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間違いだらけの顧客中心主義(16)〜「価値創造:商品・サービスの企画その2」

皆さんこんにちは。通販エキスパート協会事務局です。

当協会は文字通り「通販のエキスパート」を目指す方々に向けた資格「通販エキスパート検定」を実施しています。

前回は商品、サービスを価値や体験と捉えた際に押さえておきたい「3つの価値要素」のお話をしました。今回はある特定の重要顧客セグメントでそれらを具体化するにはどうしたら良いかについて考えたいと思います。

すでにこの連載も16回目で、しかも前回から時間が空いてしまったので「特定の重要顧客セグメント」と価値創造の関係についてお話してもピンとこないかもしれないので、簡単に振り返っておきます。

重要顧客セグメントを特定する=顧客戦略については、下記を再掲しますのでまず見て下さい。

◯顧客戦略の出発点:「顧客の異質性、多様性への理解」
 →顧客を一様に扱ってはならない。
  ある顧客にとって良い体験が、他の顧客にとっても良い体験とは限らな
  い。また収益性も同じではない。
◯顧客戦略策定:「顧客ポートフォリオ」の作成
 →顧客を資産とみなし、各顧客セグメントの特性にあった投資計画を立て
  る。顧客セグメンテーションを行うにあたっては、新規獲得から優良顧
  客化するまでのプロセスの違いに着目し、そのいくつかあるプロセスと
  の親和性の観点で顧客全体をいくつかのセグメントに紐付ける。
◯事業計画との連動:売上や利益の目標を顧客セグメントで表現する
 →どの顧客セグメントからどの程度の売上や利益を得るか計画し、各顧客
  セグメントの数字の合計は事業計画上の売上や利益の目標値と一致する

ここで、これまで自社を成長させてくれた顧客セグメントAと、ここ5年間ほどで急激に売上構成費が伸びてきた顧客セグメントBと、A、Bどちらにも属さない顧客セグメントCがあったとします。
(話を単純にするためにABC3つのセグメントにしましたが、多くの通販企業では、主に購買行動特性と収益性だけで判断したとしても4つか5つくらいの特徴あるセグメントに分割できるのではないでしょうか。)

そうしたら、このABC3つのセグメントごとに、
客観的価値要素:商品、サービスそのものの品質、価格、利便性
主観的価値要素:商品やサービースを通じて伝えたい価値観や世界観
関係性に関する価値要素:特別待遇、顧客理解に基づく的確なオファー
の提供方針を決定します。

この際、セグメント単位の売上・利益の合計=全社売上・利益になりますから、各セグメントの目標売上や利益も当然予算化するのが顧客中心主義の前提です。また中長期的な事業計画(3カ年計画など)を立てる際には、現在のABCそれぞれのセグメントの構成費を3年後にどうしたいかという「意志」も明確にしておきます。

そして、その事業計画に基づき、各セグメントにどのような価値や体験を届けることで、目標の売上、利益、セグメント間構成比を実現するか、上記3つの価値要素の観点で施策立案を行います。

例えば、スキンケア商品が主力の化粧品通販でごく単純なケースを考えてみましょう。ABC各セグメントの基本方針として下記のようなものがあったとします。

◯顧客セグメントA(現在の最重要セグメント) 
近い将来、顧客層の高齢化などに伴い、人数が目減りする可能性が高いの  で、提案商品の価格帯を上げることで一人あたりの収益の向上を図りつ  つ、専用ダイヤルなど特別感のあるサービスを提供して離脱を防ぐ
◯顧客セグメントB(将来の最重要セグメント) 
近い将来、セグメントAに変わって収益の柱になる(そう育てる)ことを 見越して、セグメントAとは違う戦略商品の提案と、スマホアプリやAIなど を活用した、高品質かつ低コストなコミュニケーションの方法論を確立す る
◯顧客セグメントC(顧客セグメントBへの育成セグメント)
顧客セグメントBへの移行を促す商品やサービスの提案を行う。 
しかし、顧客セグメントBへの移行の見込みが少ない顧客には相応に低い コミュニケーションコスト(定形メール、定形DMなど)で関係性を維持す る。

この方針に基づき、
「客観的価値要素」の観点では、それぞれの顧客特性からセグメントAはアンチエイジング、セグメントBには美白とポイントメイク、セグメントCには日焼け止めや洗顔料を戦略商品としてアピールするとします。

さらに「主観的要素」の観点では、セグメントAは「当該商品がラインナップ中、最高峰の位置づけである高級感、高機能感を追求しつつ、従来から大切にしてきていた環境保護の取組みも変わらず追求していることをアピールし、ブランドに期待されている世界観を裏切らない」、セグメントBは、「独自の美白成分などで差別化訴求をしつつ、デジタルマーケティング、屋外広告などでブランドを目にする機会を増やし、斬新さ、未来志向をアピール」、セグメントCには「商品の機能性の高さをアピールしつつ、アクティブに毎日を送る女性の毎日を応援するブランドメッセージを強調」します。

そして「関係性に関する価値要素」の観点では、セグメントAにはじっくり商品説明を聞いたり、簡易的なカウンセリングも受けられる専用コールセンターダイヤルの案内とともに、限定割引クーポンを案内し、セグメントBには専用スマホアプリをダウンロードすると肌診断が行えたり、AIが毎日スキンケアのアドバイスをしてくれるといったサービスを提供します。セグメントCにはオンラインストアでいくつかの質問に答えると、お勧めの商品が提示され、そのサンプルがもらえるキャンペーンを提供します。これは今後セグメントBへ効果的に誘導するための情報収集の意味合いも兼ねています。

以上は本当にシンプルな例ですが、それぞれのセグメントで異なる意図の価値や体験の提供を行う意味がお分かりになったと思います。

次回は、上記例にも少し出てきた、各顧客セグメントにおけるメディアやチャネルの活用方法について掘り下げてます。

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