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日本人にこそ知ってほしい 「日本語」



読み方

暇な人:全部読んでください。
片手間で読む方:②から読んでください。
忙しい方:④だけでもいいので読んでください。

①日本人はみんな日本語を教えられる?

質問です。ある日突然、外国人*¹から「日本語を教えてください」と言われたら教えられますか。主語述語とか修飾語とか、外国人が知らなそうな言葉は使わないで教えられますか。

…多分無理だと思います。根拠は、日本人*²が日本語の裏にあるメカニズムを深く知らないことです。

*¹便宜上外国人としていますが、厳密には日本語非母語話者です。
*²便宜上日本人としていますが、厳密には日本語母語話者です。

では、「日本語の裏にあるメカニズム」とは何でしょう。ぱっと思いつくのは文法ではないでしょうか。文法は英語教育でも馴染み深いので、「言語のメカニズム」と言ったら文法を思い浮かべる人は多いと思います。ただし、文法だけ知っていても教えることは難しいです。学習者の発話を正しく評価したり、学習者に語と語の細かい使い分けを教えたりすることができないからです。前者は音声の知識、後者は意味の知識が必要です。さらに、第二言語習得論をはじめとする様々な分野の知識があって初めてスタートラインに立てるのが、外国人に日本語を教える日本語教育なのです。
※2024年4月から、日本語教師は国家資格になります。

②バイバイ、国文法。

ここでは、特に文法に焦点を当ててお話しします。皆さんは中学校で日本語の文法として、主語述語、五段活用、だろだってにだななら、などなど、たくさん覚えさせられたと思います。ちなみに、国語教育で教えられる日本語文法を国文法、学校文法と言います。

いりません、国文法。

詳細に日本語を分析すると、国文法の説明では不十分で、説明できない事柄が出てくることがあります。そこで、専門レベルで用いる日本語文法ではより実態に即した定義で用語を使用します。

最たる例は、語幹です。学校文法では、例えば「泳ぐ」の語幹は「およ」と習ったはずです。対して、日本語文法では「oyog」です。そうです、ローマ字です。なぜそうなるのか、実際に活用させながら確認しましょう。

<学校文法>
およ  が  ない 未然形
およ  ぎ  ます 連用形
およ  ぐ     終止形
およ  ぐ とき  連体形
およ  げ ば   仮定
およ  げ     命令  

<日本語文法>
oyog anai
oyog imasu
oyog u
oyog utoki
oyog eba
oyog e

気づきましたか。ローマ字にして語幹を再確認すると「oyog」になるんです。 また、語幹が子音で終わるので、子音動詞という新しい語も定義づけられました。子音動詞、母音動詞については後々紹介します。

③日本人は「日本語」を知らない。

ここまでの通り、日本人は日本語を一つの言語として捉える機会がほとんど与えられていないため、語幹という簡単な概念一つとってもここまで認識に穴があります。つまり、筆者が言いたいことは

もっと「日本語」を学ぶべきだ

ということです。日本の国語教育における国文法の扱いはおまけ程度で、内容も暗記に偏ったものだと認識しています。母語を俯瞰的にとらえることが、日本人のよりよい教育、よりよい教養に寄与するものだと筆者は考えます。

④まとめ

今回は、外国人に日本語を教えるためには、日本語の裏にあるメカニズムについて理解する必要があることを説明しました。また、国文法と専門的な日本語文法における語幹の考え方の違いから、簡単な概念ひとつとっても認識にずれがあることを確認しました。この認識のずれの原因は「日本語をひとつの言語としてとらえる機会がほとんどないこと」だと推測し、もっと母語教育を充実させるべき、という考えに至りました。

⑤注意

この文章は、「正しい日本語」が何かについて記述するものではありません。「日本語の実態についてとらえて、記述するものが日本語文法」というのが筆者のスタンスです。

参考文献

益岡隆志、田窪行則(1992)「基礎日本語文法・改訂版」くろしお出版
佐々木泰子(2007)「ベーシック日本語教育」ひつじ書房


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