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僕たちが見たくない現実

 最近は県内でも有事体制についてのニュースが多い。馬毛島での米軍訓練と自衛隊基地整備計画と、ここ鹿屋市への米軍の無人偵察部隊の一時展開についてだ。

 2002年に鹿屋市では、沖縄の普天間基地にある米軍給油部隊の鹿屋への移転計画がもちあがったことがある。鹿屋市ではその年に市長選があり、山下栄氏と相良宗一郎氏が戦った。そこでは両者が移転計画に反対を表明してこともあり、市長選だけでなく市民の中でも移転計画には反対という機運が、高まっていたようにも思う。
 現在はどうだろうか?僕は当時の新聞記事を調べ、そのとき反対運動も行った人にもインタビューもしたが、そのような動きや声は当時ほど大きくないように思う。
 
 最近はすっかりウクライナでの戦争で一色という感じだが、少し前までは尖閣諸島を中心とした、中国軍の行動には国際法上きわめて問題があるとして、日本政府は警戒を強めていた。昨年の10月には中国とロシアの軍艦10隻が津軽海峡を通り、太平洋からここ大隅海峡をぬけて中国に戻るというルートで日本の本州をほぼ一周したこともある。もちろん、軍事演習という名目であり、津軽海峡も大隅海峡も「公海」であるので国際法に違反しているわけではない。

 ここ鹿屋では一部の市民が「無人機部隊が配備されたら、真っ先に標的になる」と反対してるが、その人たちは沖縄だったら標的になってもいいのか?という意見にどう応えるのだろうか。あくまでも外交で問題を解決すべきとの考えがあることも承知しているが、中国軍の他にも、北朝鮮の核開発や最近のロシアの強硬な軍事的な展開についてはどのように考えるのか。

 国の専権事項だからと地方は置き去りされ、護憲にこだわり、自国を防衛するという当たり前のことすら議論できずに「標的になったらどうする!?」と声をあげる我々国民。勘違いしてほしくないが、僕はなにも日本はとにかく、軍事予算を拡大すればいいと言いたいわけではない。
 2004年には沖縄で米軍ヘリが墜落事故があった。その際に米軍が現場をおさえ、大学関係者はもちろん警察をはじめとした日本の捜査当局は現場には入れなかった。そのほかにも各地の米軍基地の制空権の問題など、米軍との片務的な関係については国をあげて議論する必要がある。

 多くの新聞やテレビ報道では、馬毛島や鹿屋市の偵察部隊について、地元の声を聞くようにとの論調とともに、環境アセスメントの重要性や、「地元が真っ先に狙われる」と反対している団体などの声を紹介している。もちろん、防衛省の進め方には強引さが目立ち、批判も必要だろう。だが、どうだろう。それは真の意味でこの問題を語ったことになるのだろうか。そもそも市民が反対したところで意味がないというような、我々が「見たくない現実」がそこにはないだろうか。

 国のことは地方自治体ではどうにもならない。そして自国防衛のことを護憲を理由に議論してこなかった国民、マスコミ、そして他国の軍隊に好き勝手させているこの国の形そのものに対する怒りと諦めのようなものを、僕はここ最近のニュースでは感じるのだが、読者のみなさんはどうだろうか。もうそろそろ、僕たちが「見たくない現実」ついて議論を展開する時期のように思うのだが、いかがだろうか。

(※この記事は南日本新聞社に書いたコラムを修正したものです。)


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