思い出の食を探す。その意図とは...。
いままでは、出てくる料理が美味しそうとか…
京都に行きたいなぁと思いながら読んでいました。
柏井壽さんの『鴨川食堂』シリーズも8巻目になり、思い出の食とはなんぞや。その背景や意図についても考えるようになりました。
決してよい思い出ばかりではない
『鴨川食堂シリーズ』は、鴨川流と娘のこいし親子が、依頼人の思い出の食を探しだす謎解きになっています。
今回の『鴨川食堂ごちそう』も、さまざまなエピソードが登場します。
食べ物の思い出というと、ちょっといい話を想像する人が多いでしょう。登場するエピソードは、決してよい思い出ばかりではないのです。
悲しみや後悔、怒りというような、食の思い出としては少しばかり避けたくなることが書かれています。
人はきれいな思い出より、ほろ苦い出来事の方が、その真相を知りたくなるのかもしれません。
思い出の食を探すことで、真実と向き合うことができる
思い出の食といっても、食べたのが子供の頃や若い頃で記憶が曖昧であったり、はたまた食べていないけれど、なぜ出てきたのか真意が気になると、依頼人は無理難題を言うこともあります。
こいしがヒアリングした情報から、流が答えを導き出します。
ヒントが微妙なことも多いのに、必ず探していたものが見つかる、流の調査能力に脱帽です。
依頼人は目の前に料理が登場したことで、改めて過去と向き合うことになります。真実を突き付けられるわけですから、依頼人にとってはツライこともあるでしょう。
ラスト、依頼人はすっきりしている
鴨川食堂を初めて訪れた時の依頼人の様子は不安げであったり、本当に依頼をして良いのだろうかという感じがあります。
依頼していたものが見つかったと言われても、実際に現物を見て、流の講釈を聞くまでは、どこか迷いが感じられます。
しかし、真実を知り、受け入れることで、気持ちが整理できるからか、ラストは意外と明るい雰囲気になります。
もしかすると食探しには、肩の荷が下りる作用があるのかなんて考えてしまいます。
京のおもてなしの真髄が感じられる物語
京都には「一見さんお断り」という文化があることで有名です。
『鴨川食堂』もそんな京都の文化を見せつつ、まずは旬の食材を使った料理で依頼人をもてなします。
お客の希望を聞きつつも料理に合わせたお酒の出し方など、相談前の食事シーンも見どころといってよいでしょう。
謎解きにプラスして京都という独特の雰囲気がある土地のおもてなし術を知ることができるのも、『鴨川食堂』の魅力といえます。
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