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この2年間で距離が近づいたのだろうか?『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』

総選挙を目の前にした日本でこの本を読んでいると、本当に日本って島国だなぁと思います。革新的なブライトンと真逆な日本でも超保守的な地域に住んでいる身としては、読んでいて複雑な気分に。

前作はなんと80万人の人が読んだといい、本屋大賞ノンフィクション本大賞も受賞した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとだけブルー』の2巻目は、13歳の「ぼく」の姿をブレイディみかこがありのままに書いています。

舞台となっているのは、2019年のイギリス・ブライトン。まだ、世界中を襲うことになる伝染病は影も形も見えてきません。EU離脱の問題や、生理の貧困。「ノンバイナリー」という言葉。この2年間で世界がグッと近づいたためか、共有しなければならない問題もあるためか、ニュースでも耳にするようになりました。

生理の貧困の問題に関しては、消費税増税による軽減税率の適用がおこなわれなかったことから広く知られるようになったと思います。イギリスのように生理用品の配布が行われるようになったり、その値段の高さに男性が衝撃を受けるという話も散見するようになりました。

ノンバイナリーについては最近よく聞くようになった話ですが、アメリカでは性別を書かない「X」というパスポートが申請できるようになったというのがニュースになっていました。

前作は、見るもの聞くもの、新鮮な感じで、イギリスの知らなかった顔が見え隠れしていたような気がします。今回はそこまでの驚きはありませんでしたが、ニュージーランドのアーダーン首相の話から、相手に寄り添うことの難しさみたいなものも感じられたのです。

ノンバイナリーも、宗教も当事者たちからしたら、よかれと思ったことが見当違いかもしれないし、本当に受け取り方って人それぞれと感じます。

日本に帰国した際に訪れた湯布院の旅館の人たちの話。それこそ政治家たちしっかりしてよと言いたくなることもあるのです。そして、この声がどこまで届くのか、選挙によって反映されるのか、とても気になります。

2年前に前作に出会ってから、何作かブレイディ作品を読んだからかも知れません。遠いイギリスでの出来事が、日本でも身近に感じられます。異国のことだけど、日本と関係することも多いことに気づいたからでしょう。

「ぼくイエ」のシリーズは本作で完結ということですが、いつかもっと大人になった息子君の話が読めたらいいなぁと思うのは、読者の勝手な都合でしょうか?私は「ぼくイエ」と出会ったことで、ブライトンに行ってみたいと思うようになりました。本とは、自分が知らない世界への扉を開けてくれるツールなんだなと思っています。

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