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Smartpay立ち上げて一年が経ちました!立ち上げ裏話。#SaaSLovers Day5

昨日は朝までW杯日本対クロアチアを見てしまって、きっとめちゃくちゃ眠い人が多いんじゃないでしょうか。ベスト8に進めず残念でしたが、2006年のW杯でクロアチアと対戦した時、FWの柳沢選手が決定的なチャンスにもかかわらず「急にボールが来たから」(のちに”QBK”と短縮され流布される)という名言を残してゴールを決められなかった頃と比べると格段に進歩した感があります。もうあと一歩でしたから。実は、僕はまさにその試合をニュルンベルグスタジアムのゴール裏で観戦していて、ガチで絶望した記憶があります。ほんとにゴール前ガラ空きでしたから。。。結局引き分けた試合で、試合後の駅までの道をクロアチアファンも日本ファンも見た試合の意味をどう捉えればいいのか考えながら静かに歩いていました。思えば、なんとその時モドリッチは20歳だったんですよね。そこからいまだ現役で国の代表選手やってるってほんとすごい。

微妙な雰囲気の試合後の電車内

自己紹介

さて、こんにちは。大坪直哉です。Smartpayという手数料無料で3回分割払いができるサービスを提供する会社でMD&CROをやっています。スイーツのモンブランが好きすぎて、日本モンブラン協会を立ち上げて日々日本中のモンブランを食べ歩くのが趣味だったりします。
https://japan-montblanc-association.org/

このnoteの意味

さてさて、実はこのnoteを書いてる今日がSmartpayに入社してちょうど2年目の初日になります。ありがたやありがたや。

Smartpayに入社する前はAppsFlyerというイスラエルが本社の会社でカントリーマネジャーとして働いていました。その前もCriteoというフランスが本社の会社で、基本的にずっと外資で働いていました。なぜ外資から国内企業に転職したのかという話は前回のSaaS Lovers企画で書いているのでそれを読んでいただくとして、今回は初めて国内企業で起業フェーズから関わることになりました。

前職ではカンマネとして日本のビジネスをゼロから立ち上げたのですが、当然のことながらプロダクトを作ることからやる「起業」は日本ビジネス立ち上げとはいろんな意味でレベチだなということがこの1年で体験的に理解でき、その1年で起こった紆余曲折を文字で残してシェアすることは、今後のキャリアシフトを考えてる方々にも有益なんじゃないかと思い、そのテーマで書くことにしました。

Smartpayって何

僕たちSmartpayが提供するのは、手数料無料で3回分割払いができるサービスです。クレジットカードが銀行口座をSmartpayのアカウントと紐付けて利用します。自動で支払いが完了するので、支払いするのにコンビニに請求書を持って行って払ったりする必要もなく、支払い忘れもないので安心して使えます。プロダクトアウトしたのが今年の3月なんですが、すでにJUNやYAMAP、ゼロハリバートンなどの大手ブランドをはじめ様々なブランドで導入されています。

一般的に、僕らのようなサービスをBNPL(”Buy Now Pay Later”=「今買って後で払う」という意味)というのですが、日本国内には複数社BNPLを提供している会社があります。それらをマッピングしたのが下の図です(この図を作ったのは僕なんですが、日本流通産業新聞にインタビューされたときに見せたらめちゃめちゃ気に入ってくれて、その後彼らのBNPL関連の記事にもほぼこのまま採用されてます)。

BNPL事業者を4象限に分解した図

日本初の包括的BNPLサービス

興味深いのは、ほとんどの事業者が左下の象限にカテゴライズされる、つまり現金払いで一括払いのサービスだということです。一方、Smartpayは既存のBNPLと全く異なり、クレジットカードや銀行口座から3回分割払いを自動で行います。Google PayやApple Payとも連携ずみで、どちらを使っても手数料なしの3回分割払いが可能です。手数料がかからないなら、分けて払ってもいいかもってことありますよね。

4つの支払い方法で手数料無料の分割払いができます

例えばこんなことってありませんか?

冬が来るのでダウンジャケットを買いたいなと思い、とあるアウトドアブランドのサイトに行ってみて価格をチェックしたら6万円もする。「予算オーバーやん」と落胆して、本当は好みでない別ブランドの4万円のダウンジャケットを買うことになってしまった。

ダウンジャケットは冬の間毎月使う訳で、かつ毎月違うダウンジャケットを買うわけでもないので、もし手数料がないのであれば冬の3ヶ月に渡って2万円ずつ払うことができれば、欲しいダウンジャケットも買えるし、資金繰りもコントロールできるので言うことないですよね。それができるのがSmartpayなのです。そして結果的に導入企業様の平均購入単価はなんと40%以上向上しています(実績値)。物を買うとき、人はその物の価格そのものよりも、その月の使える予算に対する比率で購入の意思決定をしてるんですね。なので手数料無料の分割払いにすることで、「じゃあこれも一緒に買おうかな」「本当に欲しかったこれにしよう」という心理的変化が生まれ、平均購入単価が上がる訳です。

こんな素晴らしいサービスなのですが、実際にはここに至るまでに様々な困難が待ち受けていたのでした。

オフィスがない!

