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ジョニー・デップに通底する易経の教え

私は現在10歳2ヶ月になるチワプーのわんちゃんと暮らしています。彼が心臓などいくつかの大病を患っていることが判明したのが、昨年11月。その後、運よくたどり着いたのが薬膳のドッグフードでした。不安で不安で仕方がなかった日々が、薬膳と出会えたことでとても心強い味方を得たような気持ちになりました。幸いにして今は、以前と変わらず元気に平穏にシニアライフの日々を過ごしています。実はこれを契機に、この4月から薬膳の専門学校に通い始めました。易経、陰陽学、中医学、経絡・経穴など関わりのある様々なことに学びを広げている最中、映画『MINAMATA』と出会いました。自分が進んでいる道は間違ってないことを確信している次第です。

日本の高度経済成長期の裏側で、多くの方々の命と人生が犠牲となった公害問題の一つ、水俣病問題。公害ではなく、明らかな人災であり、いまなお被害を訴えている原告の9割が水俣病の認定を受けていないという。この映画ではアメリカ人写真家ユージン・スミス氏とその妻アイリーンさんが、水俣病問題に焦点を合わせ鋭く真実に突き進んでいく。

主人公のユージン・スミス役にはジョニー・デップ。そしてその妻のアイリーン役には女優の美波。正直な気持ちですが、こんなに映画の中で英語の台詞回しができる日本人がいるんだなと、感心してしまいました。今まで観た日本人俳優の方の中でも抜群に素晴らしかったと思います。私のような通訳者やビジネスマンの方など、英語を話す人間は数多います。しかしながら、映像の中で英語で伝え演じるという行為はまったく別次元でしょう。また水俣病患者役を演じた青木柚。先日映画『うみべの女の子』を観たばかりでした。中学生の男女の心の葛藤や性への衝動が波のように押し寄せてくる。この時の演技が記憶に刷り込まれていたので、映画『MINAMATA』を鑑賞している時にはあの人が青木さんだとまったく気づかず。後日ネットで話題になっている記事を見て、大変驚きました。決して私は演技の専門家ではありません。けれど、青木さんはきっと演技をするために生まれてきたんだろうなと、映画の映像を思い浮かべるたびに思います。本物がギュッと凝縮された映画です。

映画『MINAMATA』前にこちらの2つの作品を鑑賞。

水俣病問題をドキュメンタリー映画として後世に残してくださった、土本典昭監督。何かの発想で、こんな映画を撮ってみたいなというような存在の映画ではなく、絶対に記録として残さねばならなかった映画。それがこれら2つの作品です。ワイズマン監督や想田監督のような、あるがままの状況を伝えている映画だと感じました。事実が「真実」に。もちろん、いかなるドキュメンタリー映像も編集が入るため純度100%の真実は当然あり得ないと思います。しかしながら、その地点に向かって邁進し心血が注がれた作品からはとてつもない発信力があり、観る側の受け取る度量の器を大きくしてくれます。断言できることは、この2つの作品を鑑賞できたことは、映画『MINAMATA』の内容を理解する手助けになっただけでなく、水俣病という残酷な問題が自分のこととして受け入れることができたことです。


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映画公開前に購入したのがユージンさんとアイリーンさんによる写真集の復刻版。熊本の思想社に注文していち早く手に入れました。この作品がユージンさんの遺作となったそうです。写真と共に紡がれている言葉の数々は、ユージンさんの水俣病にかかわる全ての方々に対する思い、そして世界中への呼びかけでもあり「警告」のようにも感じます。およそ60年前に発売され、世界中に環境問題という存在を知らしめたレイチェル・カーソン著”SILENT SPRING”(日本語訳:『沈黙の春』)とつながります。

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写真集の隣にあるのは、映画のパンフレット。その中にジョニー・デップのインタビューがあるのですが、その中でジョニーが易経でもって水俣病をとらえているのです。易経64卦のうち9番目の風天小畜を紹介していました。冒頭にも書きましたが、現在薬膳と合わせて易経も学んでいる私。それゆえに、なぜアメリカ人のジョニーが易経の存在を知っていてしかも深く理解をしているのか、あまりの偶然にとてもびっくりしたのと同時に、自分の学びが間違っていないことを確信することができました。易経、陰陽学、中医学の考え方には整体観念というものがあります。一部分が全体とつながり、またその逆も然り。すべてのことは目に見えない糸で繋がっていて、一つになっている。水俣病の問題は、この世界に存在する人、もの、出来事すべてに繋がっているということなのです。ちなみにジョニーが易経に大変精通していることは以下のYouTubeをご覧いただいてもよくわかります。先日アイリーンさんを交えた討論会の模様が公開されていましたが、その最後の部分でジョニーが語る言葉こそ易経そのものだなと感じます。ぜひご覧ください。

この討論会をライブで拝見することができコメントでも書かせていただきましたが、ユージン・スミスさんの存在、写真集の存在、そして映画『MINAMATA』があることが、過去の悲劇を現在に繋げてくださり、しっかりと受け止めることができていることを強く感じるのです。またそれ以上に、これから先の未来、できれば近い未来であって欲しいのですが、この映画が高く評価され水俣病で人生を破壊されてしまった方々の切なる思いが「亨る(とおる)」ことに繋がっているのです。そのためにも私は映画『MINAMATA』を支持します。それが水俣病問題について「時中」することにつながると信じているから。

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