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進化論に学ぶ!変化する環境でのマーケティングの生存戦略とは?

面白くて眠れなくなる進化論 (長谷川英祐) という本が、タイトル通りおもしろかったです。


今回はこちらの本を入り口に、生物の 「進化論」 からマーケティングへの示唆として学べることを掘り下げます。


生物の進化の奥深さ

書籍 「面白くて眠れなくなる進化論」 は進化論の入門書のような内容です。

ダーウィンの 「種の起源」 などの進化論のこれまでの歴史、進化論の現在、今後の発展の方向性や可能性をわかりやすく学べます。

いくつかおもしろいと思ったポイントをご紹介します。

自然淘汰と適者生存

進化論における重要な概念は 「自然淘汰」 と 「適者生存」 です。


✓ 自然淘汰

  • チャールズ・ダーウィンが提唱した進化論の中心的なメカニズム。生物種の進化は環境に対する自然な適応の結果であるという考え方

  • 同じ種の中でも、遺伝的な変異により異なる形質を持つものが現れる

  • 自然淘汰では、その環境に有利な形質を持つ生物が生き残り、次世代に引き継ぐとされる。種全体として環境に適応した形質が増え、進化していく


✓ 適者生存

  • 適者生存はダーウィンが進化論を説明する際に用いたフレーズで、"survival of the fittest" と表現される環境に最も適応した ("fit" な) 個体が生き残ると捉える

  • 適応とは、個体がその生存環境にどれだけ適合しているか、またはどれだけ多くの子孫を残せるか

  • 適応度の高い個体が生存し繁殖することで、種全体がその環境に生き残る

自然選択の過程と結果

進化の過程は、その生物が最も完成された形 (最終ゴール) に向かって一直線に進むものではありません。

たとえば、鳥は飛行する能力を最終的に目指して進化したわけではなく、鳥の祖先がその時々の生存環境に適応し続けたことで、翼などの飛行を可能にする身体的能力を徐々に獲得しました。その行き着いた先に、現在の鳥は飛行できるようになったと進化論では考えます。

あらゆる適応は環境に応じた形で生じ、今できることの中から最善の策をとり、その環境で生き残ろうとした結果として生じるのです。

短期より長期的な生存の優先

進化論において、短期的な成功と長期的な存続性という2つの視点がおもしろかったです。

たとえば、ある捕食者は被食者をいち早く見つけて食べる能力が高い場合、この捕食者は生き延びることに成功しているように見えます。

しかし、長期的には食べ尽くしてしまうため被食者が絶滅し、捕食者自身も生存が危ぶまれます。一方、被食者の一部を意図的にではなくても逃す捕食者は、短期的には劣るように見えますが、長期的には生態系全体が存続するでしょう。

生物は、短期的な利益よりも長期的な生存を優先する形で進化する傾向があります。

適応は、必ずしも最も効率的な選択肢を選ぶとはかぎりません。環境、生態系全体、そして時間の流れの中で、それぞれの生物が短期的には非合理でも、時には遠回りで変化してきた結果として、今日の生物多様性が存在するのです。

マーケティングへの示唆

ここまで見てきた進化論からは、たとえばビジネスや会社内の組織、さらにはビジネスキャリアにも示唆があります。

進化論からマーケティングに学べることとして、以下の4つの切り口で掘り下げていきましょう。

✓ 進化論からのマーケティングへの示唆

  • 適応と進化

  • 多様性からのリスク分散と生存確率の向上

  • 長期的な存続

  • 生態系全体の活性化

適応と進化

市場やお客さんを取り巻く環境は常に変化します。お客さんの価値観、ものの見方、感情などの心理面が変化すると、それに伴い行動や習慣も変わります。

マーケティングでは、市場の変化にどれだけ敏感に対応できるかが持続可能な成功へのカギを握ります。

新しい技術の導入、情報収集と分析からの市場トレンドのキャッチアップ、変化する顧客ニーズへの対応、組織全体での柔軟性など、変化する環境にすばやく適応する組織や企業こそ進化し、生き残ることができます。

多様性からのリスク分散と生存確率の向上

生物界では、多様性は生存と繁栄にとって重要な要素です。環境変化に対するリスク分散という意味もあります。

マーケティングでも、多様化はリスクを分散させることにつながり、自社やブランドの生存確率を高めるでしょう。

1つの手法に固執せず、様々なアプローチを試し、最も効果的なものを選択することが求められます。たとえば、顧客層の多様化、商品ラインナップの拡大、マーケティングチャネルの多角化など、様々なアプローチを試すトライ & ラーン (Try & Learn) を続けることです。

長期的な存続

進化論は、短期的には非効率だったり筋が悪くても、長期で見れば生存可能性を高めることの重要性を教えてくれます。「一見すると非合理、よくよく見ると全体では合理」 という 「ばかなる (馬鹿な → なるほど!) 」 の戦略です。

短期的な成功よりも、持続的な成功を目指すためには、時には直感に反する決断を下すことが必要になります。たとえば、短期的な収益を得られない地道なブランド育成などがそうで、長期的な打ち手は企業の生存と成長を促します。

短期的には非効率に見えたとしても、長期的には生存可能性を高めるなら、腰を据え覚悟を持って取り組むことが大事です。

生態系全体の活性化

生態系では、生物は他の生物との相互作用によって生存に影響を与え合います。同じようにビジネスでも、市場にある各商品は相互に依存する生態系のような状況です。

1つの自社商品だけを切り取って見るのではなく、ジャンルやカテゴリー全体を見る視点が重要です。

直接の競合他社は争う相手であると同時に、共に市場を発展させるパートナーのような関係でもあります。

また、ユーザーにとっては、いくつかのカテゴリーの商品がそろっていてはじめて利便性を感じることもあるため、隣接するカテゴリーとの共生も考慮すべきです。

このように、自社だけでなく、ジャンルやカテゴリー全体の活性化を目指し、全体感を持ち大局的に捉えることが大事です。

まとめ

今回は進化論を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 進化論では環境に適応した個体が生き残るとされる。マーケティングでも、変わる市場のニーズに適応する商品や企業が生存できる

  • 多様化はリスクを分散し生存確率を高める。顧客層の拡大や施策の多様化など、様々なアプローチに挑戦しトライ & ラーンする

  • 生物は短期的な利益よりも長期的な生存を優先して進化する傾向があるように、企業も長期的なビジョンを持って戦略をつくるべき

  • 商品や企業は市場という生態系の一部。競合他社は戦う相手であると同時にパートナーとして、カテゴリーや市場全体の活性化を共に目指す

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