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Podcastで白鳥さんのように鑑賞してみたい@アヴァンガルド勃興展 その1

『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真展』(東京都写真美術館 2022.5.20-8.21)

今回は3つの記事に分けて、上記の展覧会で感じたことをまとめたいと思います。

その1:「Podcastで白鳥さんのように鑑賞してみたい」
その2:「空間・モノクロ・題名・被写体が好き」
その3:「りんごとネジから考える写真」

展覧会についての公式Podcastがあると知る

この展覧会についてのPodcastがあることを、東京都写真美術館のTwitterで知りました。

(略)羊文学・塩塚モエカさんと藤村学芸員による「アヴァンガルド勃興」展をめぐるトーク。展覧会をご覧になっていない方ご覧になった方、まさに今見ている方、すべての方におすすめです

東京写真美術館公式Twitter

掲載されていた写真から、お二人が実際に展示を観ながらお話されていたことが分かりました。

東京都写真美術館公式サイト
Spotify, Apple Podcast, Google Podcastsのリンクがサイト内にあります

実はつい先日、『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』を読み終えたばかりの私は、「展覧会をご覧になっていない方」としてぜひとも事前に聞いて、白鳥さんのようにどんな写真なのかを想像してみたい!となりました。

さっそく聞いてみたのですが、お二人の会話から作品を想像するのは想像以上にむずかしかった…!

たとえば、

みんなが一つの方向に向かっている「日食の間」という写真があるのですが

羊文学・塩塚モエカと観る近代日本の前衛写真(前編)

と聞いて私が想像していたのは、5人くらいが丘から太陽をみている場面だったのですが、

画力…

実際は…

ウジェーヌ・アジェ《日食の間》1912年 東京都写真美術館蔵

大勢で街から見上げていて、日食自体は写っていなかった…!!

ちなみにアジェは、

「自分の写真を使ってもらうのは構わないけれども、自分の名前を出してくれるな」といったんです。彼は自分自身の作品のために撮影するよりは、画家や記録を保存する人のために撮っていた

羊文学・塩塚モエカと観る近代日本の前衛写真(前編)

のだそうです。私からしたら十二分に作品なのですが、実際にアジェの写真を観ていくと、他の人の写真よりやわらかい印象を受けました。それが、画家や記録を保存する人のためという部分の働きかもしれないと思いました。

Podcastで白鳥さんのように鑑賞するのは難しかったのですが、展覧会の構成や雰囲気なんとなくどんな写真があるのかどんな写真家さんの作品があるのかについて事前に知ることができたので、会場では安心して、でも十分に驚きながら、じっくりと鑑賞することができました。

このPodcastの内容が、目でよむポッドキャスト(書き起こしテキストと作品図版)として今は公開されてます!

そして…!!!

実際に白鳥さんと鑑賞しているラジオが

なんと私が訪れた数日後、「又吉直樹、目の見えない白鳥さんと写真美術館に行ってみた」というラジオが…!!!

なんてこった。このラジオを聞いてから訪れたかった…と思いつつ聞いてみると、どんな作品かを知ってしまっているからこそ、なるほど!となることがたくさんありました。

たとえば、この写真について。

小石 清《疲労感》〈泥酔夢〉より 1936年 東京都写真美術館蔵

又吉さんと川内さん(『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』の著者)は、3つの時計が11時8分を指していることに言及しています。

私はこの作品を実際に観て覚えていました。それにも関わらず、全くもって時計の時刻を把握していなかったことに気づいたのです。たしかにこの作品にはあまり興味が湧かず、食い入るように観てはいません。とはいえ、時計が浮かんでいるし、3つとも同じ時刻を指しているかなり印象に残る作品です。

白鳥さん曰く、一緒に鑑賞する人は、

場合によっては僕(白鳥さん)以上に一生懸命に作品を観てくれる

「又吉直樹、目の見えない白鳥さんと写真美術館に行ってみた」

のだそう。

誰かに伝える気持ちで鑑賞すると、作品の全体を見るより、作品の細かい部分を見るようになるのかもしれません。

特にシュルレアリスティックな作品は、不自然な物の組み合わせで画面が構成されているため、細部に注目することで、不思議な印象を作品全体から受けるだけで終わらずその正体にまで近づくことができそうです。

また、日常生活でもそうですが、美術鑑賞においても言語化することではじめて気づくことも多いのだと思いました。

まとめ

今回、作品を聴覚情報のみで鑑賞するということを、白鳥さんと全く同じようには実行できませんでしたが、

言葉から作品を想像してみる

という普段とは異なる鑑賞の仕方を体験でき、

作品の細部に注意を払ってみる

という今後試してみたい鑑賞方法を知ることができました。

おまけ

【ラジオ情報】
「又吉直樹、目の見えない白鳥さんと写真美術館に行ってみた」
再放送 NHK-FM 2022.8.17. 16:00-16:50
聞き逃し配信情報(〜2022.8.18. 20:55)

【余談】
以前記事にも書いたのですが、わたしは事前に少し予習をして、展覧会で答え合わせをする、という鑑賞の仕方が好きなようです。ちなみに白鳥さんは真逆で、背景を事前に知って「なるほど!」となりたくない、というようなことをおっしゃっていました!

以上です。その2につづきます。


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