オフィスがない!というのは大袈裟な話ではなく、本当にありませんでした。登記に使っていた住所はバーチャルで、そこに実際に使えるオフィススペースがある訳ではなかったのです。なのでまずオフィス探しから始めました。マーテクやアドテクの場合、関連企業の集積地は渋谷や恵比寿あたりだと思うのですが、フィンテックの場合、監督官庁との対話も非常に重要なことからもう少し霞ヶ関よりがいいということで、当時まだできてまもなかった虎ノ門ヒルズビジネスタワーにあったCIC(ケンブリッジイノベーションセンター)に入居することになりました。とても気に入って使っていたのですが、その後同様にレギュレーションがらみで情報管理の観点から自社オフィススペースでないといけないということになり、CICを紹介してくれた元Facebook初代カンマネの児玉太郎さんにお礼の気持ちを込めてCIC退去の旨の電話をしたところ、なんと虎ノ門ヒルズすぐそばに児玉さんが代表を務めるAnchorstar所有のビルに空きが偶然できたとのことで、誘われて行ってみたところ、周辺のビルと全く違うソーホー的な雰囲気に一目惚れし、入居を即決することになりました。最初はデスクも何もないスペースでしたが、そこに少しずつデスクやテーブル、ソファーなどを買い足し、そんなに豪奢ではないにせよ快適なオフィススペースが出来上がっていきました。

入居当時の僕らのオフィス。今はソファとかフォンブースとかも増えている。

ひろゆきさんとの出会い

入社して3ヶ月ほど経ち、プロダクトもようやくリリースできそうな見込みが立ってきました。そのタイミングで、自社の製品の認知度向上に寄与してくれる、いわゆるアンバサダーを探し始めました。そうはいってもマーケティング予算もそれほど潤沢にある訳でもなく、また製品の方向性からも単純にモデルやアイドルに製品説明してもらうというのも違うと思い、もっと自分の思いでプロダクトについて語れる知性と信頼性があり、かつ少額の予算でコラボレーションしてくれる人を探し始めました。

実はここではお名前を上げることができない著名な方にもOKをもらったりもしたのですが、まだSmartpayの無名のフェーズにはマッチせず、若干ストール気味だった時に、僕の友人がABEMAでひろゆきさんと共演するという話を聞いたのです。聞いて即、その友人にひろゆきさんにSmartpayについて頭出しをお願いしたところ、収録後に友人がSmartpayのサービス概要を軽く説明してくれて、もうちょっと話を聞いてもいいよとのことになり、メールでの数回のやり取りののち、CEOと僕でフランスにいるひろゆきさんとビデオ会議を行ったのです。説明ののちひろゆきさんには「手数料を消費者から一円ももらわない」という弊社のビジョンやプロダクトの方向性に共感いただき、アンバサダーとして就任していただくことを快諾いただいたのです。ビデオ会議からひろゆきさんが退出されたあと、CEOと僕は文字通り叫びまくって喜びまくったことは言うまでもありません。

実はひろゆきさんとのコラボレーションはすでに数回に渡って行われており、うちのオフィスにも来日時に来てくれて深夜2時までディスカッションしたり、対談動画を撮ったりしています。先日より渋谷にあるビックカメラ横の愛ビジョンでは、そのひろゆきさんと僕の対談ショート動画も流れ始めました。今月発売される某有名雑誌にもひろゆきさんをフィーチャーした素敵な広告が掲載されます。

PMFが実現できてない!

みなさんは有名なブランド同士のコラボ商品などをオンラインで見たり購入したりしたことはありますか?そういう商品って大体人気で、そのため実際の発売前に購入を予約できる形で販売されるケースが多くあります。そのためには予約時にお客様の情報をトークン化して保存し、実際に商品が発送される段階ではトークンを利用して与信確認(本当にお客様が指定した方法で支払いがされるかの確認)を行なうため、お客様が発送時にわざわざ自分の情報を入力する必要がないのです。この機能を「トークナイゼーション」というのですが、実は僕らがオンラインで何気なく行なっている予約商品の販売にはこういった機能が使われているんですね。

EC事業者によっては予約商品の販売比率が20%程度ある場合もあり、このトークナイゼーションは決済システムとして必須な訳なんですが、何を隠そう当初Smartpayにはこの機能がありませんでした。

