見出し画像

サントリー美術館『京都・智積院の明宝』展は、東京で長谷川派の障壁画群を見る貴重な機会

サントリー美術館で開催中の『京都・智積院の名宝』展に行ってきました。
『京都・智積院の名宝』展のチラシやポスターに使われている国宝「楓図」「桜図」に惹かれ、
「これは、実物を見なくては!」
と足を運びました。



長谷川派の障壁画に圧倒される

『京都・智積院の名宝』展は、展覧会の名前のとおり京都・東山にある真言宗智山派ちさんはの総本山である智積院が所蔵する多彩な明宝を展示・紹介するもの。
仏画、曼荼羅図、密教法具、経典、智積院に寄進された名宝類など様々なものが展示されていますが、今回の展覧会の見どころは、やはり、初めて寺外で一挙公開された長谷川派の障壁画群でしょう。

4階の第1展示室の大半を使って展示されている「第二章:桃山絵画の精華 長谷川派の障壁画」では、長谷川等伯の「松に秋草図」「楓図」「松に黄蜀葵図」、等伯の息子・久蔵の「桜図」などが展示されています。中には寺外初公開の障壁画もあります。

智積院が誇る障壁画群がずらりと並ぶ様子は圧巻。本当に貴重な機会だと思います。
桃山時代の絢爛豪華な金碧障壁画。金色の背景に、ダイナミックな構図。色づいた楓の木と秋草、満開の八重桜と春の草花などが繊細なタッチで草花が描かれています。

作品自体が大きいので、近くに寄って細かい部分をじっくり見た後は、離れて全体を眺めたり。近くで見た時と離れて見た時では、印象も異なるのが不思議でした。おそらく、近くで見るよりも少し離れて全体を見る作品だと思うのですが、近くで繊細なタッチや微妙な色合いで描かれた季節の草花を見るのも面白い。

例えば「桜図」の白い八重桜。白い花は、胡粉ごふんと呼ばれる牡蠣の貝殻を細かく砕いた顔料で描かれています。近くに寄ってみると、胡粉が厚く塗られ、桜の花が立体的に描かれていることがわかります。
中央には桜の幹が描かれ、満開の八重桜が重く、枝がしなって垂れ下がているという大胆な構図。
この作品は、長谷川等伯の息子・久蔵が25歳の時の作品とされており、完成した翌年に久蔵は亡くなります。

「楓図」は、久蔵の死を乗り越えた等伯が描きあげたの。中央に楓の太い幹があり、広がった枝には色づいた楓の葉。紅葉のものが多いものの、色が微妙に異なるだけではなく、緑色で、まだ色づいていないものもあったり。楓の木の下には、様々な秋の草花が咲いています。

「桜図」と「楓図」が並んで展示されているので、見比べることもできます。「松に黄蜀葵図」などの障壁画も素敵でした。


智積院の様々な名宝

長谷川派の障壁画群のほかにも、智積院が所蔵する名宝類が展示されています。

中でも目をひいたのは、第2展示室に展示されていた堂本印象の「婦女喫茶図」「松桜柳図」。
堂本印象のカラフルな色使いの襖絵は、実際に智積院宸殿の室中を飾るもの。完成した時には話題になったそうですが、真言宗の寺院にカラフルな襖絵があるという意外性があるので、話題になるのも当然でしょう。

「婦女喫茶図」に描かれた着物姿でお茶をたてる女性と、向かい合った洋服姿の女性は、堂本印象の姪がモデルなのだとか。一方の「松桜柳図」は、長谷川派の障壁画のテーマや構図が上手く取り入れられていて、素敵でした。


展示会場の周り方

展示会場は4階(第1展示室)と3階(第2・3展示室)ですが、6階ホールで智積院と今回の展示品を紹介する15分程度のビデオ上映を行っています。
先に6階でビデオを見てから展示を見るよう案内がありましたが、先に展示会場を回ってからビデオを見ました。(スタッフの方に声をかけると再入場して、6階に行くことができます。)

6階ホール入口前に展示されていた「楓図」のレプリカ。撮影OKです。

ビデオで紹介されていた智積院の庭園が素敵でした。京都には何度か観光に行っていますが、智積院にはまだ行ったことがなかったような? 機会があれば、庭園を目当てに智積院を訪問をしたいと思っています。

『京都・智積院の名宝』展には、平日の午後に行きました。事前予約は不要です。
私が行った時間帯はそれほど混んでおらず、自分のペースで見て回ることができました。だだ、見終わって会場を出た時は入口付近が結構混んでいたので、曜日・時間帯によって混雑具合が違うようです。
おそらく、会期の最後は混むと思うので、ゆっくり見たい方は早目の訪問が良いと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?