【短歌】魔法使いになりたかった

今日の投稿は、短歌です(例によって前置きは長いですが)。

わたしが初めて短歌を作ったのは、高校生のときでした。たぶん。もしかしたら中学生のときだったかもしれないけど、とりあえず高校生ということにします。

作り手が全身全霊を込めた三十一文字から広がる世界や気持ちは清々しくて、三十一文字(多少の足し引きはあるものの)という限られた型にはめるからこそ、そこから言外に滲む色があり、また「余白」を想像する楽しさがあるものだと、子どもながらに感じていました(作り手の個性がはっきりとよくわかるところも面白い!)。

高校三年生のとき、縁あって他学年の国語の先生が「何とか流の短歌の先生」なる人に会わせてくださったことがあります。お名前を失念してしまったのは、全くもってわたしの不徳のいたすところですが、その先生はわたしに

「作り続けてください。ずっと、ずうっとですよ。
私の友人である歌人は、亡くなった日の朝も一つ歌を作ったそうです。
とにかくいちばん大切なことは、作り続けるということですよ」

と仰いました。

先生の言葉の重みは当時も今も受け止めきれていないかもしれませんが、なんとなくずっと心の奥底にあって、その影響か、大人になった今でもわたしは、ちびりちびりと短歌を作っています。

そういうわけで、せっかくnoteをはじめたので、今回は一部短歌の発表会をします。
短歌は、深く読み込まなくても、ちょっと目にしただけで「なんか好きだな」「あんまり好きじゃないな」ということがわかりやすい…はずです。

自由に作ったものなので、深読みするも浅読み(?)するも、好きも嫌いも微妙も、自由に見てもらえたら、とってもうれしいです。


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(十八歳までを過ごした故郷の冬に)
花が咲く季節にはまだ遠すぎて吐く息だけではとけない氷

恋人に包まれ眠るかのようなバスを降りたら雪の夕暮れ

息凍る真冬の夜を背負い立つきみの目に星唇に花

魔法使いになりたかった指抜きに驚いていたあの雪の朝

雪が降るただ雪が降るこの町に名のない花は香り続ける

(東京の冬を知りはじめる)
雪の降る日に生まれたこの命あなたの視線を欲しがる心

味噌汁を飲まなきゃ始まらない朝があることを知る微熱の冬に

「もう知らない」呟いてみても大根を煮過ぎた事実が消えない午前


(触れてはじめて知る気持ちに)
今までの悲しいことがほどけてくような気がした指を絡めて

重大な予言を一つするようにあなたの頬に指を這わせる

一人用ベッドの中でお互いの子どもの頃の話で笑う

つまらない人ね。会うたび「好き」と言う、真面目でつまらないとこが好き。

真っ白なひかりやわらかに頬を撫ぜいないあなたがわたしを守る

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長く続けることをモットーに励みます。