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シロが教えてくれたこと

#シロとの出会い #奇跡#絆#子育て#親子#成長#育児#命

8.みさとシロの日常

「あ〜なんで雨なの?」
みさの残念そうな声が聞こえてくる。

最近は、なんだかお母さんの話し方や声まで似てきて親子なんだなぁと感じる。

なぜ、みさが肩を落としたかと言うと、今日は楽しみにしていた遠足の日だったから。

お弁当を持って、少し離れた自然豊かな公園に行くだけかもしれないけど、みさにとってはずっと楽しみにしていた日。

それもそのはず。
今までは、満足に幼稚園にも行けず、友達も居なかったみさにとっては初のイベントだから。

「はぁ〜」
と今度はため息がこぼれる。

そんな様子をお父さんが遠くから見守っていた。
成長したみさを見ながら、シロに話しかけていた。

「シロほらみてごらん?みさちゃんがため息ついてるよ。みさちゃんを励ましてあげて。」

寝坊助のシロにしては珍しく今日は起きていた。

シロは雰囲気から状況を察してか、みさの足元にすり寄っていった。
「にゃ〜」
と鳴きながらみさをじっとみつめる。

「シロには私の気持ちわかんないよ。ずっとずっと楽しみにしていたのに。ももちゃんやはなちゃんと一緒に遠足だよ。わかる?」

みさの機嫌はおさまらない。
そんな様子を見ていたお父さんが、いつものように冷静な口調で話し始めた。

なんせ、パワーのある女性に囲まれているからお父さんくらいは冷静じゃないと家庭がまわっていかない。

「みさ、少しいいかな?」
とお父さんが、みさに話す。
みさも、
「はい。」
と返事をする。

「確かに楽しみにしていた遠足が行けなくなったのは残念だし、その気持ちはわかるよ。」

「でもね、お母さんは朝早起きしてね、みさが喜ぶお弁当を作ってくれたんだよ。シロだって、みさを一生懸命に励まそうとしてくれたんだよ。そういう家族の気持ちにやっぱり感謝しないといけないよ。」

そうお父さんが話し終えると、お母さんがみさにお弁当を渡してくれた。

「はい、お弁当よ。みさちゃんが喜んで食べてきてくれたらお母さんは嬉しいんだけどなぁ。」
「あとね、今日は雨だから傘と長靴を玄関に用意してあるから早く見てきなさい。ほら、早く」
なんだか、今の『早く』の響きはいつもと違って心地よい。

みさはお弁当を抱えながら玄関まで走った。

「わぁ〜私がほしかったのだ。ももちゃんやはなちゃんが持っていて同じのが欲しかったの。」

嬉しさのあまり飛び跳ねるから、
「みさちゃん、お弁当、お弁当。」
とお母さんから注意が入る。せっかく季節を感じるお弁当にしたのに、幼稚園に行く前からぐちゃぐちゃになってしまったら、お母さんの苦労は水の泡。

みさはお父さん、お母さんの方に駆け寄っていき
「ありがとう。嬉しい。お父さん、お母さん大好き。」
と抱きついた。

そして、シロにもさっき冷たく当たってしまったことを謝ろうとシロを呼んだけど、なんとシロはまた夢の中。

きっと、みさからの自慢話を恐れて寝てしまったのかな?

「シロは本当によく寝るね、シロさっきはごめんね。」
と言ってシロを優しく撫でた。

そうこうしている間も時計の針は時間へと近づく。

「大変大変、みんな出かける時間だから、早くご飯食べて。早く」
いつものお母さんの
「早く」
が始まった。

やっぱり、さっきの『早く』の方が心地よい。

みさは今日の朝のことをこう感じていた。

雨が降って遠足に行けなかったことは残念だけど、発想をかえてみると良いこともあるんだね。

家族のあたたかさや家族への『感謝』に気づくことができたから。

ねえ、みんな、雨も悪くないね。
いいものね。

そう心の中で話しながら新品の長靴を履いて玄関を出た。
空に目をやり降ってくる雨を眺めながら、新品の傘をサッと開いた。

もも色の傘が、みさの顔色を一段と明るく際立たせているような、傘もみさを包み込み応援しているような。

さあ、今日も気をつけていってらっしゃい。


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