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6【連載小説】パンと林檎とミルクティー~作家・小川鞠子のフツーな生活日記~

6)時短料理を実践

食パンで作るサンドイッチが好き。
食パンは、ふつうに8枚切りを買ってくる。
ベーコンとレタスとトマトに、カラシマヨネーズに、マーガリン。
牛乳をあっためて、ロイヤルミルクティーといっしょに食べるのが、最高だと思ってる。

たまに、卵のサンドイッチが食べたくなる。
今日はタルタルソースみたいなのをはさんで食べたい気分だった。
と、いうことは。
手順を頭の中で作り上げる。

冷蔵庫から卵を出して、常温にする。
20分もだしておけばいい。
その間に、カラシマヨネーズを作る。
バターも10グラムほど切り分けて常温に。
パンはトーストしようか。
その前に、常温の卵をゆでる。
水から入れて、しっかり固ゆでにする。
ゆでたら、冷まして、殻をむいて、包丁で細かくしてから、マヨネーズと塩で和える。

ぐう。
ああ、わたしはお腹が空いているのだ。
胃の中は空っぽなのだ。
自覚したとたんに、なんだか頭がくらくらしてきた。
ロイヤルミルクティー用に、牛乳を先にあたためてしまおう。

冷蔵庫から牛乳パックを出して、雪平鍋に半分ほど注ぐ。
沸騰しないように、あたためる。

ゆで卵は、殻をむいてボールに入れたところで、急激に疲れが襲ってきた。
包丁を出してみじんにするのは、面倒臭い。
気持が持たない。
お腹が空いていることと、疲れていることとどんな関連があるんだろう。

ふと、フォークが目に留まる。
それをどうしようと思う前に、手に取った。
人差し指でフォークをささえて、ぎゅっと押しつぶす。
ゆで卵は、あっさりつぶれていく。
白身が、面白いほどに細かくなる。
ひとつつぶすと、ふたつめもつぶす。

予想よりもはるかに短時間でゆで卵は細かくなった。
マヨネーズとからしを入れて、まぜまぜる。
トマトを敷いてパンに乗せる。

牛乳をあわててあたためて、ロイヤルミルクティーを仕上げる。
テーブルに卵サンドとロイヤルミルクティーを置くのと、卵サンドを食べ始めるのと、どっちが早いか。

卵をこんなに早くつぶせるなんて。
時短料理って、こういうことだったなんて。
食べ終わったら、時短料理をぐぐってみよう。

当分、ゆで卵をつぶすのはフォークだわ、と、心の中で再確認した。


つづく



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