インフルエンサーはマーケティングの法的責任を負うのか

FTXが破綻した後、ノースカロライナでFTXの広告塔を務めたアスリートに対する民事訴訟が開始された。果たしてアスリートを含めたインフルエンサーは詐欺的なプロジェクトや企業の宣伝について法的責任を負うのだろうか?

結論から言うとインフルエンサーがマーケティングに関与したことで法的責任を負うのは客観的に見て不誠実で公平でない宣伝をした場合である。だからこそ暗号資産関連でDJキャレドやキムカーダシアンは罰金をSECに支払った。これは彼らが報酬を受け取っていたことを明示せずにオンライン上で暗号資産の宣伝をしたためである。それが投資家の利益を侵害しており、不誠実だとされたのだ。

一方でバハマのファイアフェスの事例のようにインフルエンサーが詐欺に積極的に関与していない場合、つまり彼らが共謀していることが証明できない場合、彼らが法的責任を負うことはない。もちろん多くのインフルエンサーが罪悪感を感じたのは事実だが、彼らに騙す意図がなかったのは明白であり、非公開企業であるファイアフェスの運営会社について詳細な情報を入手できたとも思えない。仮に何か勘づいていたとしてもそれを証明するのは原告であり、簡単なプロセスではないだろう。

FTXの件もファイアフェスと同じであると言える。彼らは取締役ではなかったし、内部の経営状況を理解できる立場ではなかった。そもそも業界大手の取引所の預託資産管理がずさんだと思う人はいないだろう。つまり彼らは多くの人と同じようにFTXを信頼していたことを裁判で主張することができる。あるいは報酬の未払いによる免責を主張することができるかもしれない。彼らが少なくとも表向きはFTX内部の人間でなく、その通説を原告が覆すことは簡単ではないし、法的責任を認めさせることはかなりハードルが高い。

この裁判がノースカロライナという保守的な州で裁かれることもアスリートを有利な状況をもたらしている。ノースカロライナの裁判所は裕福な企業や個人に有利な判決を下すことが多い。つまりこの場合はアスリートに有利な判決を下すことが多いだろう。

ノースカロライナの個人投資家にアドバイスできることがあるとすればFTXで被った損失を取り返す一番の方法は破産管財人に全てを任せることだ。アスリートを訴えるカネがあるなら株式や不動産を買うか、ナイトクラブを貸し切って馬鹿騒ぎをした方がはるかにリターンがあるとは言えるだろう。

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