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『翠』

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純文学を基調としたストーリーに、官能シーンを織り交ぜてみました。 スーパーで正社員として働く主人公である男性(健流)と、同じ職場でパートタイマーとして勤務する冴えない女性(翠)が…
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#オリジナル連載小説

『翠』 31

 忘年会当日、一〇分遅れで会場の居酒屋に到着した。  当日は雨が降っており、傘など持って…

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『翠』 30

 ひさびさに実家の母から電話があった。  若くしてわたしを生んでいる母は、今でも元気に暮…

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『翠』 29

 翌日、忘年会の件を矢代さんに伝えようと、バックヤードで品出しの準備をしている矢代さんに…

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『翠』 28

「なんで俺の言った通りにできないんだよ!」  そう叫んだ父の怒号が地鳴りのように家中にこ…

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『翠』 27

 その夜、旦那が帰るのを待って、忘年会のことを相談することにした。  ふつうであれば、な…

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『翠』 26

 少なくとも旦那への感謝の気持ちはある。  べつにパートと言ってもほかのパートさんみたく…

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『翠』 23

 右側の空間がスッポリと空いているせいで、ただでさえ大きいクィーンサイズのベッドが、いつにも増して広く感じられた。ここまで広いとどんなに寝返りを打っても、ベッドからは転げ落ちる心配はないが、シンプルに彼の臭いの染みついたベッドで寝たくないという、生理的に受けつけないレベルの拒否反応が働いてしまい、無意識にそうすることを避けようとしてしまっている。  極端にベッドの左端にからだを寄せ、布団のなかにからだを滑り込ませる。冷え性の足先が氷のように冷たく、ほとんど足先の感覚が感じら

『翠』 22

 もっと話をしていれば良かったのか。  さっき義娘に言われた一言が妙に気になり、何をして…

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『翠』 21

 母の家は道玄坂に面した渋谷の一等地にあり、通りに面したベランダからは、道路を行き交う車…

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『翠』 20

 母親が家を出て行ったのは、私が小学校二年に上がったころで、小学生に上がるタイミングでは…

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『翠』 19

「何それ? マジちょー、ヤバくな〜い?」  部屋に閉じこもったまま姿を見せない陽菜を呼ぼ…

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『翠』 18

 柔軟剤を買い忘れたことに気づいたのは、帰宅後に夕食の支度を済ませ、溜まっていた洗濯物を…

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