザインリーダーが必要なのであればアサインしたい。であれば、デザインを「デザイン」という言葉のまま経営に取り入れてもらおうというのは正直乱暴すぎないか?と。

デザイン経営しかりデザイン思考しかり、日本では目的より手法が前に立ってしまう傾向がありますが、これは危険信号です。目的に立ち返り手法を見つめる必要があります。デザインはあくまで手法なのです。

「経営とは何か」を理解する

まずは経営について理解を深める必要があります。大変ざっくりいうと「経営」とは、「価値の創造」「価値の提供」「資本の創造」「資本の(再)分配」を繰り返しながらスパイラル状に成長していくことを目指す営みであると説明することができます。

「経営」の概念

価値の創造:商品やサービスを開発する
価値の提供:顧客に商品やサービスを提供する
資本の創造:価値提供を通じ会社の資本を生み出す
資本の(再)分配:得た資本を適切に分配し、つぎの価値創造につなげる
※繰り返していくうちに取り組みは変化する

経営における「成長」の定義は様々ありますが、基本的には「会社資本の増大」を指します。(会社の資本とは一般的に「経済資本」「社会関係資本」「文化資本」「象徴資本」の4つに分類されますが、複雑になるのでここでは省略します。)

つまり「会社資本の増大」が経営者の目指すところであり、経営課題であるということです。「経営に入り込む」とは、経営チームの一員として責任を持ってこの課題に取り組むこと、と言えるかもしれません。

先程ご紹介した土屋さんのnoteでは「デザインリーダー」の評価軸として下記6項目挙げられています。

1.事業成長への貢献
2.顧客体験価値向上の仕組み
3.ブランド価値への貢献
4.リーダーシップ
5.組織開発力
6.カルチャー貢献

経営に入り込むデザインリーダーになるための示唆を与えるかもしれないnote より

これら6項目がデザインリーダーの評価対象の全てではないと思いますが、これら6項目は間違いなく「価値の創造」「価値の提供」「資本の創造」「資本の(再)分配」のいずれかに相当する・貢献する取り組みであることを見ても、このような背景があると理解して良いと思います。

資本増大につながる意思決定を支援する

また別の視点で見ると「経営者の仕事は意思決定」とよく言われます。ここでも注意したいのは「意思決定は目的」ではないこと、経営者が一体何を目指して意思決定しているのかという観点の理解です。経営者の意思決定の基準は至ってシンプルで「会社資本の増大につながるかどうか」です。

つまり「経営に入り込む」あるいは「経営者の側で仕事をする」際に重要なのはこの視点であり、経営者がこうした意思決定をしやすいようアドバイスや提案を行っていけばいい。まずは小難しい知識やスキルではなく、こうした根源的な課題にともに向き合う姿勢だと私は考えています。

ここで重要なのは、リソース・アウトプット・アウトカム・ベネフィットの原理を理解し自身の仕事のアカウンタビリティを果たすことです。それぞれを簡単に説明すると下図のようになります。

デザイナーが自身のアカウンタビリティを、アウトプットにおける「設計・制作意図の説明」だと考えているケースが非常に多いのですが、これは実は全然間違っていて、本来はアウトカムやベネフィットに関する説明責任を果たすべきなのです。「デザイナーが経営に入り込みづらい」という課題が生まれている原因はここにあると私は考えています。

この説明を行うのに、特段難しい理論や知識は必要ないはずです。「経営に入り込む」と考える時、まずは知識を身につけなければとか経営を学ばなければ、と思う人が多いように見えますが、実はそうではなく、上記の原理を理解し経営者の課題にともに向き合うのが第一歩であるはずです。

デザインリーダーとは何者か?

経営を続けていくうちに、先程挙げた「価値の創造」「価値の提供」「資本の創造」「資本の(再)分配」における課題はどんどん増加し複雑になっていきます。イメージとしてはこんな感じ。

1周目は粒度が大きく単純だった課題は、100周目になると小さく見えづらくなりどんどん複雑化していきます。「複雑になる」というのは、1つの原因がいくつもの派生課題を生み出しシステム化してしまう現象を指し、表面的でわかりやすい課題への対処ではなく本質を見極めた根本的な対応が求められるということです。

私はわりかしこの点が「デザイン」の得意領域だと考えていて
・根本原因や周辺の課題システムを特定すること
・原因を取り除くための人間中心なソリューション設計を行うこと
・ステークホルダーの認知行動モデルを変質させる働きかけを行うこと

こうした働きかけによって、複雑な課題を解決する役割としてデザインリーダーが重要だと考えています。こうした役割を果たすには、会社自体を大きな研究フィールドとして探索していく姿勢が重要です。

会社というのは「資本を増大させるための大きなシステム」であり、そのシステムの健全な設計と運用・改善を、経営者の側で支援するのがデザインリーダーであるはずです。あと、個人的にはこういうのを「デザイン経営」っていうのだと思う。エンタープライズデザインシステムマネジメントっていう領域名称もあるけど。(私は後者の方が好き)

まずは1周目を支援する

現在大きめの事業組織に所属しており、これからデザインリーダーを目指すのであれば、1週目=ベンチャーやスタートアップの0→1にジョインすることをお勧めします。経営者とともに会社の成長を作りながら、増大・変質する課題に対応し学び続けることが一番の近道だと思うので、挑戦できる機会があればぜひ取り組んでみて欲しいです。

という感じで、私が今年考えていたあれこれです。すごく単純に、あまり小難しいテクニックの話をせずに「経営に参画するデザイナーに必要なスキルは?」「どんな振る舞が求められ・どんな役割を果たすべき?」という観点を辻原なりに説明してみました。これは継続的に考えていくべきテーマなので、また気が向いたらnoteに整理してみようと思います。

では2023年も大変お世話になりました。
2024年も楽しみましょう!

Thank you! I love you.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?