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コエダメカンタービレ2

章子はなかなか基幹作物を決められないでいた。
なぜなら、章子が研修をした農場は、野菜セットを組む少量多品目農家。


季節ごとに色々な野菜があり、
章子はその農家への憧れを捨てきれずにいる。

それに、少量ずついろんな野菜が植えてある畑は、いつみても美しかった。
あの時の光景が心に焼き付いている。
あの時の高鳴る感情が今でも頭に浮かぶ光景だけでふわっとよみがえる。

しかし、章子も起業3年目。
章子なりに、数々の失敗を繰り返し、そこから学び取ったものと、自分のやりたいこと、やりたくないこと、そして守りたいお客様、大切な人の存在に救われたりもした。

しかしまた、自分のやりたいことを見失い、
心が路頭に迷っていた時、ある言葉に出会った。

「育種(いくしゅ)」

それは、いつも情報を手に入れに行く種屋でのことだった。

「今年、秋のトマトを本格導入したいと思っています。」
「うん?トマトは夏だろう」
「はい、でも今年は遅らせて蒔いたんです。夏野菜なんだから、夏に蒔いた方がうまいだろう。そう思って。そしたら!11月に実をつけて、旨み濃厚、香りや緻密さが凝縮された、これはうまい!ってトマトができたんです。」
「そうか。」
種屋の主人がひとときの間を置いてこう言った。

「育種、やってみたらどうだ?」
「品種改良ですか?」
「うん。品種改良っていうのは、新しい品種を作るんじゃない、遺伝子を元に戻すということなんだ。その代わり、野菜を販売するか、育種家になるか、、、選ばなけれな行けないよ」


それからというもの
「育種か〜!全国の農家さんたちが自分の改良した品種を育てるのか・・・」

育種というものがどんなものかも知らずに、強い憧れを抱くようになった。

そして章子は、野菜の販売とともに育種の研究をはじようと考えた。

つづく

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