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無重力グラス

ジェットコースターで急降下する時の身体が「ふわっ」と浮く感じ。
物理的には乗り物に乗っている状態だが
無重力で一瞬、決して離れることの出来ない(離れたいと望んでいる訳ではない)地球から離れた感覚に陥る瞬間が好きだ。
本当は身体が浮いているが、感覚的には心が浮いて軽くなる感じ。
この感覚が分かってくれる人もきっといると思っている。

ジェットコースターは非日常での時間の話だが、日常でもこの感覚を擬似的に味わうことができるのを私は知っている。
それは、うすはりのグラスを持つ瞬間だ。
持った瞬間に脳内で想定している重さがないことを感じ、脳内がバグる。
そして自分自身もまたふわっと浮かんだような気持ちになる。
2回、3回と持つとこの感覚は薄れていくのだが、はじめての驚きや
時間を空けると、また新鮮な気持ちでこの感動を味わうことができるのだ。
この合法的に心が飛ぶ感覚から、僕の中ではこれを
「うすはりグラス」ではなく「無重力グラス」と呼んでいる。

「飛ぶ」と言ったら某番組で某元プロレスラーが帆立を食べた時の
「食ってみな飛ぶぞ」が有名だが、このグラスは個人的に
「持ってみな飛ぶぞ」と言える。いや本当に。

なぜ唐突にグラスの話をしたかというと、先日の取材で、このグラスでお茶を出してもらうことがあったからだ。
持つ瞬間にテンションが上がり、心臓の鼓動が早くなるのが分かった。話してみると取材先の方も最近購入されており、感動を分かち合うことが出来たことも嬉しかった。

”Less is more(少ない方が豊かである)”も有名な言葉だが
本当に良いものは見た目以上に、軽さや薄さに驚くことが多い。
作り手の技術を感じ、今までの常識を疑うのだ。

これだけ熱弁すると、さも毎日使っているように聞こえるかもしれないが、我が家での使用頻度は低い。
先にも話した通り、日常的に使っていると感動が薄くなってしまう気がして使えないのだ。
ではどんな時に使うかというと「心を浮かせたい時」である。
嫌なことや辛いことがあった日、なんとなくで1日が終わってしまいそうな日に、食器棚からこの無重力グラスを取り出す。
「いろいろあるけど身軽に行こうぜ!」と心の中で自分に声をかけて
飲み物(特にビールがオススメ)をグッと飲み干すと悩みや不安、つまらなさも「ふわっ」と宙に浮いて消えていく。そんな気がしている。

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