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専門家の反応は散々だった freee に学ぶ、新規事業の成功ポイント

今回は、商品開発や新規事業開発についてです。

✓ この記事でわかること

  • 商品開発や新規事業開発での仮説検証

  • 検証相手を見極める難しさ

  • 専門家の反応は散々だった freee

  • freee の事例から学べること (仮説検証の 「誰に」 と 「タイミング」 ) 


この記事を読んでいただきたいと思うのは、仕事で商品やサービス開発をされている方、新規事業開発を進めている方です。

仮説検証の進め方のヒントや、ユーザーや顧客の声、不満やリクエストへの向き合い方の参考になればと思います。

商品や事業開発での仮説

これはどんな商品開発や新規事業開発にも共通することで、商品開発や事業開発では仮説を立てて検証を1つずつ進めていくことが大事です。

仮説は分解すると次の5つです。

✓ 商品や事業開発での仮説

  1. 顧客仮説

  2. 問題仮説

  3. ソリューション仮説

  4. 提供価値仮説

  5. 収益モデル仮説


5つの仮説の補足

順番に簡単に補足すると、1つ目の 「顧客仮説」 とは事業や商品のターゲット顧客を決めます。2つ目の 「問題仮説」 はターゲット顧客が抱えている問題や顧客課題です。

3つ目の 「ソリューション仮説」 とは顧客の問題に対する自分たちの解決策で、4つ目の 「提供価値仮説」 とはお客さんに提供する商品やサービス (ソリューション) によって顧客が得る価値です。

5つ目の 「収益モデル仮説」 は、顧客への価値提供によって対価としていただく収益化の仕組みです。

以上の仮説を1つずつ検証していくプロセスが、商品やサービス開発、新規事業開発です。

検証相手の見極め

自分たちの仮説が正しいかどうかは、結局のところは相手、つまりお客さんに訊いたり具体的なものを見せて検証するしかありません。

ここで難しいのが検証相手の見極めです。

開発初期の段階で、特に生み出そうとしている商品や事業が従来の常識を変えてしまう全く新しい場合は、検証する相手である顧客仮説が間違っていると、相手に良さを全くわかってもらえないことがあります。

*  *  *

ではここからの後半は、具体的な例に当てはめて見ていきましょう。クラウド会計サービスの freee です。

freee の開発ストーリー

専門家の反応は散々だった freee

今でこそクラウドでの会計ツールは広く使われ当たり前になっています。

しかし、freee が最初にリリースした 「クラウド会計ソフト freee」 は、会計士などの想定ユーザーの反応は散々でした。

以下は TechCrunch から、freee の創業 CEO の佐々木さんのインタビュー記事からの引用です。

freee が最初にリリースしたプロダクトは 「クラウド会計ソフト freee」 。会計士など、ユーザーになりそうな人たちに意見を求めながら開発を進めた。しかし、反応は散々なものだった。

当時、会計作業のやり方は30年近く変わっていなかった。そのため、会計士に話を聞きに行っても 「30年間このやり方だからこれから変わることもない」 「ずっとこのやり方でやってきたから、新しいプロダクトを出されるとむしろ困る」 「クラウド化する必要なんてない」 といった厳しい言葉を投げつけられたという。

TechCrunch 2021.7.7

佐々木さんは 「開発しながら『こんなもの誰が欲しがるんだ』なんて自問したこともありました」 と語っています。

自分たちの世界観を信じる

freee は専門家の意見を聞くのはやめ、自分たちが信じるプロダクトを追求するようにしたそうです。

自分たちのやっていること、会計の未来はこうなるという世界観を信じて開発を続けリリースをしました。

リリース後は、ネット上では評価する声も出てきました。リリース前は専門家の意見を聞くのはやめましたが、リリース後は積極的にユーザーの声に耳を傾け不具合を改善していきました。

1% の真実

あらためて freee の話から思ったのは、検証相手の見極めの難しさです。

その道の専門家の意見やアドバイスは他では得られない貴重な情報です。しかし一方で freee の例のように、いつも専門家の見方が正しいとは限りません。特にこれまでなかった革新的なアイデアほど、専門家は価値や意味合いを見誤ります。

スタートアップの世界で有名な言葉に、ピーター ティールの 「99% の人々が反対しても、1% である自分にとっての大切な真実は何か」 があります。

意味は、大多数の人々には受け入れないことでも、自分 (たち) には正しいと信じられることを持つ重要性です。freee は 1% の真実、つまり自分たちの信じる 「会計ソフトはこうあるべき」 「freee が当たり前のように使われている未来の世界観」 に賭けたのです。

仮説検証の 「誰に訊くか」 と 「タイミング」 

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この記事では最初に、商品開発や事業開発での5つの仮説をご紹介しました。

✓ 商品や事業開発での仮説 (再掲) 

  1. 顧客仮説

  2. 問題仮説

  3. ソリューション仮説

  4. 提供価値仮説

  5. 収益モデル仮説


freee の例での 「当初想定していたユーザーである会計士からは散々な反応であった」 とは、顧客仮説の設定です。

99% の人々が反対しても、自分たちにとって大切な 「1% の真実」 を、自分以外の誰に対して検証するのか、そして、そのタイミングはいつなのかです。

freee では会計士からのネガティブな反応を見て、リリースまではあえて会計士に訊くのはやめ、自分たちの世界観や心の中の顧客を見て開発を進めました。リリース後は実際のユーザーに積極的に耳を傾けています。

これが意味するのは、顧客に訊くとしても相手が考えたり意味合いを見出だせるほどの具体的な何か、freee でいえばリリースした実際に動くクラウド会計ソフト、を見たり使って初めて検証相手には意味がわかるということです。そのタイミングでしか顧客自身も判断できないのです。

商品や事業開発での仮説は顧客に訊かないと答えはわかりませんが、闇雲に訊けばいいわけではなく、「誰に訊くか」 と 「いつ訊くか」 は検証で大事なポイントです。

まとめ

今回は商品開発や事業開発についてでした。

最後にまとめです。


仮説検証相手の見極め

  • 自分たちの仮説 (商品アイデアや事業での提供価値への仮説) が正しいかどうかは、顧客に訊いたり具体的なものを見せて検証するしかない

  • 全く新しい商品アイデアや事業では検証する相手を間違えると、相手に良さを全くわかってもらえない


自分たちの世界観を信じる

  • 専門家の意見やアドバイスは貴重な情報だが、いつも専門家の見方が正しいとは限らない

  • 大多数の人々は反対しても自分 (たち) には正しいと思う 「1% の真実」 を信じきることが大事


仮説検証の 「誰に」 と 「タイミング」 

  • ただし、最終的には商品や事業開発での仮説は顧客に訊かないと答えはわからない

  • 自分たちの仮説を 「誰に訊くか」 と 「いつ訊くか」 を見極めることが検証で重要


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