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コーセー化粧品 「ファシオ」 に学ぶ、ターゲット顧客理解からのリブランディングを成功させる方法

今回のテーマは、マーケティングの 「リブランディング」 です。

化粧品ブランドのリブランディングから学べることを解説していくので、特に既存商品・サービスやブランドのリニューアルに携わっている方に参考になればと思います。

化粧品の話なので異業種のことかもしれませんが、他の業界の成功の本質には自分たちの業界のヒントになります。よかったらぜひ最後まで読んでみてください。

コーセーの化粧品ブランド 「ファシオ」

今回ご紹介したい事例は、コーセーの化粧品 「ファシオ」 です (公式サイトはこちら) 。

出典: PR TIMES

以下は日経新聞からの引用です。

コーセーが展開するメーキャップブランド 「ファシオ」 が20代など若年層のファンを増やしている。

今年5月にブランドを刷新し、肌になじみ負担感の少ない付け心地のアイテムをそろえた。デビュー当時からの 「高機能コスメ」 という強みを維持しつつ、若い世代の価値観を反映したコンセプトを取り入れてブランドの躍進につなげている。

日経 2021.11.5

ブランド課題

ブランド刷新の以前には、ファシオは課題がありました。

ファシオは2000年2月にデビューしたブランドで、「汗をかいても落ちにくいマスカラ」 など、機能性の高さが若い女性を中心に支持されてきた。しかし発売から約20年がたち、気づけば主要顧客層は40代に上昇していた。

近年は売り上げも漸減傾向が続いており、ブランドの成長のためには20代など若年層の開拓を急ぐ必要があった。

日経 2021.11.5

ターゲット顧客から見たブランドイメージ

そこでファシオのブランドチームは、あらためてターゲット顧客としたい20代女性への調査を実施ました。

再び日経からの引用です。

ファシオについて消費者へのヒアリングを実施すると、20代からは 「マスカラの機能性は高いけど見た目がかわいくない」 など、デザインへの評価が低いことがわかった。

コンシューマーブランド事業部の伊藤理恵氏は 「ファシオは『母親が使っているブランドのイメージ』といった声もあり、若い世代に訴求できていないことに改めて気づいた」 と振り返る。

 (中略)

以前は他人からの見え方や身だしなみを気にしてメークする意識が強かったが、今は 「自分らしさを大事にする」 (伊藤氏) など、メークは自分のためにするという考え方に変わってきている。機能性を重視していても 「自分の肌に無理のない、なじむような機能を求めている」 (伊藤氏) 傾向がわかった。

日経 2021.11.5

ターゲット顧客へのヒアリングから見えてきたことを整理してみると、

✓ 化粧品に求めること

  • 自分らしさを大事にする。メークは自分のためにする

  • 化粧品に求めるのは自分の肌になじむような機能

✓ ファシオのイメージ

  • マスカラの機能性は高いが見た目がかわいくない

  • ファシオは母親が使っているブランドのイメージ


ファシオのリブランディング


ターゲット顧客を理解したことで、ファシオのブランドコンセプトを変えました。

若者のメークへの意識を反映したコンセプトは、「なじむ、らしさ、つづく。」 です。新しいコンセプトから肌になじむ化粧品にし、肌への負担感も少なくしました。

コンセプトの 「なじむ」 は自分の肌に無理なくなじむこと、「らしさ」 は自分のための商品で自分らしさがあること、「つづく」 には背伸びせず自分が無理せず続けられるという意味を込めています。

リブランディングの結果

コンセプトから刷新し、その結果はどうだったのでしょうか?

結論、リブランディングは成功しました。

ブランド刷新後は売り上げが前年比約1割増で推移しており、20代の購入比率は2倍以上に増えている。これまでのファシオのイメージと大きく変わった刷新となったが、既存客からも好評という。

伊藤氏は 「今後も消費者を飽きさせない取り組みを続けていきたい」 と話し、ファシオのさらなる挑戦に意欲を見せる。

日経 2021.11.5

新規客の獲得と既存客の維持

結果で興味深いのは、新しいターゲット顧客である20代の購入比率が増えただけではなく、既存客からも好評だったことです。

一般的な話としてブランドコンセプトをリニューアルすると、既存顧客が離れていくケースがあります。今回のファシオで言えば、既存客である40代女性に 「 (若年ターゲットに変わり) 自分向けのブランドではない」 と思われてしまう可能性です。

しかし上記の日経記事に書かれていることは、20代女性という新規顧客の獲得と、40代女性の既存客の維持の両方ができてて、リブランディングの成功と言えます。

学べること

では最後にファシオから、マーケティングに学べることを見ていきましょう。

ファシオの成功ポイントは一言で言えば、ターゲット顧客の理解です。

次の大きく2つの点で生活者理解を深めました。


✓ 生活者理解への2つの視点

  • 化粧品に求めること、化粧品を使ってどんな自分になりたいか

  • ターゲット顧客の目に映る自社ブランド


2つに共通するのは、ターゲット顧客の立場になろうとしたことです。

相手の視点に立ち、まずはブランドに関係なくライフスタイル、日々の生活、化粧品などの美容への関わりを理解しようとしましたその上でファシオへのブランドイメージを掘り下げました。こうした普段の行動と、その時の気持ちにまでフォーカスを当てたわけです。

以上のようなターゲット顧客理解に基づき、コンセプトの刷新、デザイン、店頭展開、プロモーションからのコミュニケーションで一貫性のある打ち手を行なったからこそ、成功につながったのです。

まとめ

今回はコーセーの化粧品ブランド 「ファシオ」 のリブランディングから、マーケティングに学べること見てきました。

最後にまとめです。


ファシオのリブランディング

  • 新たに設定した20代女性をターゲット顧客にし、化粧品に求めること、ファシオのイメージを掘り下げた ターゲット理解からブランドコンセプトを 「なじむ、らしさ、つづく。」 に刷新

  • 20代女性という新規顧客の獲得と既存客の維持の両方ができ、リブランディングは成功した


マーケティングに学べること

  • ファシオの成功ポイントは一言で言えば、ターゲット顧客の理解

  • 相手の視点で、日々の生活・化粧品に求めることを理解し、ファシオへのブランドイメージを掘り下げた

  • ターゲット顧客理解に基づき、コンセプトの刷新、デザイン、店頭展開、コミュニケーションで一貫性のある打ち手をやっていこう

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