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うちの猫が、ぼくの写真を撮れたなら。

もしもペットがカメラを扱えて写真を撮れるようになったら、すごくいい表情の飼い主さんの写真を撮ってくれるだろうと、ペットを飼ってもいないのにニヤニヤと想像してしまう。自分のペットに緊張はしないし、ペットのことが好きだからだ。
 
ちいさな子どもがいる親は子どもの写真を撮りがちだけど、子どもに写真を撮ってもらうのをよくおすすめしている。子どもが描いたヘタな似顔絵が宝物になるように、ヘタな写真も宝物になる。ペットも子どもも写真はヘタなんだろうけど、魅力が伝わるいい写真を撮ってくれるだろう。

『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』(「ヘタだけどいい写真を撮ろう」より)

 幡野広志さんのエッセイ『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』の一部です。
 
写真を積極的に撮られたい人はあんまりいないし、写真を撮られているときはたいてい緊張する。でも自分のペットや自分の子どもには緊張しないから、撮られている人はいい顔になる。そうすると必然的にいい写真になる、と。読んですごく納得しました。

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ぼくは3年と3ヶ月前から猫と暮らしています。
一緒に暮らすなら保護猫と決めていました。
お世話になっている西荻窪のギャラリー&ショップ・URESICA(めちゃくちゃいいお店!)のダイさんと鎌田さんに、猫の保護活動をしていらっしゃる方を紹介していただきました。
 
いただいた連絡先にメッセージを送ると、保護活動をしていらっしゃる方から写真と一緒にすぐ返事がきました。
 
「現在、私が保護中の猫で、里親の決まっていない子猫は、チンチラシルバーの3匹です」

ブリーダーの多頭飼育崩壊で、面倒を見切れない状態になったところを助け出された3匹。一番下の子は片目が見えなくなっていました(3匹ともぶじ譲渡済み)。

想像してた猫とぜんぜんちがう……!
正直、ちょっと戸惑いました。
 
でも会ってみるとめちゃくちゃかわいい。
かわいい。まじでかわいい。やばい。
会ってからずっとにやにやが止まらない。

3匹全員と会いましたが、ぼくが自然と目で追っていた男の子を譲り受けました。このとき生後およそ3か月。とても小さかった。 

名前は「まあすけ」です。
ぼくが会社に入ってはじめて通過した復刊絵本企画『くまのまあすけ』『まあすけのぼうし』(馬場のぼる 作・絵)のタイトルが由来です。「すけ」がついた名前のなかでおそらくいちばんのんびりしている感じがするし、なにより響きがすごくいい。顔を見て決めたのではなくて、保護猫を譲り受けようと考えたときからもう名前は決めていました。 

まあすけが家に来て、よかったこと以外ありません(油断すると毛が固まってフェルトっぽくなってしまってたり、服にかならず毛がついてたりすることはありますが)。帰り道に顔が思い浮かんで、早く会いたくなってちょっと走って家に帰る、なんてこともありました。

当初はiPhoneで写真を撮りまくっていた。でも、一緒に生活していることがふつうになってくるとだんだんと写真を撮る枚数が減っていきます。

そんなとき、幡野広志さんと写真の本を作りませんか、と声をかけていただきました。それから幡野さんの写真ワークショップに参加して、写真を撮る生活が始まりました。

ぼくには最高の被写体がいる!
あらためて、まあすけの写真をよく撮るようになりました。

ずっと抱きしめていたいくらい大好きだとしても、写真を撮るときは幡野さんの言葉を忘れません。猫にも敬意を忘れない。


友人や知人、同僚の子どもに話しかけるときにだいぶ口調が変わる人っていますよね。そんな人たちを見て「ふつうに話したらいいんじゃないか」と正直思っていたのですが(笑)、あれ以上のことをぜんぜんしてる。ぼくはうちの猫に対してそうとう恥ずかしい言葉遣いをしてる。自分でも想像できないようなだらけた表情もきっとしてる。

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話は冒頭の『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』の引用に戻ります。

まあすけがぼくの写真を撮ったら、ぼくはどんな表情をしているのでしょうか。

そんな想像をしてみるけど、あたりまえですが、まあすけがカメラを構えてぼくの写真を撮ることなんてできない。でもきっとこんな表情してるんだろうな、という写真を妻が撮ってくれていました。

写真を見せてもらったとき、「幡野さんの言う通りじゃん!」と思いました。こんな表情しているのか……。

いい写真だなあ、と自分の表情だけ見て思っていたのですが、まあすけをよく見ると、足を突っ張って離れたがってる。写真を撮るときだけじゃなくて、日常で触れ合うときも敬意を忘れちゃだめですね。



【お知らせ】
★幡野広志さんのエッセイ『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』が8月23日に出ました!
家族のこと、病気のこと、写真のこと、旅行のこと……1枚の写真とともに綴る、日常に寄り添った51のエッセイ。古賀史健さんとのロング対談も収録。

★11月に幡野広志さんの「写真撮り方の本」が出ます。
大好評のワークショップをベースに幡野広志さんが渾身の書き下ろし。詳細は追ってご報告いたします。

★幡野さんのワークショップはまだまだ続いています。
9月のワークショップまでは埋まっていますが、10月以降は順次開催される予定です。and recipe のHP(https://andrecipe.tokyo/store/5256/)や幡野広志さんのTwitterをチェックしてみてください。心からおすすめです!


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