僕が入る前のSmartpayはプロダクトチームしかありませんでした。プロダクト開発には時間がかかる訳ですから、エンジニアを採用してプロダクト開発から始めるのは当然なのですが、そこにGTM(Go to Market = マーケットに製品を届けていくチーム)がいないために、マーケットのニーズを完全には把握できておらず、そのためSmartpayが提供する機能とEC事業者が求める機能に差が出てきてしまった訳です。いわゆるPMFしていない状況です。もしかして他のエンジニアドリブンな企業には同じようなケースが発生しているかもしれません。

元々うちのCEOを含めたエンジニアの多くはPaidy出身なんですが、実はPaidyにもトークナイゼーションの機能はないんですね。なのでそもそもそういう機能が必要という理解も経験値もなかったのではというのが僕の推察なのですが、がしかし、GTMとしてはこの機能を有しているかどうかというのは死活問題。エンジニアチームと何度もディスカッションして、お客様からもフィードバックをもらいつつ、製品を作り上げていきました。今では予約商品にも余裕で対応できるようになりました。

エンジニアチームとGTMチームの対話チャネルがない!

上記の問題もそうなのですが、基本的にエンジニアチームとGTMチームの対話チャネルがなかったことがPMFを実現できていない原因でした。それも当然です。なぜなら僕の入社以前はエンジニアチームしかいなかったわけですから、何もシェアする必要はなく、エンジニアドリブンで色々決定すればよかった訳です。なので入社当時はいろんなプロダクトアップデートがGTMに知らされずに行われたり、もしくは予定していたプロダクトアップデートがいつの間にか延期になったりしていました。

MDとしてここは全く看過する訳にいかず、CEOも巻き込んで両チームの間で情報を共有し、またリクエストを行うCross Functional Teamという会議体を立ち上げ、その中で互いのプランとそれに関連するリクエストを定期的に共有するようになりました。するとそこで様々な議論やアイディエーションが行われ、それがプロダクト開発に繋がるようになってきました。

経費精算ができない!勤怠管理もない!

経費精算ができるようになったのもつい最近です。ここまでいくら自腹で払ってきたことか。。。他にも勤怠管理システムや就業規則の作成など、HR関連でも山のように実現すべきものがありました。コロナ禍を背景としてオフィスに出勤することもあまりなかったというのもこの辺りが後回しになっていた理由の一つではありますが、こういった一般企業であれば当然のものも確実に一つずつ潰していきました。

そうこうしてるうちに1年が経ちました

出会った困難や課題はもちろんこれだけではなく、全部書いてると多分誰も読んでくれないようなボリュームになるほどですが、そんな状況であっても自分達でプロダクトから立ち上げるってほんと楽しいんですね。それをどう世の中に伝えていくかを考え、実際にそれが少しずつ世に出ていって、EC事業者様にも採用が進み、消費者の皆さんにも数ある決済サービスの中から選好されていく。そういったサービスの浸透を見ると、どんな困難もへっちゃらというか乗り越えられますよね。

過去の話はこのくらいにするとして、ここからは少し未来の話を。

先に書いたようなCross Functional Teamでのディスカッションの成果のおかげで、2023年は様々な企画を実現していきます。一つは実店舗へのサービス展開です。今まではオンラインでのみSmartpayのサービスをご利用いただけたのですが、オフラインでも手数料無料で3回分割払いができるようになります。また6回払い、12回払いも登場します。より高額な商品を販売されてる事業者様からずっとリクエストされていたことなので、サービスリリースの計画が現実化している今、僕としても非常にワクワクしています。

まとめ

広告予算もなく、ブランド認知度もない中、どうやって導入いただける事業者様を増やしていくかというのはガチで大変なことです。しかし、だからこそやりがいがあるというもので、知恵を絞って少しずつエコシステムを拡大してきました。

今起業を考えていたり、外資から国内企業への転職を考えてる方がいらしたら、ぜひこのnoteに書いた裏話的ストーリーを読んでいただき、少しでもお役立ていただけたらそれ以上の喜びはありません。

なお、#SaaSLovers とは有志でSaaSに関するブログを書く企画です。今回で6回目となり、今までで110記事くらい上げています(noteでは70記事程度をマガジンにまとめています)。僕の次はasaiさんの「ハンズオン支援する側から見た『ユーザーインタビュー』の重要性」というnoteになります。

ユーザーインタビュー、めちゃくちゃ重要ですよね。僕もうちの会社で何回もやっているので、このテーマ非常に興味があります。早く読みたい!(と勝手にプレッシャー笑)。

これからも面白いnoteが続きますので、ぜひフォローしてみてください。

それではまた!


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