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【小説】おならの部屋

ごめんよ、屁ぇこいじゃった

いいわよ別に。テーブル隔てときゃ、におわないわよ
聞こえなきゃ、無いも一緒よ
あんた、正直者ねぇ。私だったら言わないわよ

でもさ、ここは2階の、広い部屋だからいいけどさ、
1階の、あの閉じた空間で、してしまったら
我慢ならないと思わないかい?

あぁたしかにそうねぇ
おならも行き場を失って
息絶えるまで孤独な気持ちだろうねぇ
くさいくさいって、みんなに言われてカワイソウねぇ

そうだ。1階に、まだ使っていない部屋があるだろう
そこを、おならの部屋にしないか
そうすれば、おならも、煙たがられる事なく、
最期まで楽しい気持ちでいられるんじゃないか

それはいい考えねぇ
おならも、家族だもんねぇ。毎日産まれる、家族だものねぇ
大事にしてあげましょ

部屋には、何を置けば喜ぶだろうか
消臭剤とかどうだろうか

あんた馬鹿なの。ほんとにおならの気持ち考えてるの
そんなの置いたら、自分の存在を否定された気持ちになるわよ
におうのが、彼らのアイデンティティなんだから
せめて花にしましょうよ
見ていても癒やされる。いい匂いもする。こんなに素敵なものは無いわ

ごめんよ、たしかにそうだな
うん、花にしよう
そういえば、おならって何を食べるんだろう

そうねぇ。もうすでに私たちの腸内で
食べるもんは食べていると思うけど、
ヨーグルトとかだったら喜ぶんじゃないかしら
腸内環境を良くするっていうし

あぁ、そうだな
それじゃあ、ヨーグルトを毎朝置いておこうか
あと、ごぼうもいいんじゃないか

そうね。安いときに買っておくわ
さっそく今日、あの部屋片付けて
おならの部屋、準備しておくから
あなた、今日も元気にいってらっしゃいね
気をつけて

ああ、ありがとう
帰りに花を買ってくるよ
喜んでくれればいいな
いってきます

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