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コエダメカンタービレ第7話


ブルンッ!ドドドドダダ!!!

「これはぁー!聞こえるー?これはぁー!クラッチね!で、ここを!」

エンジン音で掻き消されそうな声を三谷さんが張り上げ
一輪管理機なる機械の使い方を教えてくれる。

「まず!見ててー!」

また大きな声をあげて、三谷さんと機械が一体になったかのように、背中が離れていく。
そして、またダダダダとエンジン音をふかしながら、こちらに戻ってくる。

じゃがいもの土寄せだ。

5月、空が高くなってきた夏も近づく頃、芽吹いたじゃがいもに土を寄せていく。

寄せるとは、土をかけるということで、土中にできたじゃがいもが表層に出て、太陽の光を浴びないように土をかけて、太陽から変色しないように守ってあげるのだ。

「じゃあ章ちゃん!やってみよーうかー!」
「はい!」
いつになく大きな声で緊張で体が固まる。
機械よりカチコチだ。

しかし、機械のエンジンの体に伝わる震動に負けないように「フーっ!」
息を吐いて、畝と畝との間を土を寄せながら通っていく。

もし、右や左に傾いてしまうと、畝が崩れじゃがいもを傷つけてしまう。
ダダダ震動と緊張に心を震わせ、一心不乱、集中力を高めていく。

「よしー!バッチリですね!」

三谷さんの倍以上の時間をかけて一列なんとか無事に土を寄せた。
あと20列は残っているだろうか。

気が遠くなるかと思ったら「じゃああきちゃんは草刈りね!」

まだまだ農家への道は果てしなく、遠い。

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