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コエダメカンタービレ第6話

梅雨。しとしとと続く梅雨ではなくて、聞きなれなかった「線状降水帯」と言う言葉がテレビから研修の朝聞こえてくる。

章子は雨になると、気持ちがどうも落ち着かなくなるようで、「はぁーっ」と強くため息をついては、ご飯茶碗片手に、憂鬱と不安を飲み込んでいた。

しかし、しばらくするとそそくさと5分もかけないで食べ終えた茶碗と箸を造作もなく置いて、食卓の脇に置いてあるスマホを見もしないで、左手にすっと取り、携帯に何やら書き込んでいる。

息を呑みながら打ち込む画面にはこう書いてある。

「今日は雨なのでお休みします」

研修生の身で自らスケジューリングをし出す章子。
しかし、そう言うものなのだと思っていたのだ、その時は。

社会に出たことのない章子にとっては、連絡をして断る それは精一杯の誠意だった。
しかし、後になって三谷さんに聞くと

「畑は雨でもあるんだよ」と言いたかった気持ちを必死に堪えていたと笑い話をした5年後の梅雨の日。

章子は、経営者になっていた。
もちろん、農業の。

その後、三谷さんに弟子入りをし、研修生となり、さらに輪っかのように繋がっている地域の農家、三件で手伝い、バイトに励み、約1000坪の土地を借りて、野菜を育てる有機農家になったのだ!

ここまでの三谷さんと章子の眩しく光る汗の日々は、また次回。

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