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夫のIoT狩猟とイノシシ

ガシャーン! ガッシャーン! 罠が仕掛けられた檻には3頭のイノシシが捕らえられていた。檻を出ようと突進するイノシシ。猪突猛進。鼻は血だらけで痛々しい。プリプリのモモ肉を骨からそぎ落としながら、その光景がフラッシュバック。

「あのイノシシって親子だった?」

「あのイノシシっていうか、このイノシシだけどね。母親とオスの子どもとメスの子ども」

イノシシは母子で行動するらしい。まな板の上の肉は、自分の子どもたちと同じ兄妹構成。

自分がイノシシだったらと想像すると心が痛い。

捕獲されたイノシシ

 夫が罠猟の免許を取ったのは2021年の秋。その冬にイノシシを初めて獲ってから、1年で20頭近くを捕獲している。新人にしては好成績のよう。その秘訣は、IoTを使った自作の罠にある。罠にはセンサーとカメラを設置し、センサーが動物を感知するとスマホに通知が来るようにプログラムしてある。イノシシが出没する場所に檻の罠を設置し、餌付けして警戒心がなくなったイノシシが何頭か檻に入ったタイミンングで、スマホから入り口を閉めるので、多頭獲りができるのだ。

センサーとカメラを設置した罠

 IoT捕獲装置を作るきっかけとなったのは、隙間だらけの家に時々紛れ込むネズミを捕まえるためだった。センサーをつけ、入り口が閉まるタイミングをコントロールする罠で、よく捕獲できた。捕まえたネズミは、家や人里から遠く離れた場所にリリース。これがきっかけで、元地域おこし協力隊で猟師として数百頭の捕獲実績のある柏谷愁さんとIoT罠猟を本格的に始めたのだった。

 新鮮な猪肉は、臭みがなく、薪や炭火で焼くと、塩をふるだけで驚くほど美味しい。冬に獲れた肉は、脂がのって格別。脂身は苦手だったが、猪肉の脂はフルーティーな感じなのだ。そして、食べると体が温まる気がする。


猪肉のスペアリブ

ジビエは、肉の扱い方によって差が出てしまう。気温の高い夏場は、すぐに傷みはじめるので、川の水につけて冷やす。部位によっては、かたいので、何時間も煮込んでシチューやカレーにする。夫が猪肉で自家製ベーコンやチャーシューを作ってくれたのだが、最高にうまい。「これは、売れる」が夫の口癖。でも、実際には売れない。ジビエは、食品衛生のハードルがとても高いのだ。処理販売するには、設備の整った施設が必要になる。日本全国で、「害獣」として捕獲された動物の肉が活用されているのはほんの一部で、多くは埋められているそう。捕獲した場所から、鮮度を保ったまま施設に運ぶことが難しいからだ。ジビエは「知り合い」の小さなコミュニティでしか手に入らないので、つぎはぎ農園に来てくださった方には、ぜひ味わって欲しい。

猪肉チャーシューのラーメン

気の赴くままに色々と作る夫。DIYで、家の壁に穴を開け薪ストーブも取り付けたし、民泊スペースの蔵のフリーペーパー展示棚を作った。器用なのだ。若かりし頃はApple専門のパソコン修理や自作パーツ販売をしていた。パソコンを修理カスタマイズする時代が終わると、趣味のプラモデルを大量コレクションしていた。移住後は、ラジコンが増えていた。iPhone修理などをしながら、子ども向けにプログラミング教室を開いたが、コロナ褐で現在はお休み中。夫の道具類や趣味のグッズで家が溢れかえると、ケンカが勃発。「家計のことを考えて欲しい」が、私の不満で、「離婚」という言葉も簡単に口にする。しかし、自然の恵みを活用する暮らしは、ともに暮らす人、手を貸してくれる人がいるかいないかで、大違い。薪割り、畑、草刈り色々、田舎暮らしは、夫の手がないと成りたたないものばかりなので、今日もお互いの存在に感謝して暮らしていく。

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